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『マイ・レッグス』凍てついた世界で、君だけが僕の足だった  作者: Aditya Kushwaha


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12/12

光の都

希望とは危険なものだ。  父はよく言っていた。「希望は小さな火のようなものだ。燃料をやれば暖かくしてくれる。だが近づきすぎれば、火傷することになる」と 。


 ここ数週間、僕たちは死の縁を歩き続けてきた。飢え、凍えていた。  狼に噛まれたメグの足はまだ腫れ上がっており、一歩ごとに足を引きずっていた 。僕も限界だった。革のストラップが擦れ、足の皮膚は生傷だらけになっていた。  それでも動き続けたのは、あの地図のせいだ。「昇る太陽」が描かれた小さな青い円のためだ 。



「近いぞ、メグ」  脱水症状で枯れた声で囁いた。 「山が終わる。ほら」


 険しい雪の尾根を登った。それが最後の壁だった。地図によれば、この向こう側に「安全地帯セーフ・ゾーン」があるはずだ 。  背後で太陽が沈みかけていた。長く伸びた金色の光が雪を照らし、世界が燃えているように見えた。


 メグは最後の急斜面を押し上がりながら呻き声を上げた。ヒューヒューと重苦しい呼吸音がする。残された力のすべてを振り絞っていた 。


「あと一歩だ」僕は促した。「あと一歩」


 メグが氷に蹄を食い込ませ、僕たちを頂上へと引き上げた。  僕たちは止まった。  そして、僕は呼吸するのを忘れた 。


 眼下には、高い崖に守られた巨大な谷が広がっていた。そこにはあの霧がない。  そして谷の中央、二マイルほど先に、「奇跡」が立っていた。


 壁だ 。  石と金属で作られた、高く分厚い壁。それが巨大な円を描き、難攻不落の威容を誇っていた。  壁の内側には屋根が見えた――何百もの屋根が。煙突からは細く灰色の煙が立ち上っている 。



 だが、最も美しいのは「光」だった。  夕暮れで谷は暗くなり始めていた。だが壁の内側では、小さなオレンジ色の星々が瞬き始めていた。松明。焚き火。  そして、あれはもしかして――電灯か?  それは都市だった。死の世界の真ん中で、生きて呼吸している都市だった 。


「メグ……」涙が一瞬で目に溢れた。「見つけたぞ」  メグもそれを見つめていた。耳が立っている。煙の匂いが分かるのだろう。料理の匂いさえしているのかもしれない。  彼は谷に響き渡るような、大きく歓喜に満ちたいななきを上げた 。


「やった! 着いたんだ!」  僕は笑った。何年も忘れていた声だった。彼の首を抱きしめ、たてがみに顔を埋めた。 「あそこには医者がいるはずだ、メグ。お前の足を治してくれる。もしかしたら……僕のために車輪のついた椅子をくれるかもしれない。もう走らなくていいんだ」


 遠くに見える門を見た。閉ざされているが、歓迎されているように見えた。 「行こう」涙を拭って言った。「家に帰ろう」


僕たちは下り始めた。道は険しかったが、なんとかなるレベルだ。メグは新しいエネルギーを得て動いていた。安全な場所が見えたことで、一時的に疲労が吹き飛んだのだ 。


 斜面を半分ほど下った時だった。風向きが変わった。  メグが急停止した 。  喜びが一瞬で彼の体から消えた。彼は硬直し、耳を後ろへ、前へ、そしてまた後ろへと激しく動かした。神経質そうに、健常な方の蹄を踏み鳴らす。


「どうした?」僕の笑みは消えた。「もうすぐそこじゃないか」


 メグは動かなかった。彼は谷底の影――僕たちと都市の壁の間にある暗がり――を凝視していた 。  僕は目を細めた。光が薄れている。谷底は大きな岩と黒い森に覆われているように見えた。


 その時、感じた。  ズシン……ズシン……ズシン……  音ではない。振動だ。メグの背骨を通して伝わってくる。地面が揺れている 。


「地震か?」  違う。地震は腐った肉の匂いなどしない。  風が強まり、吐き気を催すような悪臭を山へ運んできた。千の墓を暴いたような匂いだ 。


「まさか……」  谷底の影をよく見た。  影が動いていた。  森ではなかった。それは「海」だった 。


 数千。  森の境界線や岩陰から現れたのは、フロスト・ウォーカーたちだった。ゾンビだ。  シカルプールにいた時のように目的もなく彷徨っているのではない。集まっていた。  灰色の体と青い皮膚の、巨大でうごめく絨毯カーペットのようだった。彼らは全員、同じ方向を向いていた 。  都市の壁を向いていたのだ。


包囲シージだ」  血が凍りつくのを感じた。 「奴ら、都市を包囲してるんだ」


 数が多すぎて数え切れない。五千? 一万? 門への道を完全に塞いでいる。  文字通り、僕たちと安全地帯の間には、怪物の海が広がっていた 。


 メグはおびえて一歩後ずさりした。彼は勇敢だが、馬鹿ではない。ライオンだって蟻の大群には飛び込まない 。


「通れない」  胸の中の希望が、消されたロウソクのように死んでいく。 「門には行けない。引き裂かれるだけだ」


 都市の暖かい光を見た。あんなに近いのに。中の人々の声さえ聞こえそうなのに。  だがあそこは、月にあるのと同じくらい遠い場所だった 。


「どうすればいい?」絶望で声を震わせ、メグに問いかけた。


 僕たちは斜面で立ち往生していた。背後には凍てつく荒野と飢えによる死。前方には大群ホードと暴力による死 。  メグは都市を見、それから大群を見た。鼻を鳴らした。それは反抗の音だった。


 その時、下の大群から音がした。


 キエェェェッ!


 一匹が僕たちを見つけたのだ 。  頭が動いた。何百もの白く空っぽな目が、斜面を見上げた。怪物の群衆に波紋が広がった。  新鮮な肉を見つけたのだ 。  彼らは斜面を登り始めた。



「見つかった!」僕は手綱を引いて叫んだ。「メグ、下がれ! 戻るんだ!」


 だが、行く場所などなかった。背後の道は急すぎて、素早く駆け上がることはできない。前方は塞がれている。  閉じ込められた 。

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