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無表情ながら、妙にスッキリした顔をしたナスターシヤを連れて、居住区画に戻ると、ひと寝入りした三人組が待っていた。
「あ、シャルロッテ、ほら、マッピングしたやつ!!」
マルガレーテができたての巨大ヒヨコマップをシャルロッテに渡す。多分、ギルドに提出するんだろう。
「ナっちゃん、楽しかった?」
「……うん」
目ざといアリスが嬉しそうなナスターシヤの様子に気がついて声をかける。ナスターシヤも素直に答えて、どんな風に遊んだか語る。相手が巨大ヒヨコだと知らなければ、ただの動物虐待の数々に、人前で語らせるのは阻止しようと、俺は人知れず決意した。
「じゃあ、戻るって、今外は何時くらいなんだ?」
「明け方くらいだと思います」
俺の疑問にはシャルロッテが答える。丸一日以上迷宮で過ごしてしまったらしい。
しかし、ギルドの営業時間的にロス時間はないので、よしとする。
「そう言えば、プリちゃんはどうしたんだい?」
俺とマルガレーテとナスターシヤだけが帰ってきたことに気がついたMが訊ねてくる。M以外の反応が「そういえばプリちゃんいない」なのに涙を誘う。特にシャルロッテは、プリちゃんと冷凍食品を大量生産した仲だろうが。
「ああ、プリちゃんなら巨大ヒヨコのところに置いてきた」
「……巨ピヨちゃん、ついばんで遊んでた」
「バラバラ殺藁人形にならいといいですね」
ナスターシヤの付け足しに、シャルロッテが笑えないことを言う。
ただ、一番笑えないのは、ついばまれてうっとりしていたプリちゃん人形だろう。イロイロ手遅れすぎる藁人形だ。
雑談を終えると、さっさと迷宮を出る。
途中、Mのじいさんのテント脇を通れば、青年団たちと肌色の多い本の読書会をしていたので、スルーした。自分の祖父に飛び掛りそうなMはアリスが阻止してくれたので、問題なく町まで戻ってこれた。
「俺とシャルロッテがギルドか」
「……ナスターシヤ手紙書く」
「じゃあ、あたしが手伝うね」
「……ありがとう」
「じゃあ、わたしとエっちゃんが買出し……」
「マルガレーテ、こいつらシャドウ・バインドかけておくから宿屋に持って帰ってくれ」
おそろしいことをしでかそうとしたアリスを全力で止めると、マルガレーテに託す。Mはとばっちりかもしれないが、こいつもこいつで結構やらかすので止めておいたほうがいい。
「はいはい!!マルガレーテの王子様の愛妻のあたしが責任持って帰ります!!」
「……ナスターシヤ、幼な妻」
マルガレーテの嬉しそうな返答の後のナスターシヤの呟きに、本格的にこの子の情操教育をどうにかしようと思ったのは内緒だ。




