二章 実験体とイケオジ
異世界に召喚されてから、2週間ぐらい経った。
俺は、大量の食べ物を貰い、体力が戻ってきたかと思う時に、この国の王であるじいさんに犯されていた。と言っても、80歳くらいだったじいさんは、今は筋肉ムキムキの50歳に若返っていた。
その間、俺は実験体の様な事をされていた。
多くの人が、俺を囲い込み、その身に宿しているモノを口にしていた。
「伝書の通り、精者の精液は若返りの効果があった。では、粘液はどうなのだろうか?」
医者まがいの、錬金術師の3人が、様子を記録する。
「わしが、試してみよう。」
そう言うと、また両サイドを押さえられている俺の顎を手で掴むと、キスしてこようとする。
「ぃやだっ!」
俺が、横を向くと、力が漲っている若じいさんは、無理に自分の方を向かせて口を開ける。そこに、舌が入ってきてもて遊ぶ。
「ぅんんっ!」
すると、若じいさんは、若返った時のように光りを放ち、体が輝く。
「おおっ。なんと、魔力が回復したぞ!」
「魔力ですと!?」
「では、血液はどうなのでしょう?」
血液、と聞いて、ドキッとする。
俺は、全員が自分に釘付けになっていることに気づいて、恐怖する。
『ま、まさか。命を取られるんじゃ…!?』
すると、1人の錬金術師が、小刀を取り出す。
「ヒィッ!」
俺は、マジかよ!と目を閉じると、左の人差し指を少し切られた。
「っ…!」
滴り落ちる血を、皿に乗せられ、それを若じいさんが一口指で舐めてみるが、反応がない。
「ふむ。なんともないが…、何か体が温まる。」
若じいさんは、外に控えにいた傷だらけの剣士を呼んだ。
「グスタフ、入って来い。」
「はっ!」
グスタフと呼ばれる男は、体中傷のオヤジだった。
グスタフは、若じいさんと同じくらいの歳の、シブい顔をしたオヤジだった。
「これを舐めてみろ。」
「ははっ。」
若じいさんの言いなりに、グスタフが一口指で俺の血を舐めると、みるみる傷跡が消えていった。
「おおっ!」
錬金術師たちが、歓喜の声を上げる。
「なんと、傷を癒すか!」
若じいさんが、感心したように顎の髭を触る。
「ならば、◯◯や◯◯などは!?」
節操のない錬金術師たちの言葉に、俺は、堪忍袋がキレる。
「わー!わー!もう、いい加減にしやがれ、変態共!!」
俺は、両サイドにいる男たちの腕を噛んで、手を離した隙に、布団に入り丸まる。
初めて、大声を出した俺の様子に驚いた周りの人間たちが、一斉に沈黙する。
『ちきしょー!ちきしょー!!俺は、モルモットじゃねぇ!!』
世界が変わろうとも、俺にとっては、ここもある意味クソみたいな場所だということを思い知った。
自然と、涙が出てくる。
「皆、今宵はここまでだ。下がれ。」
若じいさんの言葉に、皆部屋を出て行った。
残ったのは、若じいさんだけだった。若じいさんは、俺の横に座る。
「…すまなかった。皆、お主の事に興味津々なんじゃよ。その…、まだ名を聞いていなかったな。なんと言う?」
2週間目に、ようやく名前を聞くのか?と、俺は、また頭にきて、黙っていた。
「のう。教えてくれぬか?」
若じいさんは、俺の頭を触ろうとする。
「誰が教えるもんか!この変態ジジイ!!」
俺が、そう言い放つと、途端に場の空気が変わり、若じいさんの魔法で、俺は布団をめくられ、大の字にベッドに押し当てられる。
「若造。口の利き方に気をつけよ。さもないと、その首、落ちると思え!」
俺は、重圧で押し付けられ、冷や汗が出る。
「っか…!」
若じいさんの重力魔法で、俺は息が出来なくなる。
「おっと、すまんかったな。」
俺の様子を見て、若じいさんは魔法を解く。
若じいさんは、俺の上に上がってくる。
「名は、なんと言うのだ?」
俺は、得体のしれない若じいさんに、少し恐怖を覚え、少し震えながら応える。
「み、ミハル…。」
俺の名を聞いて、若じいさんは、作り笑いをしてくる。
「そうか。ミハルと言うのか。のう、ミハル、これからも、わしの力になってくれなぁ。」
言いながら、目に溜まっていた涙を舐めてくる。すると、若じいさんは、又がズクンッとなるのを感じ、勃起した。
それを見て、嬉しそうな顔をして笑う。
「ハハッ、まったく。お前には、つくづく驚かされるな、ミハル!」
若じいさんは、笑みを浮かべながら、俺に口づけしてきた。
俺は、もう抵抗する気力がなく、されるがままになる。
「ん…!」
若じいさんは、胸を弄り、丁寧に愛撫していく。
「ぁあっ…!」
「ういやつじゃ、ミハル。」
俺は、初めて掘られてしまうのだった。
『何と言う恥…。』
しかし、何故か受け入れてしまった自分がいて、穴があったら入りたい。
若じいさんは、40歳ぐらいになっていた。
※
俺は、いつものように生気を無くし、ダランとベッドに横たわっている。
「わしは、ますますお前が気に入ったぞミハル。妃達よりも、愛しく思えてきた。」
若じいさんは、汗だくになっている俺の額について乱れている髪の毛を触る。
薄目で若じいさんを見ると、以前よりも逞しくなった体格に、整った顔つきと顎髭を生やして、イケオジになっていた。
思わず、顔が赤くなってしまう自分がいて、顔を背ける。
『ど、どうしちまったんだ、俺?ちょっと、カッコイイとか思ってしまうなんて…!だいたい、この若じいさんに、俺は生気を吸われているんだぞ!?』
戸惑う俺の心を察してか、若じいさんが、俺の頭にキスしてからベッドを離れる。
玉座に座った王の、更に若返った姿を見て、臣下達はざわつく。
「もう、ほとんど全盛期の活気に満ちたアクサル王だ!」
「おおっ、アクサル王バンザイ!」
若じいさんこと、アクサル王は笑みを浮かべ、片手を上げる。すると、臣下たちは声を止める。
「皆の者、時は満ちた!カイザル!」
「はっ!」
アクサル王の第一王子であるカイザルが、前に出て膝を折る。
「軍を編成しろ!戦に備えるのじゃ!」
「ははっ!」
カイザルは、自分と同じ位の若さになった父君の姿をチラリと見て、少し複雑になる。
若じいさんこと、アクサル王が戦仕度をしていることなどまったく解さない俺は、いつものように目の前の大量の食事を少しずつ食していた。これも、全ての生気を吸われて、死なないためだと諦めている。
「ったく。どの世界に行っても、全てのことを赤の他人に見られるなんて、一体どんな人生を歩んでいるんだ、俺って?」
元の世界でと、隣の悪性ナルシストの婆さん達に、毎晩、盗聴器と盗撮器で、裸なんか当たり前のように見られていた。そして、アソコが大きいだの小さいだの。体つきがどうのと、妙な電波で頭の中に奴らの声が聞こえるようになっていた。
始めは、ただの勘違いだと思っていたが、隣の婆さんは、いつもお仲間たちと観察してくれていて、いちいち感想を述べてくれていた。
言っておくが、俺は頭が可笑しくなったわけではない!そして、観察することを許可した覚えもない!
そりゃあ、もう徹底的に、このおかしな日常がなんなのか、ネットやSNSなどで調べまくった。すると、俺と似たような事態になっている人たちが何人かいた。そして、奴らが、とんでもない国家機密波の機械を使って、嫌がらせの犯罪を犯していることにたどりついた。しかし、警察官に説明をしても、まったく相手にしてもらえず…。
「証拠があるんですか?いつ、何時?誰が?」
と、証拠がないと、被害届も出してもらえなかった。スマホのGPSのことも話したが、年配の胡散臭い警察官のオヤジが…。
「あのね。ストーカーって言うのは、その人に行為を抱いた人がすることだよ(笑)」
と、トンチンカンな受け答えをしてきた。
「じゃあ、情報漏えいは?GPSで、団体で追いかけてくるんですよ!?」
と、俺が食い下がると。
「それは、単なる嫌がらせね(笑)」
と、あしらわれ、事件にする気など全くない。
これなら、警察官などという組織など、居ないほうが良いと思った。"市民のお悩み相談いたします"などと言っておきながら、まったく市民を助ける気がない、ただの税金泥棒。
権力と金さえあれば、一般の市民の命など、チリに等しいのだろう。絶望した日はなかった。弁護士に相談しようにも、ネットで500円だけのチャット相談などやってみたら、それも詐欺で、その倍の5800円の請求金額の請求書が来た。急いで、役所の消費者センターに行ってなんとかなったが…。
「こういう詐欺、いっぱいありますから、気をつけてくださいね。」
と、注意を受ける。
まさに、クズみたいな世の中だった。煙草を、1日100本以上吸った事もあった。
金を貯めようにも、ブラック企業で、残業しても、手当がつかず、昼メシを頼んでおいても、事務員の姉ちゃんが…。
「ごめんなさい。頼み忘れちゃったぁ〜!」
と、明らかにヤラセをして、そのくせ、ちゃっかり昼メシ代金は、給料から引いてある。
挙句の果てに、ロッカーの中にパソコン文字の手紙が入っていて、"もうそろそろ辞めようか?加藤さんも、あんたに合わせてるだけで、本当は嫌ってるんだよ"と、明らかなるパワハラ。その紙を、部所の仲間である加藤さんに見せると…。
「なんだ、これ?なんで、こんな事書いてあるんだよ!今から、事務所のパワハラ専門の人に言いに行こうぜ!」
と、快く一緒に来てくれたのだが、2人でその紙を見せると…。
「ヤラセですね。」
と、まったく取り合わない。そこに、社長の奥さんが現れた為、事情を話して紙を見せるが…。
「あらぁ、大変ねぇ。明日、朝礼で言いましょう。」
と、それで終わり。この言葉を聞いた加藤さんは、
「俺、この会社辞めるわ。」
と、諦める。
そして、俺の周りで仕事を辞めていった人数は、数えきれず。便乗して、加藤さんと辞めようとしていた俺だったが、社長に脅しをかけられる。
「お前が、他の会社に言ったら、"使えない奴"だって言っておいてやるよ。」
完全なるパワハラ。だが、辞めていった何人かが、言いがかりでパワハラを受けたことを弁護士に相談して、何度も訴えようとしたが、まったく話しにならず、皆、裁判になるとこの厄介な"大きな後ろ盾"がある会社を相手取ると、時間と労力を使ってしまうと言うことで、諦めていった。
俺が、何を言いたいのかと言うのは、結局この異世界からもとの世界に帰りたいか、と言うと、ハッキリ言って、NO!だ。
とは言え、この異世界に来てからも、良いことなど何もない。こうして、ただ飯を食べている時にも、周りに人はいっぱいいて、見張られている。そして、トイレの時でもついてくるし、風呂なんかも3人に洗われて、1人になる時間がない。
「あぁ~…、煙草吸いてぇ〜!」
俺の身体が、ニコチンを欲している。
「はて、煙草とはなんだ?」
どうこうしている時に、若じいさん、アカサル王のお出ましだ。
俺は、いつもの脱がしやすい布服を着せられ、このイケオジになった若じいさんに抱かれるのだ。
若じいさんが、ベッドに上がってきて、俺の腰に手を当てて、キスしてくる。
「お前の欲しいもの、手に入れてやっても良いが?」
「マジッ…!」
言いかけて、口を両手で塞いで、口の利き方に気をつける。また、重力魔法なんか使われたら、たまったもんじゃない。
「ほ、本当ですか…?」
若じいさんは、笑顔で頷く。
「異世界の物か?わしに、イメージを送ってみろ。」
「は、はい。」
若じいさんは、自分の額を俺の額につけてきた。
俺は、煙草とライターをイメージして、目を閉じる。すると、若じいさんは、ふむ、と言うと、額を放して右手を見せる。右手から、紫のオーラのようなものが出てきて、俺のイメージしてきた物が姿を現す。
「た、…煙草!!」
俺は、思い切りそれを握りしめた。
「そんなに、嬉しいのか?」
「はい〜!ありがとうございます!ありがとうございます!!」
俺は、煙草に火をつけようとするが、アカサル王の方を見る。煙草の煙は、有害。吸って良いものなのかどうか、様子を伺う。
「あの〜、吸っても…?」
「好きにするが良い。だが、有害な物のようだからな。ひかえるのだぞ。」
その言葉に、俺は、えっ、と驚く。
俺の反応を見て、若じいさんは笑う。
「紫の色があるものは、毒が含まれているのだ。」
「…あー。そ、そう…ですね。ひかえます。」
言いながら、俺は久々に煙草の味に酔いしれた。
「フー…。あー、うまい…!」
横にいたアクサル王は、初めて穏やかな笑みを浮かべた。
「やっと、お前の笑顔が見れたな、ミハル。」
俺は、思わずドキリとしてしまう。
『くっそぉ〜!なんなんだ、この感情!?』
俺は、整った顔のイケオジを見て、トキメイてしまう。
「徐々に、お前の要望に応えていこう。まだ、一部の者しかお前の存在を知らんからな。まあ、噂はもう城下町まで広がっているようだからな。」
「そ、それって、俺が外に出ても良いって事ですか!?」
俺は、やっと解放されるのだと、目を輝かせた。
「いずれはな。だが、まだ早い。わしが完全な力を手に入れるまでは、城の中にいてもらう。まあ、お前の生気を吸ってしまっているわけだから、しばらくは歩く事も困難で、場内を案内することは難しいだろうがな。」
俺は、ガーンとショックをうけた。
「ま、まだ、生気を吸われるんですか!?」
「そうだな。せめて、お前ぐらい若くなってみたいものだなぁ。さすれば、魔力も体力も、もっと力を増す!」
若じいさんのアクサル王は、隠していた野望を見せるようになっていた。
俺は、勘弁してくれ、と煙草を吸って、ため息を吐いた。
「そろそろ、よかろう?」
そう言うと、アクサル王は煙草をとりあげ、手にとると、グッと握って消した。そして、俺に顔を近づけてくる。
この若じいさんは、すっかり俺を抱く事に、夢中になっていた。丁寧に身体を触ってくるから、思わず身体がビクッと反応してしまう。
『くっそぉ〜!本当に、イケオジじゃなかったら、思い切り股間を蹴り上げてやれるのにぃ〜!』
俺も、この若じいさんに生気を吸われていることに慣れていることが、嫌になっていなかった。
※
朝になり目を開けると、いつもとは違い、アクサル王は裸のまま俺を抱いて眠っていた。その姿は、もう逞しい35歳くらいになっていた。
俺は、動かない身体で、背中から抱きしめている肌の感覚を感じ、身体が熱くなる。
『…な、なんか、恥ずかしい…!』
「目が覚めたのか、ミハル。」
アクサル王は、背中からギュッと抱きしめきて、首にキスしてくる。すると、俺の尻の部分に硬いモノが当たるのを感じる。
『ぼ、勃起してやがる!』
俺は、これ以上生気を吸われたら、確実に死ぬと思い、冷や汗をかく。
「あ、あの、王様。これ以上は…!」
「う〜ん。分かっておる。」
言いながら、勃起したモノを俺の股の間に擦り寄せてくる。
「中には入れん。」
アクサル王は、サスマタして頂点に達した。
俺も、思わずまた液が出そうになるが、そうなる前に止めてくれた。
「ういやつじゃ、ミハル。今日も、沢山生気を養うのじゃぞ。」
「ひゃっ、は、はい…。」
逞しくなったアクサル王に、ときめく自分がいて、恥ずかしくなる。これでは、まるで恋人扱いだ。
アクサル王は、すっかり若さで力が増してきて、領土拡大の為に、軍を動かすのだった。
「カイザル。準備は出来たか?」
「はっ!」
「ならば、手始めに、隣国の国境に攻め入るのじゃ!」
「御意に!出陣するぞ!」
カイザルの合図に、兵士たちは、おおー!と声をあげて進軍を開始するのだった。