第7話 越魚と僥倖
「へぇ、そんなことあったんだなお前ら」
食堂中に響き渡るがらがらとした大男の声が聞こえてくる
どうやらトオル達が会話をしているようだ
「にしてもトオルはずっとだんまり決め込んでるな、どうしたんだよ」
「ん?そう見えるか?あいにく我輩は人の話を聞く方が好きでね」
トオルはよそよそしさを後に心配させないよう茶化したようだ
「そうよ、あんたさっきから変なのよ!ね、クレアもそう思うでしょ!」
「、、?」
「そうえばクレアって言葉は通じるから、ある程度教え込めば話せるようになると思うんだよね」
「あぁそうだな、しかし誰がクレアに教えるんだ?」
「俺がいるじゃねぇか」
そっと隙をみて会話に入り込んだのはオロイだった
「げぇ、あんたは教えれる力量持ってんの?そうには見えないんだけど」
「少なくともお前らよりかは自信はある」
自信満々に話すオロイ、しかし脳筋タイプの奴特有の言語ではない何かを教えるつもりでは?
はていかに
「てかよ、ここの食堂広いくせしてがら空きだぜ、外を見ても誰も入って来ようとはしない」
「言われてみれば確かに?」
考え事をしていたトオルにとって何気ない日常など気にも留めていなかった
殺伐とした食堂にはどうやらトオル達だけのようである
「おい、店員もいないぜ、どうなってんだこりゃ」
瞬間、嫌な金切り音と共に辺りが暗くなってしまった
「ん?停電したのか?しかし外も暗いようだな」
暗いので夜視の実を飲み込むトオル、そこに広がるは無垢で無限のただの広々とした空間だった
「おい、誰もいないのか?テシル、オロイ、クレア!」
周りには誰もいなくなっていたようだ
トオルは久しぶりに寂しさを感じた
「はぁ、昨日から寝てないせいでまた変な夢に苛まれたか?にしても何度目か?」
どうやら何度も同じようなものを見ていたトオル、タイムリープする前も同じく見ていたらしい
「まぁ適当にうろついとけば、いつか覚めるな、しかし遠くに米粒ぐらいの小さな光が見えるな」
夢でもなぜか心が沸いてしまうぐらいの奇妙に勧誘されてる感じがしたようだ
トオルは暇潰し感覚に光に向かって歩みを進める
「もう300000歩ぐらい歩いたぞ、全然覚める気がしない。このまま光の正体を見るしかないか」
光に段々近づきつつあるトオル、いつしかその光は一本の柱に変わっていた
「はぁ、今時間的には2時間ぐらいってところか、さっさと目を覚まさないとな、」
光のもとに着いたトオル、そこにあったのは冷蔵庫?である
「これはふざけてんのか?中身を見るとするか」
中を開けるとそこにあったのは、何かの灰とアームバングルである
「ん?こんなもん冷蔵庫に入れとくもんじゃないぞ、我輩の夢はいつからこんなに禍々しくなったんだ?」
「ヌシクネホノチホクェ」
刹那、人のような声が聞こえ辺りが真っ白に染まっていく
どうやらを目を覚ませたようだ
「お、起きたみてぇだな、おいトオルこれ見てくれ」
「起きて早々騒がしいな、なんだ?」
オロイが心配もせず目覚めを勢いで崩した、トオルは少々不機嫌気味である
オロイはなにやら食堂にあったレジを勝手にいじっていたようだ
「何やってんだよ、いくら店員がいないからって、、それよりテシルとクレアはどこだ?」
「あぁ、あいつらなら一旦外に出てる、なんか外の空気を吸いたいとか言ってたな」
「ふむ」
「それより、これだ、レジをいじってみたら何か暗号を入れる画面にたどり着いた」
「ん?みたことあるような紋章と下に謎の記号、、1分くれ、考える」
「ん?もしかして解けるのか?!」
オロイはなぜか興奮して自分を忘れている、誰しもそうだろう、謎を解き明かしたい気持ちは
(うーむ、考えるにこれは我輩が未来に見るはずのアシャツ帝国の紋だな、だがしかし今はそんな帝国は実在しないはず)
「何か分かったか?」
焦らしてくるオロイ、トオルは集中を研ぎ澄ますように感覚を周りに溶け込ます
(我輩が裏切られ呪縛され能力を失った所、なにゆえ関係がある?それにこの記号、、)
「うむ、分かった。どいてくれ」
「あいよ」
オロイは嬉しそうにしながら待っている
トオルはレジに向かって迷いなく暗号を打つ
(この記号は我輩に対して裏切った最前線の重要人物、しかし名前ではなく花言葉だろう
無性に花が好きで好感度もあったものを、あいつは最後にダリアの花を渡してきたな)
「ん?dahriaってなんだ、暗号はそれにするのか?」
「あぁ気にしないでくれ、これは勘だ」
そう言ってレジに決定を打ち込むと、どこかで物が大きくずれたような音がした
「お、合ってたみたいだな、お前結構やるな~!」
「あっちで音がしたな、行ってみるぞ」
トオルは褒められたことを無視し、音の鳴った方へ進む
そこにあったのは、地下へと続く先の見えない階段である
「こりゃすげぇ、久々に胸が踊るぜ」
「おい、安易に足を踏み入れるなよ、もしかするとこれは、、」
「ん?なんだよ、おりゃあ先行っとくからな!」
「おい、待て!」
流石すぎる、やはり筋肉は先手を打ってしまう清々しいほどに
トオルが待てと行ったときにはもう階段を下りてしまっていた
「はぁ、あの野郎、仲良くなって初っ端これかよ」
トオルは警戒心もクソもないオロイに内心ぶちぎれていた
「俺も降りたいとしたいところだがクレアとテシルを呼んでからだな」
そう言うとトオルは外に出て二人を連れ戻す
テシルとクレアは仲良く肩車をしているようだ
「テシル、クレア、これを見ろ」
「なによこれ、こんなとこに階段なんてあったかしら?」
「、、!」
「どうしたの?クレア、何か怖じ気づいてるけど」
「イ、、イヤッ、、!」
クレアは何かに怯えている、一体この地下に潜むものは高潔なる天使をも凌駕するものだと言うのか?
「クレアがそんなに怖じ気づくとは、やはり気になるな」
「んー、私とクレアでここに居座って待っとくから行きなよ」
「うむ、ありがとう」
階段を下り進めていくトオル、なかなか長い階段のようだ
「先に行ったオロイに追い付かないとな」
ペースをあげていくトオル、どんどん階段を降りていくと魔気のないトオルでも感じるぐらいの恐ろしいオーラを感じた
「なんだこのどこからも何か強大な怪異に凝視されているような感覚は、これではなかなか下れまい」
トオルは怖じ気治しの実を飲み、ある程度を抑えた
再び下っていく
「やっと終わりみたいだな」
段々と水のせせらぎがする、多分終着点であろう
「ん?なんか拳を打っているような鈍い音もするような?、、」
終着点にたどり着くとオロイもいたようだ、しかし何かに対して殴っている?というより破壊しようとしている
「何やってんだ、オロイ?」
「あぁ、見てくれ、何かこの先に待ち構えるものを封印する扉みたいなのがあるんだが、なかなか壊れてくれなくてな」
「うむ、なるほど」
一旦辺りを散策してみるトオル、うろうろしていると腕のようなものと何かが焼かれた痕跡がある
(これは、、なんだ? 腕といえば先に夢で見たあのバングルか?、ここの燃えカスが残るところは、、ふむ、そうか)
トオルがそう言うと、創造術、夢果落下を使用した
この夢果落下は夢に出てきたものを具現化するという、これまた超能力である
(ここに、こうしてと、、)
トオルが内心呟くと、カコンッと音がすると同時にオロイの方から轟音がする
「お!なんじゃこりゃ!勝手に開いたぞ」
「どうやら開いたみたいだな」
「トオルがやったのか?やっぱすげぇなお前」
扉は円盤状に出来ていたようだ、中心部からひらけていく
「にしてもデカイ扉だな、この先には一体何があるんだ?」
扉が完全に開ききったと同時にますます禍々しいオーラが強くなる、だがオロイは気づいてないようだ
またもや先に行ってしまうオロイ
「おい、流石に待ってくれよ、、」
しんどそうに歩みを進めるトオル、そこに待ち受けていたのは?
「これは、、!我輩の未来を台無しにした奴!
しかしなぜこんなところに封印されている?」
「ん?知り合いか?知り合いなら助けてあげないとな」
「おい、待て!ホントにやめろ!」
オロイはトオルを無視しさっさと封印された奴に向かって拳を入れる、すると奴と地に繋がれていた鎖に亀裂が入り、奴は落ちる
「こんな美貌な男が封印されるとは、一体なんなんだ?」
「お前、、待てと言ったのに。」
トオルはなかなか恐怖の威圧も忘れてオロイに真剣に切れそうになっていた
「あぁすまんすまん、胸が高鳴ると周りが聞こえなくなってな、昔からの悪い癖だ!」
「お前のは度が過ぎるぞ」
二人がそう言い合っていると、地に落ちた奴が立ち上がり、こちらを睨み付けている
「まずったな」
「仕方ない、とりあえずはあいつを抑えこむぞ」
どうやら二人で抑え込むことにしたようだ
二人の運命いかに
第7話 終