死者の地図
飢えというのは奇妙なものだ。最初は、腹の中でライオンのように吼える。痛いほどに 。 だが数日もすれば、それは静かになる。重く鈍い石となり、ただ体を下へと引きずり込む 。
シカルプールの廃墟を出てから三日間、僕たちは歩き続けていた。 喉の渇きを癒やすために雪を食べた以外、何も口にしていない 。 メグは強かったが、その動きが変わってきているのが分かった。遅くなっている。頭の位置が少し下がっている 。氷から突き出た枯れた茶色の草を食んでいたが、それだけでは足りない 。 シェルターが必要だ。物資が必要だ。
「あと少しだ」 僕は彼の首を叩き、囁いた。広大な静寂の中、僕の声は細く弱々しく響いた 。 景色は変わっていた。山を抜け、岩だらけの平原に出たのだ。ここでは風は唸らず、シューシューと音を立てていた。乾いた雪が白い砂のように地面を流れていく 。
前方の平らな地平線を、何かが遮った。 岩ではない。直線的すぎる。建物だ。 「見ろよ、メグ」震える手で指差した。「屋根だ」
それは風を防ぐために大きな岩の側面に建てられた、石造りの小さな前哨基地だった。古く――古代と言ってもいいほど――見えたが、屋根はまだ残っていた 。 メグは避難所の匂いを嗅ぎつけた。砂利の上で蹄の音を響かせ、歩調を早めた 。
基地にたどり着いた。重い木のドアは蝶番が腐り落ち、氷に覆われて地面に倒れていた 。 「慎重に」 メグは壊れたドアをまたぎ、僕を背に乗せたまま中に入った。 違いは歴然だった。風が止んだ。中の空気は凍てついていたが、凪いでいた。埃と古い革の匂いがした 。 一部屋だけの小屋だ。テーブルと数脚の椅子の残骸があった。 そして隅に、金属の箱があった 。
「もっと近くへ、メグ。あの隅へ」 メグは瓦礫を避けながら狭い空間を慎重に進み、金属の箱のすぐ隣で止まった 。 僕は鞍から身を乗り出した。これは新しいストラップのテストだ。 革が僕の足をしっかりと脇腹に固定していたので、落ちることなく大きく身を乗り出すことができた 。腕を伸ばし、指先が冷たい金属の蓋に触れた。 錆び付いている。 「くそ、届かない」と僕は呻いた 。
降りなければならない。 僕は足の結び目を解いた。寒さで指がかじかみ、不器用な作業になった。ようやくストラップが緩むと、僕はメグの背中から滑り落ち、腕で体を支えながら床に着地した 。 箱のところまで這っていった。床から重い石を拾い上げ、錆びた鍵に叩きつけた。
ガキン。ガキン。 鍵が砕けた。僕は蓋を跳ね上げた 。
心が沈んだ。食料はない 。 中に入っていたのは紙だけだった。羊皮紙の巻物、革の表紙の本、見たことのない奇妙な道具。 「役立たずめ」 僕は本を放り投げた。「紙は食えないんだよ」
メグが肩をつついた。彼は箱の底にある長い革の筒の匂いを嗅いでいた。興味があるようだ 。 「なんだ?」 筒を取り出した。古くなって黒ずんだ赤い蝋で封印されている。封を割り、中の大きなシートを取り出した。紙ではなく、加工された皮だ。丈夫で防水性がある 。 埃っぽい床にそれを広げた。
それは地図だった。 だが、僕の知っている世界の地図ではなかった 。
シカルプールはあった。小さな黒い点で記されている。だがその隣に、誰かが「赤い髑髏」を描き込んでいた 。 地図上の線を追った。僕の知っているすべての村、父が交易したすべての町――それらすべてに赤い髑髏が記されていた。 全滅。全滅。全滅。 この地図は墓場だった 。
だがその時、僕の目は遥か西の方角へと吸い寄せられた。山脈を越え、凍てついた平原を越えた先に、一つの円があった 。 それは青いインクで描かれていた。円の中にはシンボルがある。「昇る太陽」だ。 そのシンボルの下に、色あせた手書きの文字があった。
『最後の砦。安全地帯』
喉の奥で息が詰まった。 「メグ……」青い円を指でなぞりながら囁いた。「見てくれ」 彼に地図が理解できるか分からなかったが、彼は僕が指差した場所を見た 。 「僕たちだけじゃない」目から涙がこぼれた。「人がいるんだ。生存者が。ここを見て」
地図の端に書かれた文字を詳しく見た。兵士か斥候が書いた記録だ 。
『大寒波402年。霜が広がっている。ウォーカーがどこにでもいる。我々は東部を放棄する。我々は「砦」へ移動する。これを見つけた者は……西へ来い。太陽を追え』
「402年」と僕は声に出して読んだ。「僕たちが目覚めたのは448年だ。この地図は……40年前のものだ」
賭けだった。「砦」はもうなくなっているかもしれない。人々は死んでいるかもしれない。 だが、虚無の中を彷徨うよりはマシだ。それは「目的」だった 。
地図上の距離を見た。遠い。何マイルもの開けた危険な土地が続いている。何週間もかかるだろう 。 メグを見上げた。彼は疲れている。肋骨が浮き出始めている。僕も弱っている。足はただの死んだ重りだ 。
「遠いぞ、メグ」僕は静かに言った。「危険だ。化け物たち……寒さ……たどり着けないかもしれない」
メグは頭を下げ、僕の額に自分の額をこつんと押し付けた。 長く、温かい息が僕の顔にかかる。 彼は言っていた。「行こう」と 。
僕は頷いた。地図を丸めてジャケットに押し込んだ。 「よし」 胸に新しい炎が灯るのを感じた。 「西へ行くぞ」
手を伸ばして彼のたてがみを掴み、自分の体を引き上げた。腕が震えてきつかったが、やり遂げた。 再び足を縛り付けた。今度はもっときつく 。
目的地ができた。 僕たちはもう、死から逃げるだけじゃない。 僕たちは、「生」に向かって走るのだ 。




