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三章 魅惑の魔法

 アクサル王と何度も閨を共にして、生気を奪われ始めてから、沢山食べ物は食べてはいるけど、心の無しか身体が細くなり、鏡を見たら1、2歳ほど若返っている気がした。だからと言って、体力がついたかと言うと、そうでもない。

「フー。空が青いなぁ〜…。」

 アクサル王にお願いして、庭先には出れるようにしてもらえて、外の椅子に座り、1人になる時間を許してもらった。護衛付きだが。

 俺の護衛に付いているのは、ガッセと言うオヤジで、また渋い顔をしたイケオジである。なんでも、二刀流の使い手とかで、王様のお気に入りの護衛剣士だそうだ。こちらが話をかけない限り、何故か黙っていて、ただジッとしている。気をきかせてか、庭先にいる時には、距離をとってくれている。

「まあ。あの方が、例の精者のお方よ。」

「アクサル様が、夢中になるのも分かるわ。肌が白くて、若々しいわね!」

 宮女たちが、廊下を歩いている時に、黄色い声をあげている。

「お前たち。無駄話をしてないで、さっさと仕事に戻れ。あの方は、とても高貴なお方。お目に入れてはいけないのだぞ!」

 あの儀式で赤い服を着ていた魔法使いが、一喝する。

「も、申し訳ありません!」

 宮女たちは、そそくさと廊下を早足で去って行く。

 すると、赤い服のオヤジが、こっちに歩いてきた。そして、俺の前に来ると、膝をおった。

「お久しぶりにお目にかかります、精者様。(わたくし)は、赤魔道士のハンスと申します。以後、お見知り置きください。」

「お、おお…。」

 俺は、どうして良いのか分からず、ハンスの顔や体つきなどを見てしまう。このハンスも、なかなかのイケオジで、金髪の長い髪をしている。顔つきは、ほっそりとしているが、何処か不思議な感覚のオーラを放っている感じがする、少し信用して良いのか分からない感じの人間だ。

「あの儀式から、なかなかお会いすることが出来ず、とても心配しておりました。なんと言っても、アクサル王様は、恐ろしい方。どの様な扱いをなさっているのかと、気が気ではありませんでした。」

「…え?そ、そうなのか。」

 俺は、今までの事を振り返り…。

『そう言えば、一度だけ、重力魔法をかけられたことがあったなぁ。』

 と、思い出す。

「はい。それはそれは、恐ろしい方です!あまり、気を許してはいけません。自分の目的が達成したら、貴方の御身に何をしでかすのか、分かりません。」

「そ、そうなんだ。気をつけるよ、ハンス。教えてくれてありがとう。」

 赤魔道士は、名前を言うと、パッと顔を輝かせ、喜びのオーラを発する。

「とんでもございません!どうか、御身を大切に…。」

 ハンスは、きびすをかえすと、サッサと立ち去って行った。その姿を、陰ながら見守っているガッセが、目で追う。



 その頃、アクサル王は隣国に戦を仕掛けていた。内部事情を知らない俺は、そんなことを仕出かしていることなど、意に返さなかった。

 玉座に座っていたアクサル王の前に、1人の兵士が伝令を伝える。

「申し上げます。カイザル様が、国境を越え、国境周辺を鎮圧いたしました!」

「ご苦労。城から兵糧を届け、引き続き戦圧しろと伝えるのだ。」

「ははっ!」

 伝令を聞いて、アクサル王は不敵な笑みを浮かべる。

「さてと。わしは、わしのなす事をするとしよう。」


 今夜も、俺はアクサル王と閨を共にしていた。アクサル王の上に股がり、腰を振られて感じてしまい、思わず気持ち良くて声が漏れる。

「ぁあっ…!はあっ!」

 アクサル王は、首すじを舐めていき、俺の口に舌を入れてくる。

「んあぁっ…!」

 粘膜が絡み合って、いやらしい音をたてる。口を離すと、糸を引く。

『俺、本当にイケオジに飼いならされているな。』

 アクサル王が、舌なめずりをして、生気に溢れているのがわかる。若くなって、どんどんカッコイイ。

 そんなことを考えてしまい、俺は頂点に達する。

「ああんっ!!」

 すると、アクサル王は、自分の身体についた汁を手に取って舐める。その姿が、なんともいやらしい。

 俺は、ドキンとしてしまう。

「フフッ、だいぶわしの身体にシンクロしてきたな。」

「し、シンクロ…?」

 すると、突然力が抜けて、アクサル王の肩にもたれかかってしまう。

「あ、あれ?力が…。」

 今日は、一度イッただけで、おかしいと思ったが、アクサル王は、俺の身体を抱きとめる。

「慣れるまで、お前に魅惑の魔法をかけておいたのだ。どうだ、気持ちが良かろう?」

 アクサル王は、再び勃起して、俺の身体を寝かせると、その膨張したモノを容赦なく突き立ててくる。

「あぁあっ…!」

 俺は、気持ち良さに全身が熱くなり、再び勃起する。

「ぃやぁっ!お…かしく、なっちゃっ…!!」

「どうだ。なかなか良かろう?」

 アクサル王は、笑みを浮かべて攻めたたえた。お互い、身体の相性が良くなり、全身で感じるようになっていた。

『こんな魔法なんかかけられていたなんて…!どうりで、アクサル王が魅力的に見えたわけだ。』

「ふあぁあっ!」

 俺は、アクサル王に手を繋がれて、思わず握り返していた。心の中では、魔法のせいだと、言い訳をした。

「はぁっ!アクサル…さまぁあ!!」

 俺は、再び達した。アクサル王も、同時に達する。

「ミハルッ…!!」

 アクサル王は、汗だくになり、肉体美にそれは眩しかった。

『ああ。確かに、あのハンスが言っていた通り、ある意味恐ろしいのかもな。』

 俺の心までも支配してしまったこの人に、どうやって逆らえるだろうかと、少し怖くなった。そんな気持ちとは裏腹に、まだまだアクサル王を求めてしまっている自分がいた。

            ※

 アクサル王は、また一段と若くなり、20代後半位の若さになっていた。あの、シワシワじいさんの面影など、全くなくなっていて、どんどん惹かれていっていた。

 俺は、また中庭でボーっと煙草をふかして、空を見上げる。

「…アクサル様。」

 こんな時にまで、あのイケオジの姿が頭から離れなくなっていた。

「ほほっ。なかなか、王にシンクロしてきたようですなぁ。」

 俺の前に現れたのは、俺の指を切った例の錬金術師のオヤジだった。

「あ、あんたは…!」

「先日は、色々と申し訳ありませんでした。申し遅れましたが、私はミュンヘンと言います。アクサル王に、魅惑の魔法を教えたのも私でございます。どうです、なかなかよろしいでしょう?」

 俺は、ふくよかな体つきをした、いかにも胡散臭いオヤジを睨みつける。

「あんたのせいか!いい加減、この魔法を解け!気がおかしくなりそうだ!」

「ほほほっ、それは、少々難しいですなぁ。昨晩で、完全にアクサル王とシンクロしていますし、その魔法を解くには、少々骨が折れます。」

「なんだと!?」

 俺は、こんな恋心を(もてあそ)ばれた気持ちに、怒りが込み上げてくる。

「くっそ…!なんで、俺がイケオジにドキドキしなくちゃいけないんだよぉ〜!!」

「ほほっ、そんなに嫌がらなくても、王を好きになったのですから、良いではないですか。」

「人の心を、なんだと思ってる!!」

 錬金術師のミュンヘンは、奇妙な笑い声をあげた。

「まあ、そのうち解除方法をお教えしますよ。それでは…。」

 そう言うと、(きびす)を返して去って行った。

『胡散臭い、錬金術師ミュンヘン。なんか、企んでいそうだな。』

 また、陰で見張っていたガッセが、ミュンヘンを目で追う。


 その晩。アクサル王が部屋に来ると、俺は抱きついていた。

「アクサル様!」

 それを見て、アクサル王は笑い声をあげる。

「これこれ、そうせっつくでない。」

 アクサル王は、軽々と俺を抱き上げてベッドに向かった。俺は、ドキドキして、アクサル王の首に手をまわした。

「ねぇ、早く…!」

「そう、焦らずとも、存分に抱いてやる。」

 そう言うと、キスを交わして、ベッドに横たわった。

 まさか、自分から求める事をするとは、思ってもいなかった。


 それから、3日間。俺は、無我夢中でアクサル王を求めた。

 その度に、アクサル王は若く美しくなっていった。

 そんなアクサル王に、俺は虜になっていった。






 いつものように、俺はアクサル王が来ることを待ち遠しく思い、ベッドの上で待機していた。

『ああ。早く、…早く来ないかなぁ?』

 すると、ドアがカチャッと開く。

「アク…!」

 言いかけて、入って来たのはお付きの側近の男だった。

「しばらくの間、アクサル様は閨をいたしません。」

「…へっ?」

 あまりにも唐突な事に、俺は頭が白くなる。

「な、なんで…?!」

「ご自分の姿を、鏡で見ることですね。」

 俺は、はあ?と馬鹿げた言葉に、ベッドから見える縦鏡に、自分の姿を見る。

「…えっ?」

 俺は、鏡に映った自分の姿を見て、唖然とする。

 なんと、体中が皮と骨ばっていて、顔もやつれていた。生気の全てが、抜け落ちた感じになっていて、若さの欠片も無くなっていた。

『…こ、これが、俺…!?』

 俺は、体中を触り、悲鳴をあげた。

「ああ…!あぁあー!!」

 醜い姿になった自分の姿を見て、泣き崩れた。

 アクサル王とのシンクロ。それは、食事も煙草も手につかないほどに、彼を求めてやまなくなった魔法の効果による代償だった。

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