第ハ話 一つ目の解 前編
閃光と火花が散っている、トオルとオロイが激戦しているようだ
「こんままじゃ、もう体がもたねえ!おいトオルなんか秘策ねえのか!」
「あるにはあるさ、だけどこの開けた空間でしかももろいとこでやるとなると次はここが持たない」
「いい、俺の磁力破戒術でなんとかしてやる、ここら一帯は磁気が強いからな」
「なるほど、頼んだ」
なんと、オロイは磁術と破戒僧のスキルを組み合わせたものを使えるとは
いったいこの男の極限はどこまでつづいているのか
「魅 87式 微気力地火 天翔白羅」
トオルがそういうと、タバコに火をつけ一服している
「おいトオル、今はそんなことしてる場合じゃねえぞ!」
オロイがそういうとトオルはため込んだタバコの煙を美麗に吐き出す
するとあたりは煙で覆われ、煙がはがされるとトオルの隣に誰かいる
「お呼びでしょうか、主君」
たくましい筋肉に、豪壮に秘めていそうな内なる力を感じれる
煙の中から姿を現したのは、トオルの体内で生前暮らしていた精霊である
オロイは見惚れていた
(ん?あいつ女か?筋肉に注視していたが胸のふくらみもあるな、、)
「もしやと思い一か八かでお前を呼んでみたが成功したようだな」
「私はいつでもおそばにおりまする、死ぬときまでも」
「ふふ、ありがとう、ところで悪いのだがあそこに大男と一緒にいるやつがいるな?」
「はい」
「そいつを仕留めはせずに抑えこんでくれないか、ここを破壊するぐらいの力を使ってもいいから」
「御意」
トオルにそういわれると精霊は広範囲に渡って細い糸のようなものをがんじがらめ状に広げる
途端にそれは縮小して、オロイの隣にいるやつに向かって一点に進行する
「狼 113式 天針跋扈 絶髄羅針突」
精霊がそういい放つと、神速で何かが張り裂ける音がする
見てみると奴がむざむざと切り刻まれている
「グハッ」
だらしなく血を流している奴はオロイに向かって決定打を打とうとする
だがしかしトール化したトオルのトールハンマーが間を遮る
「戦羅双 古代神式 迎光玻璃 巴美壊相
押印の白の判」
トオルが呪詞を詠唱すると、いつもより威力の増したハンマーが空気をいなし
空気をつたり、見えない一撃が奴を裂く
「なんだよ、その技、、めちゃくちゃイカしてんな!」
遠くで見ていたオロイは思わず感嘆してしまっていた
更にトオルにはまだまだ秘儀が隠されていそうだと勝手に思い込むオロイ
「お前、そんな技持ち合わせてただなんて、さっさと言ってくれよ
一思いにここら一帯ささっと片付けれてしまったじゃないか」
「それが、そうでもない、この技には条件が課せられているんだ」
「なんだよ」
「それはさておき、封印を解いてしまったということは、ここもそろそろまずくなりそうだ」
トオルの技 「押印の白の判」
それはすべてを無垢なる虚無へと打ち返し、すべてにそれ相応の幸福と、自由を与える
トオルが自ら編み出した玄極知絶技巧である
しかし、発動条件にはいくつかの要素がある
天聖霊との契約、体内に秘める呪力の解放である
「ん?どういうことだ?まずいとはなんだ?」
「ついてこい、さっさと出るぞ、オロイ」
さっきからオロイの言葉を無視しているトオル、しかしトオルは考えるにふけっていたためである
(さっきから無視だ?この野郎、後でお仕置きだな)
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なにもないが」
なぜか心の声が漏れそうになってしまったオロイ、トオルはどうやら心には耳があるようだ
むやみやたらに内心ぐちぐちしていると不機嫌になるだろう
「ついたな、おい、テシル、クレア、今すぐにコースタティアを出るぞ
奴らが来る」
「奴ら?よくわかんないけど、とりあえず出ればいいんだね!」
(そろそろ次元を割って、時をまやかすあのクソ女が出る頃合いのはず
見つからないといいが)
どうやらトオルは時の幻神、クロノオパンドリウスを知っているようだった
見つかるとかなり厄介なことになるだろう
(ピキーン)
外から何か耳が切れるぐらいの金切り音がした
「くそ、しくったみたいだ、あいつらが次元を割って出てきたみたいだ」
「あいつらの事?私、なにか見たことあるような気がする、、」
なにやら見たことあると提言するテシル、この神をみたことあるということは、どこかで大災害に巻きこまれているはずである
「見たことあるのか?まあいい、あいつに見られるなよ、見られた瞬間、こちらに寄ってきて芸術的な殺しで永遠に殺され続けるからな」
「うん、、、」
「ダハァ、やっと着いたぜ」
オロイが遅れて到着する
「年甲斐もなく、階段ってのは上る時だけが一番つれえわ」
「今着いたのか、とりあえず、オロイもあそこにいるあいつだけは見るなよ」
「ん?どれだ?あの大路地に立ってるあいつか?にしてもあいつ、動かんとせんな」
途端にこちらを凝視する奴、その視線の先は、ただ一点、テシルのみを見つめていた
「おい、だれが見られてんだ? とりあえず見られたからには応戦するしかないぞ」
「し、しらないわよ!」
明らかに動揺しているテシル、自分が見られているといわんばかりに
「どうやらテシルのようだ」
奴は気味悪く微笑みながら光速でテシルに突っ込む
トオルもそれに対して持続の実を使いトールハンマーで打ち返そうとするが間に合わない
オロイも自慢の拳をお見舞いしようとしたが無駄だった
「キャッ!」
奴の鋭い足爪がテシルののどを切り裂くと同時に、脊椎の神経を抉り出す
「なんてむごい野郎、、許さねえ!」
「おい待て、行くな!」
芸術創作に切り替えた奴、この状態になるとほぼ無敵である、周りにあるサブ的なデコレーションも駆使していく、つまりオロイも
「ガㇵッ」
オロイもブレンドされてしまった
絶望的である
「仕方ない、このまま逃げるかあるいは?あるいは?、、」
「、、それ」
なぜか冷静なクレアがトオルのカバンを指さす
「ちょうだい」
「ん?これでいいのか?」
手に取ったのは変な目覚ましと、霊石である
クレアがそれを手に取ると目覚ましではなくなり、去来絶死弓(今を消す神の悲愛)
に変化していた
「クレア、、さすがだな」
「、、」
クレアが黙々と弓を引くと、矢が奴に一点集中して貫く
途端に元に戻っていくテシルとオロイ
「今、何が起きたんだ??」
「私、今死んだ気がする」
テシルとオロイはかろうじて息を吹き返したようだ
「奴は消えたのか?」
「いや、完全に消えてはいない、あれは幻影だからな、本体は次元の最果てで泳いでるんだろう」
「なるほどな、で、俺たちは死んでたのか?」
「いや元気ピンピンだったさ、途中で頭痛でもしたんだろ」
オロイがそういうと、トオルは場を紛らわせた
しかしクレアのあの謎の能力は一体なんだったんだろうか
それを余計にトオルは気にがかり、先のことなどどうでもいいほどに考え込まさせた
「おい、テシル?お前その目はどうしたんだ?」
「ああこれ?なんでもないよ気にしないで」
どうやらテシルの目がオッドアイになっているようだ
オッドアイとはこの世界で忌み子とされているが後天的に発症する事例など聞いたことがない
「ん?どうしたんだ、二人とも、騒がしいな」
考えを珍しくやめたトオルがこちらに来たようだ
興味深そうにテシルの目を見ている
「ふむ、これは、血神眼か、よくもまあ、きれいな瞳だ」
「そんな近くで見ないでよ」
「ん?悪いな、また珍しいものがみれて嬉しくてな」
なぜか照れているテシル、オロイの場合とは何か違う
「で、その血神眼とやらはなんなんだ?」
「説明すると長くなるが、、、」
トオルの長い説明が始まったようだ
さて血神眼とはなんなのだろうか?それはさておき、彼らの旅はまして厳しくなっていくだろう
第八話 終