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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
二章 迷宮と探索の仲間
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 ボス部屋を抜けると、迷宮の様子も変わってくる。

 洞窟と言うには、天井の穴から注ぐ日の量が多い。かと言って、岸壁に挟まれた谷と言うには、天井を覆う岩が多い。

 植物も相変わらず多く、小川も流れているので、風光明媚な場所である。相変わらず、鬼畜な雑魚さえいなければ。この一帯に出現するのはダークネス・スパイダーの子供のベビー・スパイダーだが、雑魚とは言え、そこはボスの子、全状態異常持ちなどという鬼畜さだ。

 M錯乱はシャルロッテによって防止されているため、スタスタ進む。

 などと、歩いていると、ベビー・スパイダーが出現した。嬉々として襲い掛かるアリスは、どちらがモンスターか分かったものではない。

 Mの様子はと、見ると、ワナワナ震えていた。おかしい。ファントム・ミストはちゃんと掛かっているはずだ。

「……おい?」

「あ……赤ん坊を切り殺すのは、さすがに、できないよ!!」

 嫌な予感がした俺はシャルロッテを見やる。

 俺の視線に気がついたシャルロッテは首をかしげた。可愛いが、多分、こいつが元凶だ。

「Mに何を見せてるんだ?」

「無難に人間にしました」

「全然、無難じゃないだろ?!それ!!」

「他に苦手な物があると困ると思ったので、まず間違いなく平気そうな人間にしてみたんです。今まで出現した蜘蛛系以外は大丈夫なのでしょうが、下手に同じ系統だと、混乱しますし」

「お……おう」

 思わず納得してしまった。やばい、人間が無難に思えてきた。いや、よくない。

「でも、道徳的にまずいだろう?」

「そこは慣れでしょうか?」

「慣れたら、もっと、やばい!!つか、人間とモンスターの区別がつかないとか大問題だろうが!!」

「ああ、それは問題ですね。分かりました」

 うすうす気がついていたが、シャルロッテは天然だ。それも悪い方向に。

 しかし、恐ろしいのは、それでもこの中ではマトモな部類なところだ。どんだけ、他がぶっ飛んでいるのか考えたくない。

「うぅうううわぁああああああああ!!」

 ブチブチとアリスがベビー・スパイダーを叩き潰す横で、Mが叫び声を上げる。相変わらず、獣の咆哮のようだ。さすがに、マルガレーテも引いている。

「今度は何にしたんだ?」

「人間と区別するために、頭は人間のまま、体をラットに、尻尾をヴァイパーに、足をスコーピオンに、背中にバットの羽に変えてみました。これなら、他のモンスターとも混同することはないでしょう」

「シャルロッテ、実は結構えぐいよね」

「私的には、殺すのを躊躇ためらわない範囲での可愛さを追求したつもりです」

 駄目だ、このウィザード、幻術使いとしてセンスが絶望的にない。ここにきて発覚した事実に頭痛がする。

 いや、よく考えたら、これだけの冒険者ウィザードがどこのPTにも所属していない時点で、地雷扱いされる要素を持っていると気がつくべきだった。

 はあと、嘆息して、Mを見ると、いつの間にか正気を取り戻し、普段通りにベビー・スパイダーを駆逐し始めていた。立ち直り早いな。別に良いけどさ。

「今度は大丈夫そうですね」

「……そうだな」

 Mが言いのならば、俺は何も言うまい。おかしいのは俺のセンスなんだろうか。

 一通りベビー・スパイダーを倒したあとは、稼ぎ場のコンフュージョン・ホーネットの巣へと、まっすぐつき進んでいった。

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