第十話 健太のマシン
第十話です。
駿府スピリッツが初勝利をあげた直後、次のレースに登場するのは健太。
平成らしい「パワー型マシン」の走りを描いてみました。
世那の考えるミニ四駆と、健太のミニ四駆。
その違いも少しずつ見えてくる回になります。
「次のレース!」
店長の声が店の中に響いた。
コースの周りにいた子どもたちがざわめく。
私はコースの向こうを見た。
そこに立っていたのは――
健太だった。
腕を組み、静かにコースを見つめている。
その表情には、さっきのレースを見ていた余裕が残っていた。
黄色いマシンの少年が小さく言う。
「健太の番だ」
私はうなずく。
「見ておこう」
健太はポケットからマシンを取り出した。
青いボディ。
シャープな形のミニ四駆だった。
少年たちがざわつく。
「サンダードラゴンだ」
「かっけえ……」
私はマシンを見て思った。
やっぱりパワー型。
モーターはかなり強い。
タイヤも軽い。
スピード重視のセッティング。
健太はスタート位置にマシンを置いた。
他の参加者たちも並ぶ。
空気が少しだけ張りつめる。
「スタート準備!」
店長が声を上げる。
私はコースを見つめる。
ジャンプ台。
あそこが勝負だ。
「スタート!!」
マシンが一斉に走り出した。
その瞬間だった。
健太のマシンが飛び出した。
「速っ!」
少年が思わず叫ぶ。
ストレート。
他のマシンを一気に引き離す。
モーター音が高く響く。
カーブ。
多少揺れる。
それでもスピードは落ちない。
そして――
ジャンプ。
青いマシンが空中に大きく跳ねた。
一瞬、観客の声が止まる。
そして。
ガタン!
着地。
少し揺れる。
しかし――
コースアウトしない。
そのまま走り続ける。
「うおおおお!!」
歓声が上がる。
健太のマシンはそのまま一周を走りきった。
そして――
ゴール。
「一着!」
店長が叫ぶ。
店の中がざわめく。
「やっぱ健太速え!」
「さすがだな」
健太はマシンを回収した。
そしてコースの向こうからこちらを見る。
私は小さく笑った。
速い。
確かに速い。
でも。
私はコースをもう一度見た。
ジャンプ。
カーブ。
着地。
あのマシン。
まだ少し暴れている。
私は小さくつぶやく。
「まだ速くなる」
青いマシンを見ながら思う。
あれはまだ完成していない。
そのときだった。
健太がこちらに歩いてきた。
少年たちが少し身構える。
健太は私の前で止まった。
「見た?」
私はうなずく。
「見た」
健太は笑う。
「どう?」
私は答える。
「速いね」
健太が少し得意そうに言う。
「だろ?」
私は続けた。
「でも」
健太の眉が少し動く。
私はコースを指差した。
「ジャンプ」
「まだ不安定」
健太は一瞬だけ黙った。
そして言う。
「……見てわかるのかよ」
私は笑う。
「ミニ四駆ガチ勢だから」
健太はしばらく私を見ていた。
そして言った。
「決勝で当たろうぜ」
私はうなずいた。
「いいよ」
健太は少しだけ笑った。
そして仲間のところへ戻っていく。
私はコースを見つめた。
平成のミニ四駆ブーム。
そしてこの大会。
どうやら――
まだまだ面白くなりそうだった。
第十話を読んでいただきありがとうございます。
健太のマシンがついに走りました。
パワー型マシンの速さと、世那の見る「制御」の違いが少しずつ見えてきた回になります。
次回は大会予選の続き、駿府スピリッツのメンバーのレース回になります。
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次話もぜひ読んでいただけたら嬉しいです。




