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食事を終えると、ナスターシヤに質問を開始する。
一応、俺の両親に貰った本も読んでみたが「この先はキミの目で確かめて欲しい」だった。
「ナスターシヤ、この街道に宿屋があったりしたか?」
俺が訊ねると、ナスターシヤは思案しだす。
ちなみに、アリスとMは腹いっぱいになって爆睡中だ。ヒヨコが起きるまで仮眠を取ったはずだが、普通に寝やがった。
「……あるにはあった。けど、無人」
その返答に、思わずガッツポーズをしてしまうのは、懸念事項が消えたからだ。
「無人って、管理はどうされていたんですか?」
俺の隣にいるシャルロッテが問いかける。尚、シャルロッテとは反対側の隣にマルガレーテ、正面にナスターシヤといった位置関係だ。
「……商隊の駐屯地みたいなもの。落盤があるから、人が住めない」
ナスターシヤの答えに、俺たち三人は頷きあってしまう。
「ってことは、氷室も無理か」
「……貯蔵にも向かない。そもそも、地熱ある。洞窟内のが温かい」
環境変化で寒くなった可能性もあるが、あの鍾乳洞空間はかなり北側にあると見てもいいかもしれない。
「そうそう、ナスターシヤちゃん!!この迷宮って、ウダール・モールニまで繋がってたりしないかな?」
ふと、マルガレーテが言い出す。
「……可能性はある。あの変態……お兄ちゃんに聞いたほうがいい。唯一の取り得」
「……そ、そうか」
唐突に飛び出た毒に対してはスルーする。プリヘーリヤの変人具合には触れない方が、精神的に安全だ。
「まあ、一回町に戻るか。プリヘーリヤの返事のこともあるし」
「そうですね。私も一旦ギルドに寄りたいです」
「……ヒヨコ」
帰ることで話がまとまっていたのだが、ナスターシヤが俺のローブを握りしめて、上目遣いに訴えかけてくる。相変わらずの無表情には「巨大ヒヨコと遊びたい」と書いてあった。表情筋が仕事放棄しているにもかかわらず、読めてしまう。
「アリスとMも寝てるし、少しなら見てくるか。マルガレーテもシャルロッテも仮眠しかとってないだろ?俺とプリちゃんがいれば大丈夫だろうから、休んでてもいいぞ」
「そうですね。クラウディオさんのお言葉に甘えます」
「あたしは、5ラウンドくらいいけますから、ご一緒します!!」
おい、一名、ナニを5ラウンドやらかすつもりだ。怖くて聞かないが。
しかし、ふざけた返答の割りには、マップを準備していたりするので、おそらく巨大ヒヨコの移動範囲だとか調べるつもりなのだろう。ヒヨコの移動範囲については、普通に欲しい情報なので、マルガレーテに任せることにする。
「じゃあ、俺とマルガレーテとナスターシヤ、ついでにプリちゃんでヒヨコのとこ行って来る」
「はい。留守は任せてください」
「絶対に休んでろよ?!」
シャルロッテに任せたら、冷凍食品の悲劇パートnのお知らせである。
俺とマルガレーテが念を押して出発したのは言うまでもない。




