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クリスタルの響き — 師弟の賭け

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――静寂。塵がゆっくりと沈み、裂け目が大地を切り裂いた。まるで古の傷が新たに刻まれたかのように。


Velmire は杖を地に突き立てた。呼吸は整っているが、その瞳は燃えていた――結晶の中に眠る炎のように。彼の正面には Ellion が立っていた。漆黒と紫が交じる光を纏った影がその体を覆っている。


「いい……とてもいい……」Velmire は呟いた。「門を開いたな。だが忘れるな、Ellion。制御なき力は、己を裂く刃となる」


Ellion は鋭く視線を送った。「リスクは承知している、Velmire 先生」声は低く、淡く響き、感情を抑えたようだったが、瞳の奥には確かな光が宿っていた――彼の意識は明瞭だった。


Velmire は杖をくるりと回した。青い結晶が空中に現れ、優雅に旋回しながら複雑な陣を描いた。Ethera の結晶がさらに強く輝き始める。


「ならば――遠慮はしない」


一瞬で、五本の輝く結晶の槍が形成され、Velmire の周囲を浮遊した。

――ヴウン…… 低く唸る音が空気を震わせる。


Ellion は待たなかった。大地を蹴り、黒い矢のように宙へと飛び出す。

ズシャッ! その影は蛇のようにしなる。瞬きの間に彼は Velmire の目前へ。黒い剣が水平に振るわれた――空を裂く一撃。


Velmire は杖を構える。

ギィン! 激しい衝突音、結晶の火花が舞った。槍の一本がまっすぐに Ellion の腹を狙い飛んでくる。


Ellion は身を翻す。背から伸びた影が黒紫の盾を形成。

ガッ! 槍は弾かれる。


すかさず反撃――タッ! 足元の影が突き出し、鋭い短剣となって Velmire の胸を狙う。


Velmire はわずかに微笑んだ。

ズシャッ! その体から透き通る結晶の膜が広がり、鏡のように影の短剣を反射する。攻撃は反転し、Ellion へと返される。


Ellion の目が細まる。剣を振り下ろし、影が地から突き出て足場を形成。彼は宙を跳ねるように飛び、反射された短剣を躱す。


Velmire は地上から杖を掲げる。五本の槍が青く光り、

――ドンッ! 同時に放たれた。隕石のように、空中の Ellion を四方から襲う。


「まずい……」Ellion は歯を食いしばる。


両手で剣を強く握る。全身の影が脈動――

ゴオオオ……! 黒紫のオーラがさらに濃く燃え上がる。


Velmire の攻撃を空中でかわしながら、彼は滑らかな動きで影の足場を生み出し、空を歩くように移動する。


シュッ! シュッ! シュッ! 三本の槍をかわす。残る二本が背後から迫る。

Ellion は振り返り、剣を閃かせた。

スラッ! 一本を斬り裂く。もう一本は右肩を狙う。


周囲の影が防御術式を展開。

カンッ! 槍は弾かれるが、その衝撃で彼の体は急降下する。


Velmire はすでに準備していた。杖を地に突き立て――

キィイイイ……ッ! 無数の結晶の針が地面から突き出し、天を刺すように広がる。


Ellion は低く唸る。落下の中で両手を胸の前に組む。

ゴォッ! 影が体を取り巻き、渦巻く防護を形づくる。


彼の体が地面に衝突する寸前、下から結晶の針が迎え撃つ。

ドォン! 黒紫の爆発が半径五メートルの範囲を吹き飛ばし、結晶の針をすべて消し飛ばした。衝撃が西の練習場全体に広がる。


Velmire は軽やかに後方へ跳ぶ。マントの裾がひらめいた。

「ほう……やるな、Ellion」 今度は本物の感嘆の声が漏れた。


埃の中にできたクレーターの中心で、Ellion は片膝をつく。肩が上下しているが、目は静かに澄んでいる。彼を包む影のオーラは安定し、生き物の呼吸のようにゆっくりと脈打っていた。


Velmire は深く息を吐き、杖を降ろした。

「今日はここまでだ」


Ellion は顔を上げた。その視線にはまだ鋭さがあったが、Velmire の表情を見ると、少しずつ緊張がほどけていく。


彼は背筋を伸ばし、影のオーラがゆっくりと体に吸い込まれ消えていく。剣を地に突き立て、立ち上がった。


「ありがとう……Velmire 先生」 その声には温かみがあった。深い息の中に、満足の色が滲んでいた。


Velmire は彼に近づき、肩を軽く叩いた。

「素晴らしいぞ、Ellion。Ethera の扱いは、確かにお前の本当の力を目覚めさせている」


Ellion は深く頭を下げる。幾度も続いた苦しい日々が、ようやく一つの成果を結んだ。

しかし、影の力を完全に制御する道のりは、まだ始まったばかり。


それと共に、常に寄り添う「影」もまた、彼の旅に付き従うだろう――その「時」が訪れるまで。



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最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 一話一話、心を込めて執筆しております。読者の皆様の心に何かが残れば幸いです。 本作は毎週、月・水・金・日曜日に更新中です。 お気に入り登録・評価・コメントなどで応援していただけると、今後の創作の大きな力になります。 次回のエピソードで、またお会いできるのを楽しみにしております。
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