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第十五話 決勝

第十五話です。


ついに決勝。

世那と健太、最後のレースです。


夕方の模型店で起きた、小さな勝負の時間を書きました。

模型店の外は、もう夕暮れだった。


ガラス窓から入る光が、コースを長く照らしている。


店の中には、さっきより多くの子どもたちが集まっていた。


決勝。


残ったのは、二人だけだ。


健太。


そして私。


健太はコースの向こう側でマシンを整えていた。


青いサンダードラゴン。


さっきより、少しだけセッティングを変えている。


ローラーの角度。


タイヤの位置。


ほんのわずかな違い。


でも、速いレーサーほどそういうところを触る。


私は白いマシンを手に取った。


軽く回す。


モーター音が小さく響く。


いい回転だ。


「世那」


声がした。


健太だった。


私は顔を上げる。


健太は少しだけ笑っていた。


「楽しかったな」


私は少し驚いた。


「まだ終わってないよ」


健太は肩をすくめた。


「まあな」


そしてコースを見た。


「でもさ」


少し間があった。


「こんな真面目に何かやったの、久しぶりだ」


私は黙って聞いていた。


健太はマシンを見つめる。


「勝ちたいけど」


そして小さく言う。


「でも」


「いいレースにしたい」


私はうなずいた。


「そうだね」


店長の声が響いた。


「決勝!」


店の中の空気が張りつめる。


子どもたちがコースの周りに集まる。


私は白いマシンをスタート位置に置いた。


健太も隣に置く。


白と青。


二台のミニ四駆。


静かなスタートライン。


祖父の声が浮かぶ。


急ぐな。


最後に勝てばいい。


そして、もう一つ。


未来の記憶。


リビングの机。


小さな手。


息子の声。


「ママ」


「このマシン、速い?」


私はあのとき言った。


「速いよ」


「すごく速い」


店長の声。


「スタート準備!」


模型店の空気が止まる。


そして。


「スタート!!」


二台のマシンが走り出した。


ストレート。


青いマシンが飛び出す。


速い。


さっきより速い。


歓声が上がる。


カーブ。


白いマシンがぴったり後ろにつく。


離れない。


そしてジャンプ。


青いマシンが高く跳ねる。


着地。


バランスを保つ。


しかし。


白いマシンが横に並ぶ。


ストレート。


二台が並んで走る。


誰かが叫ぶ。


「並んだ!」


最後のカーブ。


青いマシンが少し膨らむ。


ほんのわずか。


その隙間。


白いマシンが前に出る。


ジャンプ。


小さく跳ねる。


着地。


揺れない。


そのまま。


ゴール。


店長が叫ぶ。


「一着!」


歓声が広がる。


でも。


私は後ろを見た。


健太がマシンを回収していた。


少しだけ息を吐いている。


そして笑った。


「負けた」


私は首を振る。


「いいレースだった」


健太はマシンを見た。


青いサンダードラゴン。


「またやろう」


そう言って顔を上げる。


「もっと速くしてさ」


私はうなずいた。


夕方の光が、コースの上に伸びていた。


模型店の中には、まだモーターの匂いが残っている。


小さな勝負。


でも。


きっと、ずっと覚えている時間だった。

第十五話を読んでいただきありがとうございます。


大会の決勝を書きました。

小さな模型店のレースですが、子どもたちにとっては大きな時間だったと思います。


次回からは、新しい展開に入ります。

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