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一通り、風俗関連の商業取引記録を読み終わった俺たちは、プリちゃんが用意したロースト・ラピッド・ボアとライ麦パンで夕飯を済ませた。
このライ麦パンがどっから湧いてきたブツなのか気になるが、地下洞窟内に結構イロイロ自生しているのを知っているため、考えないことにする。
「……ビートいっぱいのボルシチ」
おのおの自由にまったりしていると、ナスターシヤがそう言いながら、俺のローブを引っ張る。
「肉は問題ないとして、赤蕪って、冬に収穫するんじゃないか?」
寒冷地のウダール・モールニならばいざ知らず、この周辺の気候では、まだ出回ってないはずだ。
俺が困っていると、ナスターシヤが掴んでいる側とは反対側の裾をナニかに引っ張られた。見れば、プリちゃんが掴んでいた。思わず、蹴飛ばしたが、悶絶しながら喜んでいるので、無視する。
「クロ助!!プリちゃんが、ビートの生えてる場所知ってるって!!」
Mとマルガレーテと一緒にブラックジャックをしていたアリスが、身包みはがされた状態でこっちにやってくる。つか、この短時間でどんだけ負けてるんだというか、よく見ればMも結構あられもない格好をしているだとか、シャルロッテはキッチンで冷凍食品の大量生産をしているんじゃないのかだとか、どこから突っ込んでいいのか分からなくなる。
「マルガレーテの王子様!!念願のビキニ・アーマーです!!」
「とりあえず、PT内で身包みはぐのはやめとけ!!」
嬉しそうにMのビキニ・アーマーを入手したマルガレーテが報告してきたので、装備を返させる。
「変わりに、マル美に今晩のクロ助の隣を譲ってあげるね!!」
「さすが、アリスさん!!そっちでお願い!!」
俺の意見を無視して取引が成立する。つか、何で俺と一緒に寝るのが前提になってるんだ。
「それじゃあ、あたいは……そうだ、今度一緒にアーマーを買いに行こう!!」
「Mさんもよろしくお願い!!」
アサシンは装備不可であることを祈る。
「マルガレーテちゃん、昼間は淑女じゃないと駄目です!!だから、今度、みんなで危ない下着なんて注文しませんか?」
シャルロッテの声がするので、そちらを見ると、カタログを抱えて立っていた。どうやら、大量の荷物の中からソレを発掘していたらしい。
「そうね!!愛妻たるもの、人前では露出できないものね!!マルガレーテの王子様、夜に頑張りますから、我慢してくださいね!!」
「おい!!俺がいつビキニ・アーマーを望んだ!?」
「そのケロの字、あたいは動きやすいから、この装備なんであって……」
駄目だこいつら、仮にも一応俺の嫁たちだが、どうにかできる気がしない。
「あ、クロ助、プリちゃんが、放置プレイってうっとりしてるよ!!」
アリスの報告でトドメをさされた気分だ。
しかし、このカオス空間から抜け出すためには、プリちゃんが必要なのもわかっている。
「あー、そのだな。俺はビートを取りに行ってくる」
「……ナスターシヤも行く」
食材の名前にシャルロッテの目が輝いた。
「シャルロッテたちは、カタログでも見てろ」
とりあえず、こいつらを連れ歩いたら、大量の肉を入手してしまい、迷宮探索していたのがフォレボワ・ギルドの受付嬢にバレるので、足止めに必死になるというものだ。
「そうですね、私たちは一生懸命、クラウディオさん好みの危ない下着を選んでますね」
「クロ助!!クロ助の好みなら、わたしが詳しいから安心してね!!」
「いや、お前が一番安心できないって言うか、本人に向かってナニ言ってるんだよ?!」
「ナスターシヤちゃんのは、あたしに任せてね」
「……ありがとう」
マルガレーテとナスターシヤのやり取りに関しては、最早、突っ込む気も起きない。もう、こいつらが楽しければいいんじゃないかなという気もしてきた。多分どころか、確実に気の迷いだろうけれども。
こうして、不安要素だけを残して、俺とナスターシヤとプリちゃんはビート取りに向かった。




