第十三話 狐の婿入り
雨が降り始めている
なにやら城の方から音がするがトオルたちは気づいていない
「おい、なんで来てるんだ」
「むう、すまんのじゃ、でもでも、わしでもかなり役に立つかもしれんぞ!」
「じゃあ、帰ってくれ、人が多いと困る」
「分かったのじゃ、ほれ、離れるから、落ち着けい」
トオルにそういわれ素直に離れたエチカ、離れたところにはクレアがいた
「、、」
「む?ぬし、羽、、そうか天使か、神族がいるとはな、珍しいもんじゃ」
「、、わかるの?」
「もちろんじゃ!」
「おいクレア、あまりそいつと会話するなよ、なにをされるか分かったもんじゃない」
「さっきから、、なんなのじゃ!わしはなにもせんぞ!」
トオルが間を遮ってクレアを守ろうとした
「辺獄の種族と、まして神なぞ争いになりかねない、なんでそんな嬉しそうなのかも意味が分からない」
「トオル、、偏見があるようじゃが、わしは辺
獄の種族、しかし神と争いなどはせん、それは先代の魔帝がやったこと、わしは争いは好まんのじゃ」
「、、えちか、えらいね」
「む?クレアはわかってくれるのか!やさしいのう!」
(怪しい、、)
トオルは疑問を抱きつつも、その場を離れ、テシルとオロイの様子を見に行く
「この石板、全部集まったけどなんなのかしら?全くはまらないわね」
「だな、、よくわからんからトオルにでも聞こう」
オロイがそういう間にトオルは既に石板を見ていた
「ふむ、ここに刻まれた文字は、、古代数学か、なるほど、解けと。」
すぐに理解してしまったトオル、頭もなかなかキレるようだ
「トオル、秒でわかるんだね、引くわ」
「がっはっは、やっぱり流石だなトオル、で問題はなんなんだ?」
「すべての石板に刻まれた数字の組み合わせで釣り合うものを城の天秤に置け、らしい」
「なるほどな、それは天秤がないと始まらないな、城に行くしかないな」
「ああ、そうだな」
あっけにとられたテシルとウキウキなオロイ
三人は城に行くためクレアとエチカを呼ぶ
「、、ところで、クレアの隣にいるやつは誰だ?」
「ああ、あれか、エチカっていうらしい」
「そうなのか、、おーい、クレアと、エチカ?さん、いくぞー!」
「おい、なんでエチカの時だけさん付けで我輩の時だけ呼び捨てなんだよ」
「あぁ、すまないな、なにかお偉方と思ってな、無意識にやってしまった」
(?、、正体がわかったのか?まぁいいか)
なにやら何かを悟ったオロイ、何を感じたのだろうか
クレアとエチカが呼びかけに集まってきた
「なにやら揉めとるようじゃな、さんなど付けなくてもよいぞ?大男よ」
「そうか?じゃあそうしよう、俺はオロイだ、で、こっちがテシル」
「よろしくね、エチカ」
「あぁよろしくなのじゃ」
「よし、城に行けそうだな、確か金河之駿?だったか」
「あってるよ、トオル、なんで知ってるのかしら」
「そうか、うろ覚えだったが、、」
どうやら城の名を知っていたトオル
獣人にしか分からないはずのものでは?
それに、なにか言いたげだったがオロイが口を挟む
「おい、トオル、エチカ、女だろ?スタイルいいな」
(ん?女と見抜いたのか?どうやって、、やはり底が知れん)
「、、オロイ、黙ってろ」
どうやら何かを悟っていたオロイに見えたが
やっぱりなにも感じてはいなかったようだ
一行は城に向かって歩み始めている
「すまんな、テシルよりはあるからな、反応してしまった」
「ん?私がなによ!」
「なにもないぞ」
(いわんこっちゃないな、、さぁ場を和ませるか)
「あー!あそこにラザニアが飛んでるー!」
「え!なになに、どこどこ?」
トオルが単純な魔法の言葉を放つとテシルは目をかがやかせて指差した方にに走ってしまった
仕方がないが、トオルも正直なにやっているんだろうか?
「トオル、、助かったぜ、しかしテシルの野郎、戻ってくるのか?」
「あぁ、あいつは嗅覚がいいからな、戻ってこれるさ」
「そうか、、にしてもクレアとエチカにだいぶ距離あいてるな、急ぐぞ」
トオルとオロイは二人に追い付くため城へ急ぐ
とたん、まがまがしいオーラが襲ってくる
(またあのときと同じ感覚だな、、もう怖気治しはないぞ)
「む?どうしたのじゃトオル、ほれ、しっかりせい」
「あぁ、すまない、行こう」
トオルは立ち眩みしながらも、なんとかたどり着いた
「、、すげぇな、ここ、広々としてる」
「時間がない、天秤を探そう」
「、、とおる、あれ、」
「ん?なんだ?あれは、、天秤か!やはり流石だなクレア!」
「む?クレアは目がいいのか」
どうやらクレア、天秤を早速見つけ出したようだ
しかし近づいて見ると、案外かなり小さい、トオルとクレアはどうやって見抜いたのか?
「なんでこんな小さすぎる天秤が分かるんじゃ、、」
「うーむ、ここに石板に刻まれていた数字と同じ分銅が置かれているな、、釣り合う数の組み合わせを探すしかないな」
「なるほどな、さっぱりわからんのじゃ」
どうやら三人、苦戦しているようだ
しかしそこに一辺の光が差す
「これはだな、トオル達、全部三乗された数だから釣り合うものはないぞ」
「オロイ、、なんで分かるんだよ」
オロイが間にはいって答えを言う
すると天秤が喋りだす
「せいかーい!これが分かった人はたった今、君しか今までいないよ!」
「うぉ、喋りだしたぞ」
「む?」
「、、」
「俺だけかと思ったが、全員か、、天秤はしゃべるんだな」
「そんなことはさておき、解いてくれた君たちにプレゼントをあげよう!最上階への鍵だ」
「ふむ、最上階? 最上階は、殿の広間では?」
「それはお楽しみだ、この城にはまだ誰も知らない秘密の場所があるんだ」
「なるほど、、とりあえず行くしかなさそうだな」
トオル達は変な現実を受け入れ、最上階へと目指すことにしたようだ
「君たち、三人じゃないね?後ろにまだ誰かいるよ」
「こんにゃろー!」
どうやらテシルが怒っている、トオルとオロイにげんこつを二発ずつお見舞いした
「効くな、テシルのパンチ」
「あぁ、そうみてぇだ」
「よくも訳の分からないことで釣ったわね、ごまかそうとしても無駄よ!」
「まぁまぁそこの猫さん落ち着いて」
「え、天秤がしゃべった?、、」
テシルの怒りは鎮まったが、へんな現実を受け入れられずその場に倒れ意識が飛んだ
「、、仕方ない、テシルをおんぶしてやれ、オロイ」
「おもてぇ、なんじゃこりゃ」
軽々しそうな見た目に反して重かったようだ、エチカとは真反対の模様
「多分筋肉質だろうからだな、仕方ない」
「ではでは、全員揃ったようなので最上階へ一気に飛ばしてあげましょう」
「ほう、これまた便利だな」
「では、いきますよー!」
「血舞螺旋風」
激しい何か物騒な鮮血が竜巻状になり、トオルたちを最上階へ持っていく
「のうトオル、騙されたことはあるのかの?」
「いきなり何をいってるんだ?」
「ふむ、まぁよい」
なにやらエチカがトオルを心配そうにしていたが、なにゆえ?
「おい、いつになったら着くんだよ?これ」
「せっかちだな、入る前に城のでかさを痛感したはずだろ?まだ着かないぞ」
「そうなのか、、」
トオルたちは沈黙のさなか最上階へと突き進んでいく
(そうえば時の帝なんて聞いたことないな?、、それにエチカはミチカをあまり見ていなかったようにも見える)
トオルが何かを考えているうちにどうやら最上階に着いたようだ
「ついたみたいだぜ、、なんじゃこりゃ。」
「血なまぐさいの、辺獄のほうがもっときれいじゃぞ」
どうやら最上階で何かが争っていた形跡があるようだ
「扉があるな、、鍵は、、ここか」
(ガチャッ)
(案外簡単に開閉する扉か、これもいいな)
トオルが単純な扉に感動していると、部屋の中にはなにかがいた
「ん?あれは、、狐?なんでこんなとこに」
「おい、よく見ろ、泣いてるぞ、しかも男のほうだ」
「む?これは狐の婚式かの?」
「ん?そうなのか?にしてもなんで泣いてるんだ?」
トオルがそういうと、狐たちが一斉にこちらを向く
「おや、お客ですか、これまた珍しい、、おい!もてなせ!」
泣いていた狐も泣き止んでいる
(これまた不気味だな、、しかし猫のテシルとは相性が悪い、食われるやもしれん、気を付けよう)
どうやらトオルたち、変な天秤に誘われていたようだ
さてこの狐たちに何をされるのか?知ったもんじゃない
第十三話 終