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七不思議ラプソディ


つまらない。


今日は呼ばれてからずっと。



……どうした水無月茜?


彼と一緒なんだぞ!

もっとこう、にこやかにするとか何でも出来るだろうに!


自問自答しても原因は不明だ。


胸のどこかがキュッとなっている感覚。



何だ、この気持ちは――――







最初に私たちが向かったのは音楽室だった。


曰く、


「第一の謎です!その名も『闇夜に動く瞳~肖像画の怪~』」



…………。



無駄に名前が凝ってるのはあの小さな子の趣味らしい。

まぁ、何でもいいけど。


それよりそれを聞いたときのナガルの様子の方が謎だった。

「え………で気本(じま)?」

「あれ、アレ、ソレ?」




…………。



挙動が不審すぎる。

彼は何を知っているのだろう?

「ここなのですっ!」


小さな子、……ミハルちゃんは目一杯背伸びをして七不思議だという肖像画を指さしている。

が、届く気配はない。


うん、確かにこれは可愛いかもしれない。足がプルプルしてるし。


ナガルも何だか癒される~的な顔をしている。



…………。



む、また何かムカッとした。

何で?




「思ったんだけど、こうやって調べるだけならわざわざ私達が手伝わなくても大丈夫なような…」


というかいらなくない?私。


聞くと、ミハルちゃんは凄い勢いで首を振って、


「そんなこと無いです!その……魔王さんに依頼したのは“こういう時”のためで」


「こういう時?」


「その、だからコレです。ボクじゃ背が届かないのです」


著名な作曲家の肖像画。何処の学校にも有るであろうそれは、なかなかの高さに貼られていた。


「あ……、成る程」


納得だ。


「前にも一度1人で来たんですが下に椅子とか置いても全然届かなくて……」


不憫すぎる……。




「あの、それで代わりに調べていただければっ!」


「分かったわ。じゃあナガル椅子でも……ってアレ?」


いない。いつの間に?



「何処行ったんだろう?」


まさか私1人に全部押し付ける気じゃないよね?

『飽きた~』とか言ってそのまま消える可能性は十分あり得る…。



「その場合、ただじゃ済まさないけど……よいしょっと」


ピアノの椅子があったからそれを持ってきて、壁際に置く。


上に乗ると結構不安定で怖い。それでもなんとか肖像画を覗きこんだ。



…………。


至って普通だ。特に何の変哲もないベートーベンの……。



ピタ。


ん?何で、絵と、目が、合うの?







その時、

肖像画の瞳がギョロリと動いた!






「ひっ!」


まさか本当に……!?






(……ん。……さん)


囁き声まで聞こえるって…?げ、幻聴?これ本気でヤバ…!?


(……月さん?…無月さん?水無月茜さーん?)



あれ?この声…?



(もしかしてナガル?)

(当たり。今、目の前にいるよ)

(え?じゃあ、この目は……)

(うん、僕)

(な、なんだぁ…)


本気で怖かった…。私だってお化けとかいっぱしに怖いんだけど。



(で、何で“そんなトコ”にいるわけ?というかそこに部屋でもあるの?)

(あー…うん。僕の秘密のお部屋があったりするねぇ)


はー……。

理科室だけじゃなかったのか…。全く何を作ってるんだか。


(ん?じゃあ、この七不思議の噂は…)

(あー多分この覗き穴だろうね。出るときに誰もいないか確認するために作ったんだけど、まさか見られてるとは思わなかったよ)

(……アンタねぇ……)



一発、無性にコイツを殴りたくなってきた。



……そんな風に私がワナワナしていると、


(それにしても壁なかったら凄い接近度合いだよね、コレ)

(へ?)


言われて少し考えてみる。

すると、この位置にナガルの目があるということは、顔は………。



「っっっっ!!!」


ドッキリしすぎて椅子から落ちそうになった。


「だ、大丈夫ですか先輩っ!」


「う、うん……」


ヤバい。想像が、いろんな大変な想像が…っ!




「ん?水無月さん……。何してるの?」


「あ、綾波先輩。何処いってたんですか!?急に居なくなるから心配しましたよ?」


「にゃ、ナガル…っ!早い…」


いつの間にかもうナガルがそこにいた。え?え?、一体この部屋どんな構造になってるの?


「何が早いんです?」

「い、いや何でもない」



この真相をこの子に話して良いものなのか、私には判断がつかなかった。

七不思議のこと、凄い期待してたみたいだし。


それに何より、うっかり動揺して落ちそうなったなんて言えないし!!


「あ、そうです先輩っ!どうでした?」


と、早速聞かれた!


「あ、あー……、私には特には解らなかったなぁ……みたいな?」


「……そうですか」


うう。目に見えてしゅーんとされると良心が痛む。

けど……。

“あの”真相を知るよりかは…。


チラッとナガルを見る。


「まー、まー、ミハルちゃん。今はほら、真夜中じゃないからわからないのかもしれないよ」


お、ナイスフォロー。ナガル!内心ちょっと喝采。


「むー、そうですね。……それでは深夜にまた来て調べるです」



喝采撤回。はぁ?何なのその大変な展開は!?


「ミハ……」

「七不思議、というからには7つ全部をちゃんと暴かなければ記事としてのバリューが下がってしまいますっ!」

「あの……」

「これが駄目なら……本当に廃部にされてしまうです……」

「…………」

「その、だからっ!」



「大丈夫だよミハルちゃん。ね、水無月さん?」


そこでナガルの声。ああ、またあの優しい声だ。


「……うん」


頷くしかないだろう。この状況、この子。健気すぎて私も泣きそうだ。

私達の首肯にミハルちゃんはその顔をくしゃくしゃにして笑う。


「あ、ありがとうございますです先輩方!!」


ちょっぴりの涙がまた彼女の笑顔を引き立てて。





(ん、まぁ、それはいいとして夜はどうするの?あのカラクリを明かさないと解決しないんじゃ……)


それをナガルに問うと、


(んー、ああ。あれはもう別な原因(ダミー)を用意して細工済みだから大丈夫)


とのこと。まったく、用意がいいものだ。


そのナガルは暇だったのか、置いてあったピアノを弾いている。アイツ、ピアノまで弾けたのか…それに結構上手い?



「あー、そうだ。次の七不思議は何なの?」


ピアノに少し聞き惚れながら、ミハルちゃんに話しかける。


「二番目は化学実験室なのですが六番目の不思議にもう1つ音楽室のものがあるので、そっちをついでに」


「へぇ。どういうやつなの?」


「それがですね……。これは見回りの教師が聞いたらしいのですが『深夜に響く旋律~謳うピアノの怪~』といって……」


そこまで聞いて急にダンッ、とピアノの音が外れた。そっちを見てみるとナガルが固まっている。


……………。


(ナガル?アンタまさか…)

(にゃははは。夜さ、暇で1人だと無性にピアノが弾きたくなる時ってない?)

(ないわっ!あったとしても学校で弾くな!)


信じられない。七不思議のうちの2つもコイツが原因なんて……。



ん?

ナガル自身も“魔王”なんて言われて七不思議の一部だから、結局3つもコイツが不思議原因?


(アンタってヤツは……)


(あ、そこはさ、『アンタって人はーっ!』って言ってくれると嬉し……)

(あ゛あ゛?)

(ごめんなさい)


はぁ、まったく。どうするんだコレも。ミハルちゃんに何て説明すれば…



「ミハルちゃん。僕が弾いたところ特に問題は見当たらないから、夜にまた調べてみようよ」


またその手かっ!


「え?そうですか。じゃあ別の七不思議の方に行きましょうか…」


一体夜は何て言って誤魔化す気なんだろう……。



すごい不安を抱えながら、七不思議探求は続く。





「な、予算を削るなんて聞いてないぞ!」


嗚呼、五月蝿いな。そりゃそうだ。“さっき”決まったのだから。


「生徒会の決定です。素直に従ってください」


いつの間にか冷たい声をだすのに慣れてしまっていた。

……会長の影響なのだろうか。


「そんな……。くそっ、生徒会室に抗議に行く。駄目なら職員室だ!」


まあ、それが普通の反応なのだろうね。しかし“それ”をされるのが一番困るんだ。



「………キミ、去年、予算から私用のラケットを購入しませんでした?」



薄く、耳元で囁く。これも会長直伝のやり方だ。こうやって“煽る”のだ、と。


「っ!何でそれを!?」


驚き方が分かりやすい。ま、体育会系は皆こうなのかな?


「さて、職員室に行くんでしたっけ?」


「………」


「まったく、横領とはお粗末ですね。やるならバレないようにやらないと」


「………」


「教師達にバレたら停学モノですよ。お金関係はシビアですから」


「……わかった。削減に賛成しよう。だから……」


「だから何ですか?あなたは“自主的に生徒会の呼び掛けに応じて予算の削減に賛成した”、でしょう?」


「……ああ」



我ながら悪役が板についてきた、と思うのだけど。会長は“まだ甘い”と認めてはくれない。


会長には目指す人がいるらしい。

というかライバル?

パートナー?

心の支え?


いずれにしても“自分”が去年、副会長として彼女の下についてから一度もお目にかかったことのない人ではある。



……会ってみたい、という気持ちもある。だがそれ以上に何だか怖かった。


“彼”がいれば自分は“彼女”にとって不要になるのではないか、と。





ああ、言っていなかった。

自分は彼女が、あの冷血鉄面皮の生徒会長のことが好きだ。



ずっと、恋煩い。




……言ってて自分で悲しくなるけど。


今日も彼女の指示を聞く。




彼女の“勝利”の為に。




今日も、自分は………。





(End of One's side)

タイトルはハルヒからです。

……笹の葉な感じです。




明日も更新します...

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