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プリちゃんが持ってきた風俗関連の商取引の記録は、はっきり言って読みやすかった。
その手の単語は、死語になれば隠語として使うため、古語のままでも普通に読めた。
多分、プリちゃん的に気を使ったんだろうが、内容が内容なので年頃の少女たちに読ませるのは、ためらわれる。マルガレーテあたりは、日頃からイロイロやばいので、今更感はあるけれども。
しかし、俺の気を知らないヤツらは、しれっと顔色も変えずに、卑猥な単語が並ぶ書類を読みやがった。Mだけは顔を真っ赤ににていたが、ガチムチ兄貴系女子の赤面は可愛いよりも恐怖が勝る。
「ウダール・モールニの主要産業が風俗というのは盲点でした」
読み終わったシャルロッテが、嘆息しながらそう言った。
俺も思ったことだった。
確かに、ウダール・モールニの住人が命がけで此方に来るのは、食料事情などから、察せられたのだが、此方側からウダール・モールニまで行く理由は考えつかなかった。
「でも、よく考えたら、ソレ以外にないんですよねー」
シャルロッテの後に続いたのはマルガレーテだった。
人口が多いわけでもない場所に、頻繁に行き来するには、やはり、それなりの理由があったのだ。
「そうだな。だが、命がけの馬車ツアーとか、どれだけ飢えてるんだって感じだよな」
今もフォレボワには半殺し覚悟の歓楽街巡り馬車ツアーがあるが、まさかの「こんな歴史が存在していたとは」状態だ。
「クラウディオさん。寒冷地ですから、脂肪を蓄える固体が生き残るんですよ。そうです、ナスターシヤちゃん?」
俺の感想を聞いたシャルロッテがナスターシヤに話を振った。因みに、ナスターシヤの情操教育は諦めの境地だったりする。多分、取り返しがつかないくらいに、イロイロ知っている気がする。
「……最低でも、これくらい」
ずいっと、ナスターシヤが出したのは、際どいけれども、ギリギリ服を来た女性が描かれた本だった。どこで、入手したんだというか、これ与えたのはプリちゃんだろうというか、あの藁人形燃やしてやろうかではなくて。
ナスターシヤが見せてきた女性ははっきり言って、たゆんたゆんのむっちむちだった。ばいんだとかの擬音がつきそうなイイ体つきは、これ程ならば、まあ、命がけも理解できると思ってしまうモノだった。
「マルガレーテの王子様、あたし頑張ります!!」
「マルガレーテちゃん、この手のことは遺伝なので、大丈夫ですよ!!」
蔑まれるよりは良いが、この反応も居た堪れないものがある。
「ってことは、ナっちゃんも大きくなったら、こうなるんだ!!」
「……それは、もちろん」
アリスの空気を読まない発言に、ナスターシヤが無表情のドヤ顔で俺を見てきた。毒されすぎてしまったらしい。
「マルガレーテの王子様、良かったですね!!」
マルガレーテの発言で、俺はその場に突っ伏した。




