第九話 スタートライン
第九話です。
ついに清水のミニ四駆大会が始まります。
駿府スピリッツにとっては初めての大会。会場の空気、レース前の緊張感、そしてスタートの瞬間を描いてみました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「それじゃあ、予選レース始めるぞー!」
模型店の店長の声が店内に響いた。
コースの周りには、たくさんの少年たちが集まっている。
手にはそれぞれのミニ四駆。
緊張した顔。
楽しそうな顔。
そして、勝つ気満々の顔。
平成のミニ四駆大会。
その独特の熱気が、店の中に満ちていた。
私はコースをじっと見つめる。
三レーンのプラスチックコース。
長いストレート。
大きなカーブ。
そして――
ジャンプ台。
「なるほど」
私は小さくつぶやいた。
少年が聞く。
「どうした?」
私はコースを指差した。
「このコース」
「ジャンプが勝負になる」
少年たちがコースを見る。
黄色いマシンの少年が言う。
「確かに高いな」
私はうなずく。
「スピードだけだと飛ぶ」
「でも遅いと負ける」
青いマシンの少年が苦笑した。
「難しいじゃん」
私は笑った。
「だから面白い」
そのときだった。
「次!」
店長の声が響く。
「予選第一レース!」
何人かの少年が前に出る。
コースのスタート位置にマシンを置く。
観客のざわめき。
私は静かに見ていた。
スタート。
マシンが一斉に走り出す。
モーターの高い音が店内に響く。
ストレート。
カーブ。
そしてジャンプ。
一台のマシンが空中で大きく跳ねた。
ガンッ!
コースアウト。
「うわあ!」
歓声が上がる。
私は腕を組んだ。
やっぱりだ。
ジャンプの着地が難しい。
少年の一人が言う。
「結構飛ぶな」
私はうなずいた。
「だから言ったでしょ」
「安定」
そのとき。
「次!」
店長が声を上げた。
「駿府スピリッツ!」
少年たちが一斉にこちらを見る。
「え」
「もう!?」
黄色いマシンの少年が慌てる。
「俺だ!」
私は落ち着いて言った。
「大丈夫」
少年が深呼吸する。
「……よし」
私はマシンを軽く確認する。
タイヤ。
ローラー。
重心。
問題ない。
私はマシンを少年に渡した。
「覚えてる?」
少年がうなずく。
「ジャンプ」
「そう」
私は言った。
「着地を信じて」
少年はスタート位置にマシンを置く。
周りの視線が集まる。
健太がコースの向こうから見ていた。
腕を組んだまま。
「スタート準備!」
店長の声。
少年の指がスイッチに触れる。
静かな一瞬。
そして。
「スタート!!」
マシンが一斉に走り出した。
黄色いマシンがストレートを駆け抜ける。
カーブ。
滑らかに曲がる。
そして――
ジャンプ。
一瞬、マシンが空中に浮いた。
私はその軌道を見つめた。
着地。
ガタッ。
しかし、コースアウトしない。
そのまま走る。
「おおっ!」
少年たちが叫ぶ。
そしてそのまま――
ゴール。
「一着!!」
店長の声が響いた。
少年は呆然としている。
「……勝った」
仲間たちが駆け寄る。
「やった!!」
「すげえ!!」
私は静かに笑った。
そしてコースの向こうを見る。
健太がこちらを見ていた。
口元に、少しだけ笑みを浮かべて。
私は思った。
この大会。
きっと簡単には終わらない。
平成のミニ四駆ブーム。
そして。
駿府スピリッツの挑戦は、まだ始まったばかりだった。
第九話を読んでいただきありがとうございます。
ついに大会のレースが始まりました。
駿府スピリッツはまず一勝。ですが、強豪チームとの戦いはここからです。
次回は、健太のレース回になります。
平成パワー型マシンがどれほどの速さなのかも描いていきます。
もし面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。
次話もぜひ読んでいただけたら嬉しいで




