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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
二章 迷宮と探索の仲間
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 飛び散る雑魚の破片が、降り注ぐ日差しによってキラキラ光る。キレイダネーと遠い目をしたくなるくらい、木っ端微塵になって飛び散っている。

 アリスだけでもアレだったのが、似た系統のMが加わったことにより、残骸すら残さない勢いだ。トラウマが再燃どころか、上書きされそうである。

「お前ら、素材集める気ないよな」

 回復のために、ドレインで仕留めた雑魚から剥いだ素材は、シャルロッテとマルガレーテに譲っている。そのため、アリスもMも大して稼げていなかった。

 トラップがあった場所から少し奥まった場所の分かれ道を、先ほどとは逆に行けば、この界隈のボス、大蜘蛛系のダークネス・スパイダーがいる。ボスと言っても、フォレボワの迷宮最弱だ。俺のドレイン一発で沈む程度である。

 ダークネス・スパイダーの良いところは、高額取引される素材が、糸であることだ。本体をぐちゃぐちゃにしてしまうアリスにとって、本体とは別の巣が素材になるダークネス・スパイダーは稼ぎにもってこいである。

 ちなみに、あの一方通行地獄を隠し部屋の方へ抜けると、蜘蛛系のパラライズ・スパイダーの住処がある。こちらも、糸が素材になっているが、取引金額は、デス・スコーピオンの殻よりマシ程度だ。

「やった!やぁっと、ボス部屋ついたぁ」

「久々だな」

 ボスがいる広間の入り口付近で、アリスとMが準備を整える。と、言っても、それぞれの得物えものの刃をなめし革でぬぐったりするだけだが。

「それじゃあ、アリス、いっきまーす!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 アリスは良いとして、獣のような雄たけびをあげながら突入するMは、女以前に人間としても色々ギリギリだ。

「Mさん元気ですね」

「元気と言うか、アレ野性とかナンとかだろう」

「マルガレーテの王子様、ボスだなんて、あたし、怖いです」

 しっかり周囲に敵が居ないことを確認した上で、腕を組んでくるマルガレーテは、絶対に怖がってなどいない。いざというときに、行動できる範囲での接触に留まるあたりが、いっそ、すがすがしいくらいのセリフと行動の乖離っぷりだ。

「と言うか、クラウディオさんは行かないんですか?」

「トラウマは少ないに限るからな。あと、アリスなら、よっぽどのことが無ければ、てこずらないだろうしな」

「マルガレーテの王子様、それ、多分、フラグですよ!」

 マルガレーテが不吉なことを言ったときだった。

「クロ助ぇええええ、ヘルプ!!へるぷぅううううううう!!」

 アリスの大声がした。日頃、宿屋を震わす声量はたいしたものだ。

 スルーしたいのをこらえて、俺もボス部屋の広間に乗り込む。

「…………おい」

 錯乱するMと弱ったダークネス・スパイダーと、Mから逃げ回るアリス。まさにカオスな光景だった。

 とりあえず、Mとダークネス・スパイダーをシャドウ・バインドで停止させる。

 アリスもMもHPを減らしていたので、丁度良いと、ドレインでダークネス・スパイダーを仕留めた。

 一応、Mをカース・ガイドで状態異常がないか見れば、術などは何もかけられていない。ならばと、背後からどついて、正気に戻したあと、シャドウ・バインドを解く。

「落ち着いたか?」

「ああ、カッコ悪いとこ、見せちまったね」

「それは良い……アリス、シャルロッテとマルガレーテ呼んで、素材集めてろ」

「うん!!」

 ダークネス・スパイダーの巣とMを交互に見ていたアリスは、俺のセリフに元気よく返事した。

「あのさ、ケロの字」

「なんだ?」

「あたい……あたい」

 急に、Mがワナワナと震えだした。何事かと思ったのは俺だけではなかった。入ってきたばかりのシャルロッテとマルガレーテも驚いた顔をしている。

「蜘蛛がこの世でいっちばん苦手なんだよぉおおおおおおおおおお」

 Mは、うぉおおおおおおおおおおと咆哮をあげた。案外可愛いカミング・アウトが台無しである。

「お前、何で闇属性の迷宮に入ったんだ?!アホなのか?バカなのか?」

「どっちも、良く言われるな」

 きりっとドヤ顔で、そんなことを言うMは間違いなく、色々大丈夫じゃない。主に頭の中身が。

「言ってくだされば、ファントム・ミストかけましたよ」

 採集を終えたシャルロッテがMの近くに来ると、そう言った。ファントム・ミストは水属性スキルで相手に幻覚を見せるスキルだ。普通は成りすます時などに使うが、苦手なモノを別のモノに見せることもできるので、Mのような人には充分有効なスキルである。

 それにしても、アクア・ベールといい、ファントム・ミストといい、シャルロッテは幻術系のウィザードなのだろう。

「マジでかい?!」

 Mはシャルロッテの両手をがしっと掴む。

「はい。更に奥へ行くのでしたら、また蜘蛛系のモンスターに出くわすと思いますし」

「頼む!!」

「分かりました」

 交渉成立といったところか。

 シャルロッテがファントム・ミストをかけている間に、アリスとマルガレーテも素材集めを終えた。

 とりあえず、M錯乱フラグを折ったところで、さらに奥へと向かった。






    


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