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慣れた道を辿って、広間についた。
今度は五人で円になって座る。当然とばかりにマルガレーテは俺にくっつく。今度は腕まで絡めてきやがった。
「……で、何で、あんなところで寝ていたんだ?」
「迷ったんだ!」
俺が尋ねると、Mは誇らしげに言った。どこに誇れる箇所があった。
「ところで、迷宮内のトラップはお前なのか?」
「ああ、目印のことかい?」
Mと会話が成り立っている気がしない。
「目印とは、どういうことですか?」
シャルロッテも理解が追いついていないようだ。理解できないのは俺だけではなくて良かった。
「道しるべにしてたんだよ!武具屋ですすめられてさ!」
マリアさん、完全にアウトじゃねぇか。ドコの世界に全力で殺しにかかるトラップを目印にすすめる店員がいるんだ。あの人は速やかに店を誰かまともな人に譲るべきだ。
「でも、仕掛けた場所が分からなくて、結局迷っちまったんだ!自分で言うのもナンだけど、あたい、方向音痴なんだ!」
だから、何でいちいち胸を張る。そんなに鍛え抜かれた胸筋を自慢したいのか。
「で、町までは俺たちが送るとして……」
「ちょいっと、待ち!大問題があるんだ!」
俺のセリフを遮って、Mが言う。言うというか、声量的に叫ぶに近い。それも、女にしてはかなり太い声で。
「これ以上、なんの問題があるんだ?」
「トラップ買うのに、全財産使っちまって、金がない!」
「えっちゃん!同士!!」
力説するMの手をアリスがガシっと握った。火属性は散財の特徴でも持っているんだろうかと思いたくなる。
「この近辺の雑魚は討伐報酬こそ低いが、素材はそこそこ良い値段がつくぞ?」
「ケロの字!粉砕して、一つも入手していないに決まっているだろう!」
なに、この第二のアリス。きっと俺にとって戦士系統の火属性は鬼門にちがいない。
「それでは、ここを抜けたら、また、奥に向かうんですね」
げっそりしているうちに、シャルロッテがまとめた。問題児が増えただけだが、もう、気にしないことにする。
「そう言えば、Mさんの盾って、落としちゃったの?」
ふと、マルガレーテが言う。言われてみれば、ガーディアンなのに盾を所持していない。
Mはきょとんと自分を見下ろすと、にかっと笑った。
「攻撃は最大の防御と言うだろう?あたいは盾を持たない主義だ!!」
「お前、最早、ガーディアンでも何でもねぇよ?!」
ガーディアンと言えば、フル・プレート・メイルに盾と重圧な装備で固めているものだ。まあ、Mは鎧のような筋肉持ちだが。
「安心しな!こう見えて、PTに死者を出したことはないよ!」
白い歯を見せてMが自信満々に言う。どうやら、こんなんでもガーディアンとしては優秀らしい。
「不思議と、一回PT組むと二度と組んでくれなくなるんだよなぁ」
不安しか煽らない呟きは全力スルーに限る。
取りえず、休憩を終えると、今度こそ稼ぐために奥へと向かった。




