第五話 二度目の廻生
先にクレアを睨み続けた謎の人物はいまだに睨み続けていた
そのことをトオルとクレアは気づいていない
「、、」
クレアは何か悟ったようだ
トオルはクレアの違和感を感じ取る
「おい、どうした さっきから変だぞ」
流石のトオルもクレアの挙動不審な動きに心配した
「何かあるんだったらハンドサインをくれ、ピースをな」
クレアは不安そうにうつ向いたままピースをした
「何かあるんだな、ちょいと待ってくれ」
トオルは天眼の実を使い、上からなにかあるか見渡した
だがなにもなかったのでクレアの気のせいだろうと割り切る
「悪い、何も見つからねえ。さあ、さっさと行っちまおうぜ」
クレアは文句言いたげな顔をしてより一層不安を募らせたがトオルはもう先にいってしまっていた
「おいなんだよ、いこうぜ!」
トオルはクレアの執着さにあきれていた
その刹那、先に現れた謎の人物がクレアに襲い掛かる
(グサッ)
黒光った刃がクレアを貫通する
胸元からは血がだだれ落ち、目は激しく泳いでいる
「キ、、キ、、キエエエエ!」
クレアはおぞましく、それも聞いてはいけないような声で泣き叫ぶと同時に羽が増え、目が無数に生まれ、大人びた姿に変わっていた
それはまさしく堕天使のような姿だった
「おい、クレア、お前まさか、、」
トオルは何か言いたげに言葉を紡いだ瞬間、閃光とともに凄まじい轟音が鳴り響く
そして目を開けるとそこには、何もなく、ただ地平線が広がるだけの景色だらけであった
「おい、クレア!やめろ!やめるんだ」
トオルが激しく呼びかけても反応はない
なにかに意識が奪われているようだ
「ケヒヒ!さあ世界終末シナリオの始まりです!太陽神の加護があらんことを!」
謎の人物がそう言い放つと、どこかに消えてしまった
「終末? 太陽神?なんだかわけがわからないが、やはり宗教染みた奴は嫌いだ」
トオルは謎の人物に嫌悪感を抱きつつも、様々な対処法を脳内で高速的に処理して編み出していた
「やるならこの方法しかない、これが一番最適解だ」
トオルは神化の実を出し、飲み込んだ
すると髪が金髪の人の姿に近い神になっており、でかいハンマーを持っていた
この実を飲むとトールの祝福を10分間受ける
「いま使った神の実は神の実の中でも一番副作用が少ない」
トオルはハンマーを持ち、堕天使へと変貌を遂げたクレアに振りかざす
「ヤ、メ、ローーー!!」
クレアに一撃がヒットした
瞬間、クレアはトオルの背後に回り、蹴りと光線をお見舞いする
「なかなか強いなお前、だが戦いの経験がなくぬるい攻撃だ」
クレアからの攻撃は戦経験のあるトオルからしてみれば余裕であった
「オ、マ、エ、シ、ツ、コ、イ」
クレアの怒りが限界を迎えたようだ
「悪いな、お前を止めないと世界が破滅するってんだから」
トオルは自分の責任だと強く自覚していた
「ア、ァ、ァァァァァァァァア!!!」
クレアは突然雄叫びをあげたと同時に、さらに増して恐ろしい姿になっていた
全体はほぼ大目玉一つの、周りを羽と鎖で覆った、血塗られたような。
まさしくこの世のアポカリプシス的なものにふさわしかった
「お前なかなか派手になれるんだな」
トオルは感動と畏怖を覚えつつも、さらに神の実を飲み込んだ
「俺は神なんてもん信じてはいなかったが、やはりお前のその姿は抽象概念としての神に近いな
って、なんて腐れてださいことを言ってるんだ俺は、まあいい、今はただただこの瞬間に感謝しよう」
トオルの神の祝福はクロノスの祝福に切り替わっていた
クロノスは時間をつかさどりすべてをもとに戻す性能を持っている
しかしその代償は計り知れない、使用者本人が戻した時点で消えるか、その場で死んでいるかの二択である
「ウォォォォォォォォォォォォォォォオ!!!」
クレアが天地を割るような叫びをした瞬間にトオルは能力を使用した
「お前に世界を終わらせる責任なんてどこにもない、居場所は俺が作ってやる」
そういうと、どこからともなくあの目覚ましと霊石が現れ、またも激しく閃光を放つ
ふとあたりを見ると闇市の人身売買のとこまで戻っていた
「代償をうけていない?いったいなぜだ」
そういうと、あの目覚ましと霊石を取り出した
目覚ましの数字は1と2が刻まれている
「なんだこれは、、数字が増えている。もしやこれは死んだ分を12回だけ帳消しにするのか?」
トオルがそういうと人身売買が始まろうとしていた
天使の子がまた閉じ込められている
「これは次なるチャンスでもない、我輩のやるべきことなんだ」
トオルはそういうと、今までの楽観主義さとは程遠い透徹してクールになっていた
第五話 終