「Umbra Aegis」Gnomeとの戦い – 第[V]部
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「……本当に、俺がここに来た目的って何だ?」
「俺が本当に……成し遂げたいことって?」
「……俺は、一体何をすべきなんだ……?」
空はまだ赤く燃え上がっていた。流星の破片が激しく降り注ぎ、地上をまるで地獄の灯籠のように照らしている。熱を帯びた塵が空気を包み込み、視界を曇らせ、呼吸を苦しくさせ、ただひとつのものを残した——破壊。
そして、そのすべての中心に——Ellion が立っていた。
震えている。
混乱している。
頭の中の思考が今にも溢れ出そうとしていた。
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(フラッシュバック — アカデミー・オブ・マジック Neraveth)
夕方の教室には、独特なチョークの香りがほのかに漂っていた。深呼吸するたびにその匂いが鼻をくすぐる。黒板にチョークが当たる音は、時折鳴っては消え、再び音が響く。
ある教師の声が脳内に反響する。優しく、しかし力強く……そして意味深い。その声には、その人ならではの特徴と重みがあった。
少し低く、少し深みがあり、かすれてはいない……たぶん40歳前後の男性だろうか。でもこれはただの俺の仮説に過ぎない。
〜タクタクッ……
教室全体に、誰かが手を二回叩いた音が響く。その日の担当教師の仕草だった。
「よく聞いておきなさい……これは君たちが幼い頃から教わってきたことだ。
全人類の魔法の使用は、魂の奥深くにある“核”の習得にかかっている。
それを我々は “Ethera” と呼ぶ。」
それを聞いた Ellion は、机に頭を伏せたまま、目を開いた状態でぼそりとつぶやいた。
「Ethera を学ぶのって……マジで疲れる……」
「誰か、Ethera をもっと深く理解してる者はいるか?」
眠たげなクラスの中で、教師が静かに問いかける。
一人の生徒が手を挙げた。
「どうぞ。」
「うぅ……情熱あふれる人類に敬意を表するよ……」
Ellion はうなだれたままつぶやいた。
「Ethera とは…………」
Ellion の視線は教室の窓の外、暖かい夕陽に照らされた世界へと向けられていた。
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その記憶を通じて、Ellion は思い出した。
魔法には “Ethera” という存在があることを。
それは、誰もが幼い頃から教わってきたもの。
かつての Ellion は Ethera を制御することができず、自分の内にある本来の力を扱えなかった。だが、Velmire Neveil による苛烈な訓練のおかげで、ついにその魔力を引き出すことができた。
Ethera を習得するには、それぞれの段階を乗り越えなければならない。順に:
Aeternas
Nerveth Ethera
Resonant Step
Formas Grip
Gravemind
Ether Draw
すべての段階を極めた者は、最終段階である——
Vareth tier に到達する。
この段階では、すべての技術と精神がひとつに統合される。
そして、Elysira 世界における魔法の核心——Ethera を完全に支配することができるのだ。
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(戦場に戻る — 現在)
ドクン、ドクン……
Ellion の鼓動が、空に降り注ぐ隕石の衝撃とともに響く。
だが、今までとは違っていた。
その手は、もう震えていなかった。
ゆっくりと目を開き、燃える空を見上げる。
胸の奥に、一つの覚悟が芽生えていた。
「俺は……ここに来て、ただ死を待つためにいるんじゃない。」
「戦うために来たんだ。」
その記憶が、Ellion を真の理解へと導いていた。
彼がずっと求めていた答え——それが、今、心に宿った。
Ethera の全段階を乗り越えた今。
かつて Gnome との戦いで、多くの仲間たちが魔力と Ethera を使い果たした中、Ellion だけが……まだ力を残していた。
黒紫のオーラが彼の身体を包み始める。
そのオーラは足元から地面へと広がり、光る影のように複雑な模様を描いた。
彼の視線の先には、空に浮かぶ無数の隕石の破片……
……破壊の雨が降り注ぐ空があった。
そして、幾つもの岩の破片が再び落ちるその瞬間——
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「Umbra Aegis.」
それは Ethera の影からなる防御のドーム。
外の世界と内側の空間を分断し、まるで別次元を生み出すような術式。
魔術師の魂の意志が現実に干渉する一つの具現化であり、
その影は、調査部隊全員を包み込み、守っていた。
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ブラアアアアアアアッッッ—!!!
隕石が直撃した。
巨大な破片が降り注ぎ、Umbra Aegis の表面に激突する。
それはまるで地獄の鐘のような轟音で、大地を震わせた。
しかし、その影はびくともしなかった。
紫と赤の閃光がドームの周囲に弾け、まるで星同士が衝突しているかのように輝いた。
熱風が押し寄せるが、すべては影の守りに吸収され、消えていった。
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その中は……静寂だった。
穏やかで、
安全だった。
調査部隊は言葉を失った。
膝をつく者もいた。涙を流す者さえいた。
「俺たち……生きてるのか?」
一人の兵士がささやいた。
Garren、現場指揮官は震えていた。
恐怖ではない——信じられなかったのだ。
彼の視線は、円の中心に立つ一人の人物へと向けられていた。
乱れた髪。
微かな光を帯びた、黒い柱のように立つ姿。
Ellion Vaeren。
「……彼が……これを?」
Garren がかすれた声で言った。
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Ellion は顔を上げ、空を見上げた。
まだ落ちていない火の岩が、いくつもあった。
——だが、今この瞬間。
初めて、すべての目が彼に向けられていた。
それは哀れみでも、疑念でもなかった。
——そこには、「希望」があった。
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「これは……冗談だろ……」
「お前たちはまだ理解していない……
お前たちの敵は、ただの霊なんかじゃない……」
Gnome がそう告げた。
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一人の魔術師にとっては小さな一歩。
だが調査部隊の未来を左右する、大きな転機だった。
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