第6話 次元の阻み
「フフ、二回も起死回生を起こすなんて、なんてなんてなんて素晴らしい。 彼は今後の逸材にふさわしい!」
謎の女が鏡面に向かってぶつぶつ叫んでいる
どうやら鏡を通してトオルの運命を見ているようだ
「帝、支度ができました、用意を」
「そうか、予定があったか」
謎の女の興奮は静まり返る
「そうえばニニギ、お前にも予定があったはずだが」
「もう終わらせました」
「なかなか繊細な技術に手間もかけず短時間で終わらすとはな、あっぱれじゃのう」
なにやら二人は一大事だったようだ
このニニギという女は帝というやつの右腕というところか、ますます不穏な感じを漂わす
「わらわは、一人で行く。お前はここでトオルというやらの行く末を見ておれ」
帝はどこかへ去ってしまったようだ
それにしても二人のいるこの空間は歪みが激しく常人では素粒子状に速攻砕かれてしまいそうだ
「トオルとやら? このハリネズミのことか? ハリネズミを観察するとは帝もなかなか癖のある」
この女はあまりトオルの事を知らないようである
当然である
トオルは過去も未来も不詳、どう生きて様々なスキルを身に付けてきたのか、誰もその史実を知らなかった
「ハリネズミといえば、あのお方がハリネズミと為した落とし子か? フッ、そんなわけあるまいか」
ぼぞぼそ何か言っている、重大のことのようだが、さていかに
「まぁいい、私はただボーッとひたすらにこの鏡と向かって時間を食い潰せばいい。」
ハリネズミのことは気にも留めず、瞑想を始めてしまったようだ
ステレオタイプに駆られているタイプの女はなかなか間抜けである
この手の女は手元にある真珠にも気づかずに素通りするタイプであろう
(ヘックション) (くしゃみ)
「ん?なんか視線を感じたな」
場面は切り替わり、トオルがなにやら視線を感じ取っているようだ
さっき出てきたあの女のことだろう
「飛空眼を掛けられたか?あるいは、、こんなことを言っている場合じゃないな、次にやることがあったんだ」
トオルは目前の鉄籠を凝視する、思考を昇華させ改善策を考えているようだ
「クレアをそのまま出すとまたあの謎の男が出現するはず、しかしどこから現れた?」
トオルは考える、あの男が元凶、しかしどこから来たのか分からないようだ
「とりあえず索敵スキルを常時発動させておくか、もしあいつが辺獄の神とやらならば我輩のスキルは必中のはず」
トオルは天使に対立する種族、辺獄の神族のことを多少は知っていた
単純に考えて、それしか結論は出ないようだ
にしても辺獄の神に必中とは、どういうことか?謎が更に増える
「さあ、さっき通りにやっていこう」
トオルは順調に先程の行程を繰り返す
(ガチャッ)
「、、、」
「いきなりわるいな、抱えるぞ」
トオルが籠を開けたと同時に既に始まっている
トオルは爆速で街を駆ける
「索敵にはまだかかっていないな、、まだ現れてないか、もしくは違う種族か、できれば前者であって欲しい」
トオルがそう言うと同時にどうやら索敵にかかったようだ
「フッ、かかったか、阿呆が
捉えられたんならもうこちらのものよ」
トオルがそういうと同時に、実を取り出した
再び 神の実トールを取り出した
「我輩は元来こいつとの相性がなぜかいい
名前の響きがおんなじだからか?」
そういうとトオルはまたや金髪の筋肉美に満ちた巨大なハンマーを持う人型の姿に移り変わった
「さぁ、どこから出ようとも迎え撃ってやる、地球を5000周する勢いでな!」
(ピュン)
ナイフが飛んできている、しかし、鋼の肉体のトオルには通らない
「チッ」
謎の男はイラついている、次なる手段を考えているようだ
「ふむ、そう来るか」
トオルはスキル遠視を使い男の行動をまさぐっていた
どうやら男は何かしでかそうとしている
「こいつは厄介だな、避けたとて追尾してくる、しかし当たれば致命傷は免れない」
(バンッ)
銀色にきれいに煌めいている、美しくも相手を一撃で致命傷にいたらすその名は銀色の弾丸アリストギュロスである
「放たれたか!とりあえずは逃げ回るしかない」
トオルは空を逃げ回りながら思考を走らせることにした、
思考を走らせてる最中にまた再び何かが空から降ってくる
「また銀色にかがやく何かだな?
流石に二個は無理だぞ」
そう言うと、空から降ってきたそれはトオルを追っていた弾丸にぶつかり弾け散る
「ん?なにが起こった?互いに衝突したのか?」
トオルは衝突した瞬間を見逃していたようだ
謎の男は焦りと怒りに満ちている
「ともあれチャンスが降ってきたようだな
最近は強運すぎるな」
トオルがそういうとハンマーを大きく振りかざし、遠くの謎の男に向かい神速で振り下ろす
すると大きく空気を割るように走る一本の見えない弾丸が謎の男をぶち抜く
「グハッ」
男は空から地に落ちていった
どうやら倒せたようだ
「案外あっさりと行けてしまったな、こんなもんでよかったのか?」
トオルはなぜか戦いを楽しんでいたようだ
意外な簡単さにかすかの期待も崩れ興が冷めてしまった模様
地に落ちた謎の男を抱えあげるトオル
瞬間、謎の男が呟く
「いいのか?一度死んだはずのお前が、事象を変えて未来を改変するなど」
そう言って男は消滅した
途端トオルの頭に強く電撃が走る
「グッ、なんだこれは、、痛いともいえない
歯がゆい何かだ」
トオルがそういうと誰かの記憶がトオルの脳内に流れ込んでくる
「これは、、テシル?か、と、謎の大男が写っているな」
どうやらあの大男とテシルが記憶に写り込んでいる
「これは、、真っ平らな、、そうか、そうなのか、これは俺が二度死ぬ前の世界なのか」
テシルと大男はいつの間にか消えていた
先の世界でクレアの攻撃に巻き込まれたのだろう
「しかしなぜ、もとに戻ったというのに、これを見せる必要性はどこにある?」
そういうと先の世界のトオルとクレアが写り込む
「何度見てもやはり凄い格好だな、クレア」
感傷に浸っているトオル、少し気が抜けてしまったようだ
その直後、謎の言葉が再生される
「クェハフネサトクロヌメ」
「ん?なんだ今のは」
トオルに聴き馴染みのない言葉が流れ込んできた
「この世の言語では無さそうだな、そして第三者に立って我輩達を写し出していた者の記憶も怪しすぎる」
トオルは今までのことを整理しながら考えていった
「考えても今はキリがなさそうだな、とりあえずはテシルと会うことが優先か」
そう言うとトオルはテシルに会うため街中の者達に聞き出す
の前に
「服変えないとな」
トオルはもとのハリネズミになりクレアを連れて再び服屋へ行く
場面は変わり、1日後、テシル達は・・・
「私、ほうえば、友達を迎えにいかなきゃだったんだ!」
何かを口に頬張りながら喋るテシル、多分ラザニアだろう
「そうかい、ちょいまってな、俺もついてくから」
「別にいいけど」
何か不満げなテシル、仲良くなったんじゃなかったのか?
まだ打ち解けれずある中でオロイはぐいぐい行く
「よし、できた、一応何かに出くわすと厄介だからなアダマンタイト製のハンドグローブだ」
「だれが付けんのよ、そんな重そうなもの、チャラいのが付けてるな重そうな鎖と同じじゃない」
「ダッハッハ、そう言わずに、似合ってるとでも言ってくれや」
「、、似合ってる」
「え?」
オロイは言われるとも期待してなかったので思わず照れる
「あんた、意外とちょろい?」
「、、」
オロイ、鋼の肉体に反して心は女々しかった
衝撃である、だがしかし肉体を鍛えすぎた故だろう
「さぁ行くわよ、もうそろそろトオルと落ち合う所に」
「はいよ」
二人は家を出て、トオルと落ち合う所へ向かった
「おっ!来たみたいだ、起きてくれクレア」
「、、、?」
「トオル、なんかめっちゃ久しぶりな気がするね!」
「ん?まぁ確かに?で隣のそちらの大男はどちら様ですかいな?」
「あぁこれ?オロイだよ、結構肉体系」
「肉体系でもあって、スピードもあるぞ!」
「そうか、肉体系とスピード、羨ましいな
よろしくな、オロイさん」
「さんなんて付けるなよ、友達の友達だからな、よろしくなトオル」
「で、そっちにいる天使の子?は誰なの?」
「あぁ、この子か、話せば長くなる」
「ふーん、私も話したいことあるし、とりあえず近くで食事でも取りながらにしよう」
「そうだな、そうえばお前ら変な記憶とか覚えてないか?例えば自分じゃないみたいな?」
「?」
二人ともよく分からないみたいだ、きっとあの記憶はトオルにしか見えていないようだ
「そうか、、ならいい」
トオル達は次なる歩みを踏み出しながら
トオル自身におかれた何か重大な事にトオルは楽観さをも忘れ、考えふけっていた
第六話 終