第十一話 不器用なスピードスター
第十一話です。
今回は駿府スピリッツのメンバーのレース回になります。
大会ではマシンの速さだけでなく、レーサーの性格も少しずつ表れてきます。
チームの中でも、特にスピードが好きな少年のレースを書いてみました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
「次のレース!」
店長の声が模型店の中に響いた。
コースの周りに集まっていた少年たちがざわめく。
私はエントリー表を見る。
次に走る名前。
直人。
私は振り返った。
青いボディのミニ四駆を持った少年が立っている。
少し細身で、どこか落ち着きがない。
でも、その目は真剣だった。
「俺か」
直人は深呼吸した。
黄色いマシンの少年が肩を叩く。
「大丈夫だって」
「世那さんが調整したんだし」
直人は苦笑した。
「でも俺、こういう大会初めてなんだよ」
私は直人のマシンを手に取った。
軽い。
やっぱり直人らしいセッティングだ。
「スピード好きだよね」
直人は少し照れくさそうに笑う。
「まあ……」
「速いのが好き」
私はうなずいた。
「知ってる」
そしてマシンを指差す。
「このマシンはストレート型」
直人が目を丸くする。
「ストレート型?」
「真っすぐ速いマシン」
私はコースを見る。
長いストレート。
そして問題のジャンプ台。
「でも」
直人が固まる。
私は言った。
「突っ込みすぎる」
仲間たちが笑った。
「それな」
「直人いつもそれ」
直人は頭をかいた。
「……否定できない」
私はマシンを直人に渡した。
「覚えてる?」
直人はうなずく。
「ジャンプだろ」
「そう」
私はコースを指差す。
「あそこで焦らない」
直人は真剣な顔でコースを見る。
ジャンプ台。
さっきから何台もコースアウトしている場所だ。
私は静かに言った。
「速さを信じて」
直人は小さくうなずいた。
「……わかった」
そのとき。
「次!」
店長の声が響く。
「直人!」
直人がコースの前に出る。
周りの少年たちが少し離れる。
直人はマシンをスタート位置に置いた。
指が少し震えている。
私は後ろから声をかける。
「直人」
直人が振り向く。
私は言った。
「楽しんで」
直人は少し笑った。
「……了解」
「スタート準備!」
静かな一瞬。
そして。
「スタート!!」
マシンが一斉に走り出す。
直人の青いマシンがストレートを駆け抜ける。
速い。
かなり速い。
仲間が叫ぶ。
「いける!」
カーブ。
少し揺れる。
でも抜ける。
そしてジャンプ。
青いマシンが空中に跳ねた。
一瞬の静寂。
着地。
ガタッ。
揺れる。
でも。
コースアウトしない。
「よし!!」
仲間たちが叫ぶ。
青いマシンはそのまま一周を走りきった。
そして。
ゴール。
「一着!」
店長の声が響く。
直人がしばらく動かない。
そして小さく言った。
「……勝った」
仲間たちが駆け寄る。
「やった!」
「すげえ!」
直人はマシンを見つめていた。
私は笑う。
「速いでしょ」
直人はうなずいた。
「うん」
そして言った。
「ミニ四駆……面白い」
私は思った。
その言葉が、きっと一番大事なんだ。
平成のミニ四駆ブーム。
そして駿府スピリッツの挑戦は、まだ続いていく。
第十一話を読んでいただきありがとうございます。
今回は直人のレース回でした。
チームのメンバーそれぞれの個性が少しずつ見えてくる回になります。
次回はいよいよ大会も終盤。
世那のマシンも登場します。
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次話もぜひ読んでいただけたら嬉しいです。




