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フォレボワ・ギルドの受付嬢を見送った俺たちは、その足で宿屋に向かった。
中に入れば、親衛隊のじいさんたちと青年団がエンカウントしていた。なんでここに集うんだと思うが、Mのじいさんがここにいるので、青年団のほうは拾いにきたのだろう。
「なんじゃ!!ここはワシらの聖地じゃぁああ!!」
「貴様らには関係ない場所のはずじゃぁああ!!」
ぐわっと、親衛隊のじいさんが叫ぶ。朝っぱらから、元気だ。
「用もないのに来るはずがないだろう?!」
「我々青年団はヴェント青少年のための活動で忙しいんだぞ!!」
「今日はロリがいないのか」
訳一名危ない発言があったものの、青年団も大声で反論する。だからお前ら、朝っぱらから煩い。
「あらあら、にぎやかねぇ。おかえりなさい、コルンバーノ」
「ジョルジェットさん!!煩くしてしまって申し訳ない。バストンチーニ君もおかえり」
「……ただいまかえりました。それでは」
親衛隊のじいさんの一音たりともかすってない名前には突っ込みたいが、気力がそがれるだけなので、スルーして借りている部屋に戻る。
アリスとMはじいさんたちと賭博したそうだったが、問答無用のサイレンスとシャドウ・バインドで連れて行く。脱臼した肩を治す作業なんざ、度々やりたいモノじゃない。
「って、なんでだよ?!」
部屋に戻ると、Mのじいさんがベッドで書物を見ながらくつろいでいた。
見当たらないと思っていたら、こんな場所にいやがった。
「おお。遅かったな、ナニ、孫娘の夫だ、遠慮はせんでくれの」
「いや?!それ俺のセリフですよね?!」
ふうと、じいさんが書物を閉じる。よく見なくても分かる肌色の表紙に、おそるおそるMを見れば、わなないていた。
とりあえず、アリスとMを解呪すれば、先ほど街道を爆走していった受付嬢並みの人外じみた速度でじいさんにつかみかかる。
「なんて破廉恥な本を読んでいるんだい?!」
「潤いが必要なんじゃよ。現実ではガチムチの孫娘に掴みかかられるワシのつらさは分かるまい」
「いや、つかみかかられる様なコトしなきゃいいだろ?!」
思わず、俺が言えば、Mのじいさんは悲しそうな顔をする。実に嫌な予感しかしない。
「若い娘っ子に囲まれて、むっちりぷりっぷりを当たり前のように享受できる頃には気がつかぬもんじゃ。年を取ればいずれ分かるようになる」
後半はシタリ顔で言いやがった。
「マルガレーテの王子様!!あたしは、いつまでもむっちむっちで、ぷりっぷりでいるよう頑張りますから、安心してください!!」
「おい?!」
なぜか、マルガレーテが言ってくる。
「はあ、メロディが、むっちむっちのばいんばいんで『おじーさま、だぁーいすきぃ』と言うような孫であればなぁ」
「Mがどう育っても、好かれることはないと思うぞ?!」
実の祖父に殴りかかるMを止めながら俺が言う。なお、物理的にはアリスの力、九十九パーセントで止めている。
「エっちゃん落ち着こう!!」
「クラウディオさん、やっちゃいますか?」
わたわたしていると、しれっとシャルロッテが恐ろしいことを言ってくる。
「絶対に殺るな!!」
「分かりました、虫の息ですね!!」
「おい、シャルロッテ!!それ、絶対に分かってないよな?!」
「……プリちゃんの持ってる本よりも普通」
「って、ナスターシヤ、それ開くな!!」
そして、ごたごたは、俺の祖母が朝食のお誘いに来るまで続いた。




