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シャルロッテと一緒にギルドに行く。
さすが、フォレボワ・ギルドの受付嬢が代行しているだけあって、早朝でもちゃんと開いていた。
「おはようございます」
「ああ、お前たちカ」
山積みの書類を凄い早さで片付けながら、受付嬢が言う。顔を上げていないにも関わらず、俺とシャルロッテに報告用紙を渡してくれた。
「あト、これガ届いテいタ」
シャルロッテには別件でなにかの封筒を渡す。
「相変わらず、凄い量ですね」
「ああ、しかし、これガ片付けバ、暫くハ、手ガ開ク」
俺が用紙に記入しながら言うと受付嬢が応える。
そして、俺とシャルロッテの記入が終わる頃、区切りをつけて、顔をあげた。
「お前らナラ、不備ハないだろウ」
一目通しただけで、完成書類の山と思われる場所に積む。
「お疲れさまです」
シャルロッテが労うと、受付嬢はにっこり笑う。但し、あまりの顔面のいかつさに、凄みが増しただけに見えるのは、俺とシャルロッテの心にしまっておく。命が惜しい。
「あの後、アンジェリカと親衛隊ガ、かなり先まマデ調べて来タ」
そう言って、街道の地図を差し出す。
見ると、本当にかなり遠方まで調べに行ったようだ。あの受付嬢は多分、受付嬢をやめて冒険者になったほうが幸せなんじゃないかと思ってきたが、今は関係ないので、スルーする。
「これって、地上なら、山脈に入るか入らないかってくらいじゃないですか?」
縮尺を眺めて、自身の地図と比較したシャルロッテが言えば、受付嬢が頷く。
フォレボワから出たことがない俺は地理に明るくないので、二人のやりとりをおとなしく聞く。
「気がつくカ。そうダ。そしテ、そのためニ、足止めダ」
「防寒具待ちですか」
思い当たることがあった俺が発言すると、受付嬢が肯定する。
「お前たちモ、防寒具待ちだナ」
迷宮の先もかなりの寒気で、防寒具なしに進むのは躊躇われるため、俺とシャルロッテが頷く。
「お前たちガ、プリヘーリヤに防寒具についテ、聞いていてくれテ助かっタ。お前たちノ防寒具ハ数日モすれバ、届くク。発送のハトが来タ」
「それでは、この封筒はその便で来たんですね」
いつになく弾んだシャルロッテの声に、何が入った封筒か気になったが、本人から言うまでは触れないでおく。
「そうダ」
「それじゃあ、防寒具が届くまでは地図のトラップの位置潰しを進めておきます」
アリスとMと言う優秀なトラップ発見器があるので、俺から申し出ると、受付嬢は首を横に振る。
「いや、お前ハ休メ。ここに来てカラ、動きっぱなしだろウ」
「そうです!!クラウディオさんは休んでください!!」
受付嬢が言うと、シャルロッテも続けた。
確かに、仮眠しかとっていない気もする。すると言うか、思いっきり仮眠ばっかりだった。
「それじゃあ、宿屋に戻ったら休むことにします」
俺がそう言うと、受付嬢とシャルロッテは満足そうな表情を浮かべる。シャルロッテは可愛いけれど、受付嬢は背筋が凍るような恐ろしさだった。あ、これ、このまま帰ったら悪夢になりそうだ。
「何かあってもいいように市場でも覗いて帰るか」
ギルドから出て、シャルロッテに提案するとあっさり頷いてくれたので、市場へと向かった。
そして、俺がシャルロッテの悪癖を思い出したのは、非常識な量の姫リンゴを運ばされる最中だった。完全に手遅れである。




