焚き火の夜の告白
凍てついた荒野の夜は、単に暗いだけではない。それは重く、息苦しい黒い毛布のようだった。月がなければ、世界はただ消失してしまう 。
僕たちは、地図を見つけた小さな石造りの前哨基地で夜を明かすことにした。 外で眠るよりは安全だし、ここ数日で初めて「燃料」があったからだ 。 古く腐った椅子やテーブルを壊した。それらは骨のように乾いていて、すぐによく燃えた。 石の床の中央で小さな火がパチパチと音を立て、踊るようなオレンジ色の光が影を押し返していた。氷の世界における、小さな温もりの円だった 。
僕はメグの背中にはいなかった。床に降り、這いずりながら彼の周りを移動していた。
「じっとしてて」と優しく声をかけた 。
メグは火のそばに立っていたが、頭を低く下げていた。消耗しきっている。 瞼が重そうに垂れ下がっているのが見えた。疲れた筋肉を休めるために、体重を左右の足へ交互に移し替えているのが分かった 。
基地の中で、古く硬いブラシを見つけた。毛が半分抜けていたが、ないよりはマシだ 。 僕は彼の左側へ這っていった。役立たずの足が埃っぽい石床を引きずられ、カサカサと音を立てる。 重労働だった。動くたびに、腕の力だけで自分の体重を持ち上げなければならない 。 だが、僕は気にしなかった。
手を伸ばし、彼の毛並みをブラッシングし始めた。 ゴシッ、ゴシッ。 乾いた泥と凍った汗が、黒い毛から落ちていく 。
「今日はよく頑張ったな」と僕は囁いた。
肩をかけ、脇腹をかけた。それから後ろ足の周りを這って反対側へ移動した。 たった数フィート動くだけで、たっぷり一分はかかった。たどり着いた時には息が切れていた 。
彼を見上げた。巨大だった。皮膚の下の筋肉は鋼鉄のケーブルのようだった。疲れていても、彼は力の傑作だった 。
そして自分自身を見下ろした。 僕は小さく、壊れていた。足は細く、使われない筋肉は衰えていた 。 喉の奥に重い塊ができた。罪悪感の味がした。
「僕は重すぎるよな、メグ」声が震えた 。
メグの耳が動いた。彼はゆっくりと頭を回し、僕を見た。 大きな黒い瞳に、焚き火の炎が映っていた 。 僕はブラッシングの手を止め、彼の暖かい脇腹に手を置いた。呼吸するたびに肋骨が動くのを感じた。
「体重だけの話じゃないんだ」 僕は彼を人間であるかのように話しかけた。 「僕は重荷だ。お前は僕を運ばなきゃならない。僕のために戦わなきゃならない。僕が這いずっている間、待っていなきゃならない」
僕は恥じ入り、床を見つめた。
「もし一人なら、もっと速く走れるのに。化け物からも簡単に逃げられるのに。野生の群れを見つけて、自由に生きられるのに」 熱く刺すような涙が目に溢れた。 「どうして残るんだ? どうして僕を置いていかないんだ?」
メグは離れなかった。代わりに、一歩近づいてきた。 彼はその巨大な頭を下げ、鼻先を僕の胸に押し付けた。長く、身震いするような息を吐く。鼻孔からの暖かい空気が、僕の冷たい顔にかかった 。 彼は僕を小突いた(ナッジ)。今度は「押し」ではなかった。愛撫だった。 彼が知る唯一の言葉で、彼は僕が間違っていると伝えていた 。
僕はブラシを落とした。彼の首に腕を回し、粗いたてがみに顔を埋めた。強く抱きしめ、毛皮に顔を押し付けて静かに泣いた。
「お前がいなかったら……」言葉が詰まり、真実が溢れ出した。「お前がここにいなかったら……僕はとっくに死んでた」 。
少しだけ体を離し、彼の目を見つめた。 「お前はただの友達じゃない。お前は僕の命だ」
メグはゆっくりと瞬きをした。理解していた。
僕たちは長い間そうしていた。廃墟の部屋で、外では風が叫ぶ中、少年と馬が互いにしがみついていた 。 やがて火が消え始めた。部屋の隅から寒さが忍び寄ってくる。
「寝なきゃな」顔を拭って言った。 寝袋はない。毛布もない。 隙間風の入るドアから離れた部屋の隅へ這っていった。冷たい床に横たわり、暖を保つために体を丸めた 。
メグが歩いてきた。彼は立ったまま見張りをするのではなく、子供の頃にしてくれたことをした 。 膝を曲げ、重い体を床に沈めたのだ。 彼は僕のすぐ隣に横たわり、背中を僕の胸に押し付けた。僕を囲むように丸まり、生きた温もりの壁を作ってくれた 。 凍えた手を彼の毛皮に押し当てた。彼の体温が僕の中に染み込み、石床の冷気を追い払ってくれる。
目を閉じた。 今夜はゾンビも怖くない。寒さも怖くない 。 僕には足がある。たまたまその足には四つの蹄があり、そして黄金の心臓を持っているだけだ 。
「おやすみ、兄弟」僕は囁いた。
メグは深いため息をつき、やがてその呼吸はゆっくりとしたリズムに変わった。 僕たちは眠った。二つの魂、一つの呼吸。夜明けと、西への長く危険な道を待ちながら 。




