第六話 それぞれのマシン
第六話です。
駿府スピリッツが結成され、いよいよチームとしての活動が始まります。
今回はメンバーそれぞれのマシンを改造していく回です。
同じミニ四駆でも、乗り手によってマシンの方向性は変わっていく。
そんなチームづくりの始まりを描いていきます。
「じゃあ、まずはマシンを見せて」
私は作業台の前で腕を組んだ。
少年たちは顔を見合わせる。
「全部?」
「うん」
私はうなずく。
「チームなんだから」
「みんなのマシンを知るのが最初」
少年の一人が自分のマシンを机に置いた。
黄色いボディのマシンだった。
「これ、俺の」
私はマシンを手に取る。
軽い。
でも――
「タイヤ」
私は言った。
「減りすぎ」
少年は頭をかいた。
「いっぱい走らせてるから」
私は笑う。
「それはいいこと」
「でも」
マシンを軽く揺らす。
「グリップが弱くなる」
少年は少し驚いた顔をした。
「そんなのあるの?」
私はうなずく。
「あるよ」
次の少年がマシンを出した。
青いボディ。
かなり軽い。
「これ、俺」
私は裏返す。
「……肉抜き?」
少年が胸を張る。
「軽いほうが速いから!」
私は少し笑った。
確かに、平成では流行っていた改造だ。
でも。
「やりすぎ」
「えっ?」
私はマシンを指差す。
「これだと強度が足りない」
「ジャンプで折れる」
少年は固まった。
「マジ?」
「マジ」
そのとき、店長が奥から言った。
「昔からそうなんだよな」
「軽くしすぎて壊す」
私はうなずく。
そして言った。
「いい?」
少年たちを見る。
「ミニ四駆は」
「自分の走り方に合わせる」
少年が聞く。
「走り方?」
「うん」
私はコースを指差した。
「コーナーが得意なマシン」
「ストレートが得意なマシン」
「安定型」
「スピード型」
「全部違う」
少年たちは静かに聞いていた。
私は続ける。
「そして」
「ドライバーも違う」
少年が首をかしげる。
「ドライバー?」
私は笑う。
「走らせる人」
「性格」
少年たちは顔を見合わせる。
私は一人ずつ指差した。
「君は突っ込むタイプ」
「君は慎重」
「君はスピード好き」
みんな驚いている。
「だから」
私は言った。
「同じマシンじゃダメ」
「それぞれ違うマシンにする」
そのとき、入口のベルが鳴った。
カラン。
みんな振り向く。
そこに立っていたのは――
健太だった。
「……またやってんのか」
彼は店の中を見回す。
作業台の上のマシン。
集まっている少年たち。
そして私。
健太は少し笑った。
「チームごっこ?」
少年の一人が言い返す。
「ごっこじゃねえ!」
「駿府スピリッツだ!」
健太は肩をすくめた。
「へえ」
そして私を見る。
「で?」
「強くなるの?」
私は答える。
「なるよ」
健太は少し笑った。
「じゃあさ」
「今度の日曜」
みんなが静かになる。
健太は言った。
「模型店大会ある」
「清水の店」
少年たちがざわつく。
「マジで?」
「大会?」
健太は私を見る。
「出てみろよ」
「チームで」
そしてニヤッと笑った。
「勝てるならな」
店の中が静かになる。
私は少し考えた。
平成のミニ四駆大会。
このチーム。
そして。
令和の知識。
私は笑った。
「いいよ」
少年たちが一斉に私を見る。
「ほんと!?」
私はうなずいた。
「出よう」
「駿府スピリッツで」
少年たちの顔が一気に明るくなる。
平成のミニ四駆ブーム。
そして。
私たちの最初の大会が、もうすぐ始まる。
駿府スピリッツのメンバーたちのマシンが少しずつ見えてきました。
ここからそれぞれの個性に合わせたチューニングが始まります。
次回はいよいよ大会に向けた本格的な改造回です。
健太との再戦も近づいてきます。
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次話もぜひ読んでいただけたら嬉しいです。




