448年の眠り
闇。 長い間、そこには闇しかなかった。閉ざされた部屋のような黒さではない。重く、押し潰すような「無」だ 。 夢もなかった。痛みもなかった。ただ……静寂だけがあった。
その時、音が静寂を破った。
ポチャン。 ポチャン、ポチャン。
水が滴る音だ 。 次に光が訪れた。僕の記憶にある暖かい黄色の太陽ではない。瞼を突き刺すような、過酷で鋭い灰色の光だった 。 体が痙攣した。
「ガハッ!」
目がカッ開かれた。飢えた男が食事にありついた時のように、大きく口を開けて空気を吸い込んだ 。 だが、それはただの空気ではなかった。激痛だった。 肺が乾いた紙でできているかのように感じられ、空気は炎のようだった 。 僕は激しく咳き込み、胸を波打たせた。ドロリとした冷たい水が口から溢れ出した。墓場の味がするそれを、僕はえづきながら吐き出した 。
「ハァ……アァ……」
僕は腕を振り回した。体が浮いている。僕を締め付けていた氷は消え、シャーベット状の氷泥と暗い水に変わっていた 。 その時、隣で水面が爆発した。
バシャーン!
何かが隣で暴れている。僕は目から水を拭い、霞む視界で瞬きをした。 メグだ 。 彼は水面を割り、悲鳴といななきの間のような恐ろしい声を上げた。頭を激しく振り、黒いたてがみから水を撒き散らしている。目は大きく見開かれ、パニックで白目が剥き出しになっていた。 生きている 。
「メグ!」 叫ぼうとしたが、声はひび割れた囁きにしかならなかった。 「メグ、ここだ!」
僕たちは半ば凍りついた湖の真ん中にいた。氷は溶け、尖った塊が白い島のように周囲に漂っている 。 岸へ行かなければ。
「泳げ!」自分に言い聞かせた。「足を動かせ!」
僕は腕を伸ばし、氷の塊を掴んで体を引き寄せようとした。寒さの質が変わっていた。落ちた時の寒さは鋭く、噛みつくようなものだった。 だが今の寒さは……死んでいる。深く、古い冷たさだ 。
僕は泳ぐために足を蹴ろうとした。 何も起きなかった 。 僕は眉をひそめ、混乱した。脳は命令を送っている。蹴れ。泳げ。押せ。 だが、足は答えなかった。ただそこに浮かんでいるだけだ。重く、役立たずで、まるで錨のように僕の後ろに引きずられている 。
ただ寒さのせいだ、と僕は思った。胸の内でパニックが鎌首をもたげる。感覚がないだけだ。すぐに戻るさ。
僕は腕を使った。水をかき、岩だらけの岸辺へ向かって体を引き寄せた。それは苦闘だった。一インチ進むことが戦いだった。腕は悲鳴を上げていたが、僕は凍える泥水の中、自分の「死んだ重み(デッド・ウェイト)」を引きずった 。
メグはすでに岸にいた。滑りやすい岩を駆け上がり、蹄をカチカチと鳴らしていた。彼は体を震わせ、氷水をあたりに撒き散らした 。 彼は逃げなかった。振り返り、岸辺に立って、もがく僕を見ていた。そして低く鼻を鳴らし、僕を励ました 。
ついに、僕の手が固い地面に触れた。指を土に食い込ませ、引く。 濡れて震える体を引きずり上げ、石の上に倒れ込んだ 。 長い間、ただ横たわって呼吸をしていた。
吸って。吐いて。吸って。吐いて。
空気の匂いが違った 。 シカルプールの空気はいつも新鮮で、松葉や新雪の匂いがした。だが、この空気は……間違っている。 淀んだ匂いだ。湿った腐敗と、古い埃の匂い。ずっと昔に何かが死んだような匂いがした 。
僕はゆっくりと肘をついて体を起こした。周りを見渡した。 見覚えのある地形だが、完全に異質だった。山の形は同じだが、雪はずっと灰色がかっている。空は青くない。あざのような紫と灰色で、分厚く渦巻く雲に覆われていた 。
「どれくらい……?」 誰もいない空に向かって囁いた。 「僕たちはどれくらいあそこにいたんだ?」
落ちたのはほんの数分前のように感じられた。だが、空気の味は何年も経っていることを告げていた。十年? もしかしたら二十年? メグを見た。彼も震えていた。黒い毛皮は氷で固まっている。彼は歩み寄り、濡れた鼻で僕の肩をつついた。僕を確認しているのだ 。
「大丈夫だ、相棒」 僕はしわがれた声で言い、手を伸ばして彼の顔を撫でた。 「やったな。生き延びたぞ」
僕は立ち上がろうとした。 「よし。家に帰ろう」 地面に手を置き、押した。腹筋に力を入れる。 足が僕を押し上げ、立ち上がらせてくれるのを待った 。
上半身は持ち上がった。 下半身は、地面にへばりついたままだった 。
僕は凍りついた。 もう一度試した。立て、アクシュ。 足は動かなかった。ピクリともしない。まるで自分のものではないかのようだ。腰から下が石でできているかのように 。
湖の水よりも冷たい恐怖が心臓を鷲掴みにした。自分の足を見下ろした。見た目は普通だ。そこにある。 だが、その下の地面を感じることができない。冷たい風が当たっているはずなのに、何も感じない 。
「そんな……」 拳で太ももを叩いた。何も感じない。もっと強く叩いた。無だ。
「嘘だ、嘘だ、嘘だ!」 土をひっかき、這いずり、無理やり体を動かそうとした。だが、僕の足はただ後ろに引きずられるだけだった。命がなく、ぐにゃぐにゃとしていた 。
その事実は、氷よりも強く僕を打ちのめした。 僕たちは目覚めた。落下から生き延びた。 だが、僕はあの凍った水の中に、何かを置いてきてしまったのだ 。
僕は、歩く能力を置いてきてしまったのだ 。




