第9話 掘って掘ってまた掘って
お昼ご飯を食べ終えた俺達はまた歩き始めた。
プリンちゃんが鼻をクンクンさせながら2人を先導して歩いていく。丘を越え森の方に向かうプリンちゃん。そして突然プリンちゃんが土を前足で掘り出した。尻尾をグルグル回している。
「ワン! ワン!」
オオ! これがここ掘れワンワンか?
俺は初めて見るプリンちゃんのここ掘れワンワンに感激する。
「ここを掘れば良いのか?」
俺がメアリーアンを見つめるとメアリーアンちゃんは黙って頷いた。
俺は土を掘ろうとしてシャベルを持っていないことに気づいた。
メアリーアンちゃんがマジックバッグからシャベルを取り出そうとする。バッグから顔を覗かせるシャベルの柄を掴んで取り出す俺。
そしてプリンちゃんが示す場所を掘りだした。
昨日インテリジェントソードを掘りだしているだけに、オッチャンの期待は大きく膨らんでいる。
「えっさ! ほらさ! ここ掘れワンワン」
俺は変な掛け声を適当にかけながら良い気分で掘り進んだ。
横ではメアリーアンちゃんがプリンちゃんをモフモフして可愛がっている。
クー! オッチャンもプリンちゃんをモフモフしたいでござる!
ガツン!
10分も掘らないうちに何か固い物にシャベルの先が当たった。
顔を近づけて硬い物があったあたりをよーく覗き込んだ。
「あ! なんか光ってるで!」
思わず俺は声を出した。
俺は急いでその光っている何かを掘り出した。
掘り出しておいて土を手で拭き取る。
それは一枚の硬貨だった。
「金貨? ……ではなさそうだな。金色じゃない」
こすりながらよく見てみる俺。
「銅貨かな?」
土の中から出て来たのはどうやら今は使われていないが、なんの変哲もない銅貨みたいだ。
古いものなら歴史的価値があるかも? でも金貨なら価値が高そうだが、銅貨だからな?
「これがお宝か?」
俺がプリンちゃんの顔を見る。
プリンちゃんはそれがお宝だというかのように「ワン!」と一声鳴いた。
プリンちゃんは得意げに尻尾を振っている。
俺は見つけた銅貨をメアリーアンに渡す。
「これがプリンちゃんの教えてくれたお宝みたいだ」
「そうみたいね」
メアリーアンちゃんが頷く。
プリンちゃんが尻尾をグルグル回している。
メアリーアンちゃんがプリンちゃんの頭を撫でたり体を撫でたりしながら、プリンちゃんを褒める。
「良い子でちゅね~、うーん。それじゃあ次探してね」
「ワン!」
尻尾を振るプリンちゃんはまた地面の匂いを嗅ぎながら移動始めた。
俺は穴を埋め終えてついて行った。
今度はすぐにプリンちゃんが穴を掘り始める。
そばにもう一つ宝が埋まっているらしい。
俺はプリンちゃんに代わって掘り始める。
そしてまた銅貨を掘り出した。
「またあったぞ」
俺は銅貨をメアリーアンちゃんに渡した。
メアリーアンちゃんはプリンちゃんを褒める。
プリンちゃんが嬉しそうに尻尾を振った。
ここまでプリンちゃんのお宝発見率100%。
見つけたお宝は、銅貨二枚だ。
それにしてもプリンちゃんが穴を掘り始めた場所には必ず何かが埋まっていた。すごい。
どんなガラクタが出てきたとしても必ず何かが出てくるというのはただの偶然ではありえない事だろう。
いやいや、なんか出てくるまでねばって掘り続ければ、大抵なにか出てくるのかもしれない。
プリンちゃんの特殊能力を信じ出している自分にもう1人の自分がその考えを否定する。
そんな事はどうでもいいか、オッチャンはそれなりに楽しいしな……と割り切ってプリンちゃんを見る。
プリンちゃんがまた穴を掘り始めるのでまた俺がプリンちゃんに代わって掘り始める。
どうやらこの辺にはそこいらじゅうに硬貨が埋まっていそうだ。
でてきたのはまた同じ銅貨だった。その後銅貨を8枚掘り当てて合計11枚になった。
十二枚目を掘り当てて手に取ってみると今までとは少し違う。
「あ! これ銅貨じゃなくて銀貨かも?」
ゴシゴシ擦って土を落とす。少し見えていた色がハッキリと見えてくる。やはり銀貨だ。
銀貨の方が銅貨より良さそうに感じるのはこれが一つ目だからだろうか?
「アンちゃん! これ銀貨だ」
俺はメアリーアンに銀貨を手渡した。
メアリーアンは渡された銀貨をまじまじと見つめてからマジックバッグに仕舞い込む。
「銀貨があるという事は金貨もあるのかしら?」
俺はその言葉に俄然やる気が出てきた。
メアリーアンがプリンちゃんを抱き上げ頬を当ててモフモフを愉しみながらプリンちゃんの事を褒めていた。
プリンちゃんも尻尾を思いっきり振っている。嬉しいらしい。
オッチャンもプリンちゃんにモフモフしたいな~。モフモフしながらプリンちゃんのつぶらな瞳で見つめられたい。もう少ししたらオッチャンにもモフモフを許してくてないかな~
メアリーアンがプリンちゃんをおろしてプリンちゃんは尻尾をグルグル振りながらまたクンクン宝を探し出した。
この辺にはまだまだたくさん埋まっていそうだ。こんなに固まって銅貨や銀貨が出てくるとは……今に宝箱ごとかたまって出てくるのではないだろうか。
そんな時プリンちゃんの尻尾がピンと上を向いて伸びた。真っ直ぐ棒の様に伸びている。
そしてプリンちゃんがグルグル回りだすとペタンと座りマーキングを始めたではないか!
「オオー! マーキング! マーキング!」
俺は大声でメアリーアンに声をかけるのだった。