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多分牛肉と思われるモノを目の前にした、大食い火属性が全力を出したため、新種モンスターの清掃自体はあっさり終わった。
問題は、プリちゃんを親と思い込んでいるフシのある巨大ヒヨコである。
「思ったんだが、この先の地形ってどうなっているか分かるか?」
地下洞窟にしては天井も高い広場で、ぴよぴよ跳ねるヒヨコに引きながらも、マルガレーテに訊ねる。
マルガレーテは探索スキルで周囲を一通り調べ、目視までした後、少し首をかしげた。
「そうですね。この先の道は一本で、そのまま進むとボス部屋と思わしき、部屋があるみたいです」
「この牛っぽいやつと、巨大ヒヨコはドコから発生したと思う?」
「ここでないのなら、この先のボス部屋ですかね」
言って、マルガレーテが止まる。
「ボスっぽいですねー」
そして、巨大ヒヨコにも探索スキルを使って断定してくれた。
「これ、どうするんだ?!」
「でも、このサイズのモンスターが大量発生する心配をしないでもいいのは、有り難いと思います!!」
「それもそうだな」
こんなのが大量発生だとか、考えるのも恐ろしい。
そんな俺とマルガレーテを他所に、アリスとMが全力でヒヨコと戯れ出す。どうやら、プリちゃんの許可を貰っているらしい。
俺なら、瀕死どころか、即死レベルの体当たりに、ぷよよんとおなかを震わすだけの巨大ヒヨコは和むよりも、ステータスが気になってしかたがない。
冒険者としても攻撃力の高いアリスとMが二人がかりでも、びくともしないのは、この見た目で、フォレボワのダーク・ドラゴン以上の丈夫さがありそうだ。
「って、このヒヨコ、光と闇か?!」
「耐久特化ですね」
ぴよぴよとの鳴き声に、マルガレーテとほぼ同時に、そちらを見ると、巨大ヒヨコが大きな目でこっちを見てきていた。その表情は「かまってくれ」だ。
「遊ぶのはいいとして、ボス戦どうするんだ?!」
「クロ助、プリちゃんが、隠し通路開いてくれるって!!」
頭を抱えそうになっていると、アリスがさらっと爆弾発言かます。
それ以前にだ。
「お前、ここの通過に関わるんなら、最初っから探索についてこいよ?!」
思わず、プリちゃん人形を蹴飛ばすと、悶えながら喜ばれた。
それを見たヒヨコの瞳がキラキラ輝く。これ、親にするやつ完全に間違えた。つか、耐久性の高いドMはたちが悪いってレベルじゃないんだが。
「あ、マルガレーテの王子様、ヒヨコちゃんが、蹴って欲しいって構えています!!」
見れば、恍惚とした表情でヒヨコが待ち構えていた。
全力でとび蹴りした俺は。、正気度が削れすぎて不定の狂気が発生していたに違いない。




