錆びついた刃
メグが足を引きずっていた。 一歩ごとに体が強張るのが、鞍を通して伝わってくる。凍った地面に蹄が触れるたび、彼の左肩がわずかに下がるのを感じた 。
ズシン。ガクッ。ズシン。ガクッ。
それは痛みのリズムであり、その原因は僕だった 。
「止まろう」 風にかき消されそうな声で言った。 「メグ、頼むよ。降ろしてくれ。這って行くから」
メグは無視した。刺すような強風に頭を下げ、歩き続けた。彼は止まれないことを知っていた。 僕たちは灰色の岩の尾根にいて、隠れる場所などどこにもない。ここで止まれば、日が沈む前に寒さが僕たちの命を奪うだろう 。
だが、罪悪感は雪よりも重かった。足を脇腹に縛り付けている革のストラップを見た。 きつく、安全だ。僕を守ってくれている。だが同時に、それは彼を罠にかけているのだ 。 彼は死んだ半身を――歩けず、狩りもできず、走ることもできない男を運んでいる。 僕はただの寄生虫だ、と苦々しく思った。彼の温もりを奪い、力を奪い、ただ重みだけを与えている 。
太陽が地平線の下に沈み始め、空を紫と血のような赤の打撲色に染めた。影が長く伸び、僕たちを掴もうとする指のように見えた 。 その時、影が動いた。
低い唸り声が始まった。ゾンビの乾いた音ではない。獣の、濡れた喉の奥から響く唸り声だ 。 メグが止まった。耳が頭蓋骨に張り付くほど後ろに倒れた。彼はその場で旋回し、蹄を石に打ち鳴らした 。
「なんだ?」手綱を握りしめて囁いた。
岩陰から、一対の黄色い目が現れた。 次にもう一対。さらに三対。 狼だ。だが、古い物語に出てくる狼ではない。黙示録の怪物だ 。 毛皮はまだらで、皮膚病に冒され、凍傷でただれた皮膚が露出している。肋骨が浮き出ている。だが、その牙は……長く、黄色く、飢えで涎を垂らしていた 。 群れ(パック)だ。
「落ち着け」と囁いたが、手は震えていた。 一匹の狼が飛びかかってきた。
メグは準備ができていた。足を引きずっていたにもかかわらず、彼は立ち上がり、前足で強烈な一撃を見舞った 。
バキッ!
空中で狼を捉え、頭蓋骨を粉砕して後ろへ吹き飛ばした。 だが着地した瞬間、痛めた足が崩れた。彼はよろめいた 。 それが合図だった。群れの残りが一斉に襲いかかってきた。
「メグ!」僕は叫んだ。 混沌だった。唸る顎がメグのアキレス腱を狙う。爪が脇腹を切り裂く。メグは蹴り、噛みつき、彼らを遠ざけようと必死に回転した。黒い怒りの旋風だったが、数が多すぎた 。
一匹がメグの右足に食らいついた。メグが叫んだ――心を引き裂くような、高く怯えた悲鳴だった。 別の狼が隙を見つけた。そいつはメグの足を狙わなかった。ジャンプしたのだ。 メグの背中、僕のすぐ後ろに飛び乗ってきた 。
重い衝撃を感じた。首筋に、熱く臭い息がかかる。 獣が僕の喉を噛み切ろうと這い上がってくる爪が、メグの尻に食い込むのを感じた 。
逃げられない。避けられない。足は縛られている。 だが、手は自由だ 。
「降りろッ!」 僕は吼えた。 思考しなかった。反応した。 革のストラップが悲鳴を上げるほど体をねじり、ベルトから錆びたナイフを抜き放った――何日も持ち歩いていた、あの役立たずの金属片だ 。
狼が僕の顔に噛みつこうとした。鼻先数インチまで牙が迫る。 僕はナイフを突き出した 。 僕のフラストレーション、恐怖、そして兄弟への愛のすべてを、その一撃に込めた。
ズブッ。
刃は鋭くなかったが、勢いは十分だった。ナイフは狼の首深くに埋まった 。 熱い血が僕の手と顔に噴き出した。狼はキャンと鳴き、体が硬直した。僕は手を離さなかった。刃をねじり、野性的な鬨の声を上げた 。
「死ね! 彼に触るな!」
死にゆく獣を後ろへ突き飛ばした。それはメグの尻から滑り落ち、濡れた音を立てて地面に落ちた 。 だが戦いは終わっていない。 メグはまだ囲まれていた。巨大なアルファ・ウルフが喉元に食らいつこうとしている。メグは疲弊し、よろめいていた 。
「僕は乗客じゃない!」 アドレナリンが血管を駆け巡る中、僕は叫んだ。 「僕は彼の相棒だ!」
僕は鞍の左側へ、危険なほど大きく身を乗り出した。 右足のストラップが肉に食い込み、僕を宙吊りにした状態で支えてくれる 。 アルファがメグの首に飛びかかった瞬間、僕は腕を振り下ろした。
ナイフで狼の鼻を横に切り裂いた。致命傷ではないが、深く切れた。 狼は驚きと痛みで悲鳴を上げ、後ずさりした 。 それが、メグに必要な隙を与えた。
メグは突進し、狼の首筋を歯で噛みついた。そして布人形のように激しく振り回し、岩に叩きつけた 。
残った狼たちは躊躇した。死んだ仲間を見た。 そして、この狂った馬と、背中に乗った血まみれの人間を見た。 割に合わないと判断したのだろう。低い鳴き声を上げ、影の中へと逃げ去っていった 。
尾根に静寂が戻った。 僕は肩で息をしていた。手はナイフの柄を握りしめたまま痙攣している。顔は狼の血でベトベトだった 。
「メグ……」僕はあえいだ。「大丈夫か……?」
メグは立って震えていた。噛まれた足から血が流れていたが、立っていた。 彼は頭を回して僕を見た。僕の血まみれの手の匂いを嗅いだ。怯えなかった。 彼は優しくいななき、鼻を鳴らした 。
地面に転がる死んだ狼を見た――僕が殺した狼だ。 氷から目覚めて以来初めて、僕は自分が役立たずだとは感じなかった。錆びたナイフを見た。醜く、古いナイフ。だが、それが僕たちを救った。 僕と同じだ 。
「守ったぞ」 僕は身をかがめ、血まみれの額を彼の首に押し付けて囁いた。 「やっと……守れたんだ」
メグが一歩踏み出した。足を引きずってはいたが、頭は高く上げていた。僕たちはボロボロで、血を流し、疲れ果てていた。 だが、生きている 。
そして初めて、僕は本当に「二人で戦っている」と感じていた。




