教師
今回は前回の続きで、教師がメインです。
いいのかな……?こんなので…………。
「みなさん、おはようございます。」
そう言って彼は和やかに笑う。彼、仲道 八柄は教師である。故に、こんな状況でも生徒たちに負担をかけないよう必死の思いでこの教壇に立つのだ。そして微笑み、生徒たちを元気づけようとしているのだ。だが、生徒たちからしてもそうだが、この表情にする意味はない。理由としては、彼の目のもとに隈ができており、顔も体も痩せこけているから……だけでなく、この雰囲気からだというのもある。彼の朝の挨拶は、ほとんど壊滅している教室に消えた。だが、これもいつもどおりの光景なのだ。
ナカミチは名簿を取り出し、出席をとる。その名簿にはいくつものバッテンと横長に引かれた線があった。そしてナカミチは、名前を読み上げようとして止めることにした。
出席簿を閉じ、苦笑いをして「ああ、どうやら間違えたみたいだ。ははは」と生徒たちに言う。そして、いつものように今日の連絡事項を言っておいた。だが、生徒たちは耳を傾けることなく、各々がどこか宙を見ていた。それでも、彼は『いつもどおり』を大切に行なっていた。
だが、彼は微笑みを消し、悲しげな表情をして生徒たちに向き合った。そう、彼には一つ言っておかなければならないことがあるのだ。これには生徒たちも驚いたのか、みんなが注目した。
「まず、教師として言わせてもらうが……生きてくれ。そして、すまない。最後まで……卒業までこのまま居たがったが……」
「先生……」
「……っ……俺は行かねばならない。戦場へ……」
言いたいことを話そうとするが、うまく言葉に表せられず、とぎれとぎれに話していた。しかし、涙は流すまいと必死に耐えていた。が、生徒の呼ぶ声に、涙腺は崩壊してしまった。だからこそ、言いたかったことを言う。
「…………それと、俺からは……ありがとう。必ずまた戻ってくるからな……では、」
「先生……」「……先生」「……先生……」
「HRはこれで終了です。起立…………礼っ」
彼は言い終えると、静かに扉へと向かった。生徒たちがこちらを見て、何か言ってくれているのだが、今の彼には耳を傾ける気力は残ってはいなかった……。生徒たちに涙を見せないために、素早く扉を開けた。出席簿を大事に抱えたままで……
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ではまた。