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離島症候群


散々だ。



考えるのも面倒なくらい、今日は散々だった。





朝は、いつも食べるソ○ジョイとウ○ダーが売り切れだし。


昼は、不審者が侵入とかいうデマにまた昼食を食べ損なうし。



そしてなんといっても放課後は、……“アイツ”だ。


不意討ちで来やがったし。

全然予想外に来やがったし。

……醜態さらしちまったし。



そういえば最近、屋上に行ってないことに気づいて頭が少し痛くなった。




――そんなことを考えながら、オレは廊下を進む。


目的地は“アイツ”の所。



(そういえばアイツの所にも行ってなかったな)


愚痴を言えるのはアイツだけだから、最近は溜め込む一方だった、と気づく。



アイツは途方もないアホだが、面白い人間であるのも確かだった。


(無駄話があんなに面白いものだとは、……中学までの俺は知らなかった)


しかし今日はそんな軽い話が出来るはずもなく。

今日の結果、金輪際それも出来なくなる可能性すらある。



そんな“告発(はなし)”。




「…………バカ野郎が」


そんな呟きは誰に聞こえることもなく、暗い廊下に溶けていった。




(理科室……。こんな時間だが、ここに寝泊まりしているって言ってたよな)



校内にたいした距離もあるわけもなく、すぐに着いてしまった。


その部屋は、窓という窓に全てカーテンがしてあって中が窺えない。

なのでここからは明かりの一筋も見えなかった。



しかし外観は存外普通なんだよなこれが。中に入ると相当面食らうが。


(本屋並みの蔵書【注・マンガのみ】とか、あのソファーは流石に趣味を疑うし。何を考えているのかもわからんからな)


付き合いは一年ちょいになるが、サラサラよくわからない。

頭はいいクセにあの言動、行動。果てには暇潰しに何でも屋まがいのことをしているとか。



(……まぁ、わかろうともしていないが)


この一年でわかったのはそういうことかも知れない。


(他人の理解なんて、ある程度で十分だ。少なくとも“俺にとっては”)


一般論は聞きたくない。普遍化した論は薄っぺらく感じる。


(アイツにとっての“生きるための哲学”は“快楽至上主義”。なら……“オレは”?)


一年は短かった。でも二年でも三年でも、何年かかろうと見つけようと思っていた。

“アイツ”がそばにいるなら。



(それが、今日で終わりになるかもしれないんだな……)




なんて、他愛のないことを思ってなかなか扉を開けずにいる自分に気づく。


激しく顔をしかめた。



(ぐずぐずしていても埒が明かないな。……行くか)


ノックも何もせず、勢いよく扉を開く。





最初に気づいたのは、部屋に明かりがついていなかったことだ。


と、思ったら急に視界が明るくなった。

どうやら人が入ってくると自動的に明かりのつく仕様らしい。


(本当に無駄な事が好きなヤツだ)



呆れ混じりに息をつくと、次に目についたのは主人が不在の金色のソファーだった。



「留守――か?」


それにしてはあまりにもタイミングが良いが。


(それともオレのタイミングは悪いのか)


どちらにせよ無駄足だった。


(仕方ない。出直すか)


また散々な日の記録更新かと、肩を落として。

でも何処かでホッとしている自分がいる気がして。


そんな、複雑な感情を抱えたまま身を(ひるがえ)したその時、扉の内側に貼ってあった紙に目がいった。


貼り紙。

そこにはこう書かれている。


【魔王さんはお出かけ中です。お急ぎの場合は化学実験室まで】




…………。



(外に貼っとけよ……)



ツッコミは無言のうちに。





苛立ちのままに乱暴に扉を閉めて理科室を出る。


(なんだって今日は本当に面倒なことばかりだな)


それに、なんというか……“心が”、落ち着かない。気持ち悪い。


言うなれば、


(嫌な予感、嫌な気配。それしかしない)



第六感(シックスセンス)は信じてないのだが。


その瞬間、ほんの一瞬だった。廊下に“何かの音”が響いた。






“ひっ…、…ャッ…”




そんな、“音”。


聞き間違いかもしれない。だが女の、悲鳴のようだった気も……?

 

(気のせいか?)


疑えば疑うほどに今聞いた音が空耳だったような気がして。


――本当は一度戻れば良かったのだ。


結論はそれだけなのだが。

その時のオレは、あの報告書に夢中だった。

止まった足はまた進みだし、振り返ることもなく進んだ。



――これも一つの選択。そしてこれによって、物語はさらに加速する――



化学実験室。

こんな時間……もうそろそろ9時になるが、ここで何をしているだろうか。



………

……

…アイツの行動を予測しようとするほうがバカなのかもしれない。


実験室を見ると、カーテンの隙間から光が漏れていて、そこに誰かがいることは明らかだ。

というかアイツ以外にいないだろうが。




(この導入【モノローグ】にも飽きたし、サッさと行くか)


()←による心情描写はあまりに続くとうんざりするからな……。




なんて、誰に向かって言ってるんだかわからないことを思い(思わされ)ながら俺は、


目の前の、扉を、開く。



その時の“オレ”は、




心を凍らせて。

造り上げた顔で。

鉄面皮と呼ばれても。

誰かが離れていっても。

揺るがない哲学を持って。

“生徒会室の女王”として。

落ち着いた、平素な気持ちで。

飄々としたアイツのように……。





関係の断裂も恐れず進んだ。




そこには、




『人体模型』があった。




…………目の前に。







「は?」


わざと鈍らせた心からかろうじて出てきた言葉そんなもので。




次の瞬間にはそれが、



うご…いて…?



ゆっくりとこちらに、



向かってくる?




そんな急激な場の異常に、次に出てきた言葉は、



「きゃ…キャア―――――――――――――!!!」



不覚にも、言葉ですらなかった。

福島なので地震(3/11)の影響をもろに受けて更新遅れました。

家から出れん……。次の更新もいつになるか微妙です。気を長くお待ちください。

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