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「ああ!!肉!!」
青年団と言う名の屍を連れて帰ってきたアリスが開口一番のたまった。
イロイロつっこみたいが、急いで蘇生をかける。
「死んだ!!アレは死んだ!!」
「怪力ダメ絶対!!」
「人類には早すぎる!!」
町の入り口にチュニック覆面で転がる様はかなり異様なのだが、みんな肉に食いついていてスルーされていた。
「まあ、死んでたからな。で、マルガレーテ、何があった?」
「それは、アリスさんが石に躓いてこけて、ドミノ倒しになりました!!」
どうしよう、普通に想像できる。
「……行かないほうが、マシだった」
ぼそっと呟くナスターシヤに同意できてしまう辺りが恐ろしい。
アリスは既にMと食べ比べを開始しており、シャルロッテは量産したパテを配り歩いていた。なお、冷凍パテとは別にさっき生産されたばかりのモノである。
「マルガレーテもナスターシヤも食べてくるか?」
「あたしは、マルガレーテの王子様に美味しくいただいて欲しいです!!さあ、部屋に行きましょう!!」
「よし、適当に貰ってくるな」
「……ありがとう」
仕方がないので、青年団のとあわせて五人分を貰ってくる。
調理は宿屋周辺で、祖母と親衛隊が中心となって行っていた。それゆえのパテ量産の悲劇だった。
適当な大皿二つに盛ると、フォークとナイフを持っていく。
宿屋すぐそばの丸太に乗せたあと、呼びにいけば、チュニック覆面どもがもだえていた。
「おい。何をやった?」
「……覆面あると、食べられない。剥く」
「騒がしいと悪いので、アサシンのスキルでおとなしくしてもらいました!!」
てへぺろとマルガレーテが可愛らしく言うが、青年団のHPは真っ赤と、やっていることはえげつない。
「待て!!俺の回復スキルはドレインしかないんだぞ!!」
「……殺れば大丈夫」
「大丈夫なワケあるか!!」
俺はすかさず突っ込みを入れる。つか、ナスターシヤが過激すぎだ。一体誰に似たのか考えそうになって、プリヘーリヤを反面教師にしたのだと思うことにした。
「脱ぎます!!脱ぎますから!!命だけはぁああ!!」
「くそ、年増にやられてなるものか!!」
そして、青年団も余計なな言葉でマルガレーテを煽る。
これがシャルロッテなら、多分、俺の蘇生スキルが必要になるところだろう。だがしかし、ここにいるのはマルガレーテである。
「マルガレーテの王子様以外の評価なんて、要らないんで」
その一言で、ばっさり切って捨てた。
「なん……だと……」
愕然と青年団が言うが、ぶっちゃけ、そのチュニック覆面を脱げ。
らちがあかないので、俺が青年団の覆面を剥ぐ。手足を押さえつけるのはナスターシヤが手伝ってくれたのだが、妙に生き生きとしていたのが不安だ。あれ、プリヘーリヤとプリちゃん人形の悪影響が出ているっぽい。
「ぐああああ、目がぁああああ」
「お前らはモグラか!!つか、昼間普通に歩いてたよな?!」
「マルガレーテの王子様、あたしモグラは美味しくないんで好きじゃありません」
だから、なんでお前はそんなモン食ってんだとの言葉は、ドブネズミを食った件を思い出して飲み込む。こいつの食生活には触れないほうがいい。
「って、全員土属性持ちだったのか」
じっくり見ていないので知らなかったが、なんだかんだ青年団の三人組は三人とも土属性持ちだった。これ、本当にアリスが邪魔しに行ったんじゃないかという確信がしないでもない。
「とりあえず、よそってきたから食え」
地面をのた打ち回っていた青年団も、俺の呆れ声に反応してむくっと起きる。
「くそ、これが妻帯者の余裕だと?!」
「軟弱者がぁああ!!」
「ロリ相手は犯罪だぁあああ!!」
覆面がないと声が響いて煩い。
「近所迷惑だ」
思わずサイレンスをかけた俺はきっと間違っていない。




