表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/81

81 マープル珈琲店 2

「あるならば、似顔絵だけでも見せてみな」


 ガルド師匠がエリックの手助けになればと思ったのかそう言った。聞き込みをするために、持たされていた似顔絵を全員で覗き込む。


「うーむ。みたことない顔だな」


「見たことない顔だわね」


「俺もこんな奴は知らんなあ」


「あら、とってもきれないお顔。良いところのお坊ちゃんかしら?」


 セシリーさんが死人の顔立ちを褒める。


「そう言われると、そんな気もしますね。確かに悩みも知らずに育ってきたような顔立ちだな」


 ガルドもセシリーさんの意見に同意する。カテリナとエリックは、そうかなあ……という顔で見つめ合う。オッチャンにもこの絵だけで育ちが良さそうだとは思えないが、そんな気がしなくもない。


「まあ、とりあえず聞き込みは続けますよ。仕事ですから」


 エリックが話を打ち切ろうとした。これ以上話していても犯人が見つかる訳ではなさそうだしね。


「そういえば、俺もこの前プロムの街で、盗賊団に囲まれて脅されたことがありましたよ。あそこは冒険者も多くて物騒な街ですね」


「ああ。西プロダンジョンがあるからな」


 ガルド師匠が頷く。プロムに比べればトルネコはとても落ち着いて安全な街だとオッチャンは感じる。プロムはやっぱり冒険者が多いせいか、怖そうな人たちがウロウロしていて怖いと感じたで。武器も持っとる人多いし。


「盗賊に囲まれてよく無事だったな。身包み剥がされたのか?」


 インテリジェントソードのおかげで、盗賊達を撃退できたんやが、それは口にはできないことや。まずい。いらんこと言ってしまったで。そこまで秘密にせんでもいいかいなあ? でもいえば面倒なことになるだけやな。


「えーと。なんとか逃げおおせたんや……」


「岳男さんのガタイなら、僕なら襲おうとは思いませんがね。とても高そうな、その服が狙われたんでしょうか?」


 エリックが羨ましそうにオッチャンの服と靴に視線を落とす。


「あ! ああ、これ、防御力高いから逃げるのに、役に立つんや。少しくらいの剣撃ならダメージ通らへんからなあ」


「そうですよね。ドラゴン系の皮でしょう?」


「よう、分かるなあ。エリックさん。流石は、騎士団員やなあ」


「僕もお金が有れば、そういう服を着たいと思ってますか思ってますからね」


「あら、騎士団の制服しか着ないくせに!」


 カテリナが、エリックをからかう。


「それは、そういう決まりだからだよ。そうでなければ着たいなあて思うのさ。高くて買えないけれどもね」


「やっぱり、トレジャーハンターって、そういう防御力の高い服が必要なほど、危なかったりするんですか?」


 カテリナが真顔に戻って聞いてくる。


「たまには魔物と戦う羽目になったりするかな?」


 オッチャンは今までの宝探しを思い出しながら答える。


 ゴブリンと戦ったり、リッチーと戦ったり、考えてみれば魔物とそこそこ遭遇していた。


 ……あれ? 今まで考えたこともなかったが、トレジャーハンターって、結構危ないのでは?


「今までにどんな魔物と戦ったんですか? その話、詳しく聞きたいです!」


 食いつき気味にエリックが身を乗り出す。男って、こういう話が好きなんやね。


「え、魔物と戦った時の話なんか? 魔物っちゅうてもゴブリンとかやで。それに、ただ必死で剣振り回してただけやし、成り行きでなんとかなったって感じやから……話すことあんまり無いわ」


「命懸けってことですよね……」


「そうやねえ。オッチャン、死ぬかと思ったでー。でもエリック君なら、ゴブリンなんて余裕で倒せる思うわー」


「騎士団では、ゴブリンと戦うことなんてないの?」


 カテリナが、エリックに視線を向けて不思議そうな顔をする。


「たまにあるけど、そんなにはないよ」


「エリック君なら、ゴブリンなんて余裕やろ?」


「数によりますけど、それほど苦にはならないかな」


「そうやろなー。オッチャンもそうなりたいわー」


 俺も顎を手で撫でながら考える。今ならインテリジェントソードがなくても勝てるかな? あ、無理? カテリナさんとガルド師匠の顔見て分かったわ。めっちゃ頑張れって顔しとる。


「あとは、何と戦ったことがありますか?」


「そうやねえ、リッチーかな?」


「リッチー!」


 エリックが驚いて目を見張った。リッチーといえばAランクともSランクともいわれる強力な魔物である。


「あ! リッチーと戦ったといっても、戦ったのは仲間のエリザベスやがな」


「え! エリザベスってSランク冒険者のエリザベスさんですか?」


 エリックが驚いて立ち上がる。


「岳男さん。エリザベスさんと知り合いなんですか?」


「知り合いっちゅうか、エリザベスは仲間の……この前一緒に来たメアリーアンのお姉ちゃんやで。カテリナさんは会ったよな」


「あの子の姉さんがSランク冒険者のエリザベスさん!」


「岳男さんって、凄い人だったんですね」


 エリックが少し身を引くように構え直す。


「オッチャンは、凄くはないで。メアリーアン達は凄いけどな。そんな、身構えられると驚くわー」


「私、この前失礼な事しちゃったかしら?」


「大丈夫やと思うよー。そんなに気にした様子はなかったしなー」


「ああ良かった。今度また一緒に来て下さいよ」


「僕もお会いしたいなあ。エリザベスさんには是非会ってみたいです」


 ガルド師匠も身を乗りだす。


「エリザベスさんに指導してもらいたいなあ。確か両手剣使いだったはず」


「そうやな。エリザベスは両手で短い剣を使うなあ。今度会ったら頼んでみるけど、あいつも忙しそうやしな……」


 エリザベスってすごいんやなあ? こんなに師匠が食いつくとは思わなんだで。


 その後も、4人は マープル珈琲店で大いに閑談を楽しんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ