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俺とマルガレーテは、飛び入り参加のヴェント・ギルドの受付嬢に賭けることにした。
勿論、負け狙いである。
「お、嬢ちゃんたちは、アンジェリカちゃんか!!」
「あの、女を捨てているとしか思えない食いっぷりは、賭けたくなるよな!!」
露骨な負け狙いと思われることを警戒していたが、どうやらそんな心配をしなくても良いらしい。
それにしても、おっさんたちから「女を捨てている」評価の受付嬢はイロイロ手遅れすぎだ。
「アンジェリカちゃんの意地汚さは、ヴェントでも右に出る者はないからなぁ」
「強敵ですね」
俺たちの負け狙いを、一番悟られたくなかったシャルロッテは周囲の評価を聞いて、納得してくれたようだ。これで、あとは、アリスが全力で頑張ってくれれば、冷凍食品を減らすことが出来る。
そうこう眺めているうちに、最初から参加していたMが食べ終わっていた。食べた重量を競うので、総計が出ているが、現在、Mがぶっちぎりの一位である。
「ふう、あたい、もう食べられないよ」
「よく食えるな」
満足そうな顔でMが合流してくる。
「お、赤髪のねえちゃん!!よく食ったな!!」
「こりゃあ、オレらの総取りだな!!」
「いや、あの金髪のねえちゃんと、アンジェリカちゃんだぞ?!」
わいわい騒ぐ周囲に、Mがきょとんとしていたので、賭け事をしていることを伝えた。
「面白いことしていたんだね!!あたいは勿論、あたいに賭けるよ!!」
「お、ノリがいいねぇ!!」
基本的に賭博も好きっぽいMは、嬉々として参加し出す。勿論、現金での参加だ。これ、後でアリスも現金参加するんだろうな。
「マルガレーテの王子様、Mさんなら勝てそうですよね!!」
ひょこっと、マルガレーテが言ってくる。確かに、Mならアリスに勝ちそうで、俺たちはMに賭けなかったのだ。
「Mが勝ってたら、現金収入か」
食費が浮くと考えてしまう辺り、アリスとMのエンゲル係数爆上げは洒落になっていないかもしれない。しかも、大量生産癖で、シャルロッテも貢献しているあたり、本当に真剣に考えないと危ないかもしれない。
それにしても、よく考えると、Mが勝った場合、俺たちとナスターシヤたちの賭け分の冷凍食品がはけるのでイイコトずくめである。
「M、勝ってるといいな!!」
思わず、言ってしまったのは自然の流れだ。
「ケロの字ったら、その、なんだい!!恥ずかしい!!」
何故か照れたMにバシバシ背中を叩かれた。
人知れず瀕死になりながらも火属性の容赦ない攻撃に耐えた俺は、絶対によく頑張った。




