115
柔らかいものが顔にあたって、寝苦しいので目が覚めた。
目を開ければ、下着姿のアリスが俺にしがみついて寝ていた。恐ろしいのは、幼少からよくあることなので、今更動揺しようがないことだ。
今後、アリス以外の豊満な肢体を見たときにテンションが上がらないんじゃないかと不安になってくるが、今はそれどころではない。
アリスだけなら、長年よくあったことなのでいい。
問題はMのガチムチな腕が俺の腰をしっかりとホールドしていることだ。つか、腕の感触が完全に女じゃない。本人にはとてもいえないが、野郎としてもここまでガッシリした腕はそうそういないレベルだ。
「ふぁあ、くろ助、おはよー!!」
「起きたのなら、服を着ろ!!」
「全裸じゃないからいいじゃん」
「お前は露出狂にでもなりたいのか?!」
とりあえず、掛け布団の上に脱ぎ散らかしてあったチュニックを顎で示す。すると、しぶしぶではあるものの、アリスが服を着てくれた。
「そういえば、エっちゃんは着なくてもいいの?」
ほれっと、アリスがビキニアーマーでぐっすり寝るMを指す。
しかし、がっちり俺をホールドしてくれやがるので、俺からは余り姿は見えない。
ただ、感触から分かるだけなのだ。その女と思えないマッチョ具合は、視覚情報の重要性を再認識させてくれる。全くもってありがたくない。
「Mの場合、肉体美(筋肉)だからな?!」
「うん、エっちゃんの筋肉凄いよね!!」
つんつんと、Mの筋肉をアリスがつっついているのが、振動で分かる。
つか、こんだけ騒々しい上にアリスにつつかれて起きないMが凄い。
「みなさーん!!アップルパイが焼けましたー!!マルガレーテの王子様はあたしが寝起きのお手伝いします!!」
「あ、マル美おはよう!!」
「アリスさん、おはよう!!」
ぱしっとハイタッチして、アリスが部屋から出て行く。あの大食いはアップルパイの確保に向かったんだろう。
マルガレーテとナスターシヤの抑止がどれほど効いたか不明だが、この分だと空腹アリスが被害を最小に留めてくれそうである。
「ぐぅあああ、おはよう!!」
豪快な欠伸とともにMが起きる。こんなんで将来結婚できるのかと思ったが、既に書類上の俺の妻だった。どうしよう、俺の嫁だろと脳内が凄いことになる。
「Mさん、マルガレーテの王子様をずっと羽交い絞めにしてくれたんだよね!!」
「勿論、二人がかりでやったよ!!」
「後はあたしに任せて、アップルパイを堪能してね!」
「アップルパイかい?いいね!!」
そして、Mもいそいそと出て行き、取り残されたのはベッドの上の俺と、確実になにかやばいマルガレーテである。
「マルガレーテの王子様!!正式に結婚したことですし、家族計画をすすめましょう!!」
「やっぱりか?!」
こいつの言動的に予想の範囲内である。実に嫌な予想ではあるが。
「もう、マルガレーテの王子様ったら、やっぱりだなんて、そんなにあたしのことを待っていてくださったんですね!!流石にみなんさんの前ではと我慢していたんですが、夫婦なんですから、そんなこと気にしなっくても良かったんですよね!!」
「そう言う意味じゃねぇええ!!」
やばい、誰かこの暴走少女を止めてくれ。
「大丈夫です、やさしくします!!」
「多分それ、俺が言うべきセリフだよな?!つか、違う!!こういうのは、ギルドの依頼を済ましてから考えるべきだろ?!」
「大丈夫です。今からなら、依頼が終わったあたりですから!!」
ナニがだとは聞かない。聞きたくもない。
「もう、マルガレーテちゃんってば、来ないと思ったらイチャイチャしてたんですね」
イロイロとピンチだった俺だったが、シャルロッテが呼びにきたことで救われる。多分。
「だって、アリスさんのご両親にも頼まれたでしょ?この中だと、今、可能なのが、あたしとシャルロッテとMさんじゃない」
「そうですね。孫娘との指定のことですし、確立と期間を考えれば、早すぎることはないですね」
「でしょ?」
おい、シャルロッテが納得しているんだが。つか、ウィンザー夫妻は本当にナニ頼んでくれてるんだ。
「あれ?みんなアップルパイ食べないの?」
そして、元凶と言っても過言ではないアリスに救われた俺が複雑な心境になったのは当然の流れだった。




