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79 右横薙ぎ

「さて、岳男。素振りの続きだ。右横薙ぎを千な」


「はい」


 俺は、自己流でないでみる。それを見たガルド師範が手本を見せた。


「薙ぎ終わった剣先がプルプルしてちゃあダメだぞ。ビシッと止まらねばな」


 確かに俺の剣先は振り終えた時にプルプル震えていた。ガルド師範の剣先はビタリと止まって決まっている。もう一度薙いでみたが俺の剣は揺れてしまう。それに剣の軌道が微妙に水平にならず途中で弧を描いて曲っている。


 ーーこれ、難しいやん。


「両手でできたら、片手でも薙げるように練習しろよ」


「はい」


 片手で薙いでみると両手の時よりもっと大きく剣先が震えたーーもうブルルンという感じに。


 横で見ているガルドの目と口が、難しいだろうと言っているように、おかしそうに笑っていた。


 俺は大きく鼻から息を吐いて真剣な顔をする。そして数を数えだす。


「2! ーー3!」


 己の剣先を見れはやっぱり震えている。何度も何度も繰り返し、揺れないように振り方が遅くなる。早く降れば揺れるのだ。だが揺れないようにゆっくり振ったのでは実戦で使えそうにない。何度も繰り返して剣速を上げていこう。


 俺の取り組みを見たガルド師範が感心した顔で眺めている。どうやらこれで良いのかもしれない。


「それもありかな! いずれにしても素振り千回だ」


 切れるように横薙ぎできるまでは、何千回も素振りをしないといけなそうや。


 横薙ぎを繰り返すうち、少しは揺らさずに薙げるスピードが上がってきて、まだまだ切れる剣速ではないが、もう少しやと感じる。千回! ーー終わったがまだまだや。


 汗を拭きながら大きく息をはいた。


「一日でそこまで振れれば大したものだぞ」


「そうですか……」


 照れながら頭を掻くオッチャン。



「流石は岳男さんですね。今日一日でかなり右横薙ぎがさまになってきています。数日で丸太を両断できそうですね」


 自分の剣をしまいながらエリックが岳男を褒める。


「そうだ、岳男さん。これから親睦を兼ねてお茶でも飲みながら話しをしませんか? トレジャーハンターの仕事ってどんなものだか興味があるなあ」


「トレジャーハンターと言っても俺はまだ駆け出しやから、そんなに話せることもないんやけど、お茶をしながら話をするのは問題ないでえ」


「へー、その話、私も興味があるわー。岳男さんは国家トレジャーハンターなんでしょう? 国家トレジャーハンターってどうやってなるものなんですか?」


 カテリナも横から顔を出して話に加わった。


「俺の場合はメアリーアンと一緒に文化局に報告に行ったらなるように強制されただけなんやがなあ?」


「報告って何か発見したってことですよね? メアリーアンさんって、この前いらした可愛い女の子のことですか?」


「うん。まあ、メアリーアンと一緒に、なんや変な骸骨を掘り出したんや。その骸骨は、結局古代王朝の王様みたいやったんやけど。王冠みたいのかぶっとったし」


「それで?」


「そんで、メアリーアンが文化局に報告した方が良い言うて、色々あって文化局で国家トレジャーハンターにされた感じや」


「凄いじゃないですか? 古代の王の骨を掘り起こしちゃったんでしょう?」


「詳しいことは文化局が調べてると思うんやが、その後のことは聞いてへん。そんでも2億円で買ってもろうたで」


「きゃー! 岳男さんて億万長者様?!」


 カテリナが口を押さえて目を輝かせる。


「そんな驚かれても困るがな。メアリーアンと半分っこしたから俺の取り分は1億だったけどな」


「トレジャーハンターってすごいんだな」


 エリックが羨ましそうに、自分の給料のことでも振り返っているかのように腕を組んで首を捻った。


「エリックよ。岳男はたまたま凄い宝を見つけたが、皆んなが皆んな、そんなお宝を見つけられるわけじゃあないんだぞ。ほとんどの者は、お宝を見つけられずに一生を終えるんだ」


 ガルドがエリックの肩を掴んで頭をポンポン軽く叩いてなぐさめる。


 ガルドに向き直ったエリックは分かったように頷いた。


 なんだか二人とも、涙目とちゃう?


「お茶でも入れましょうか。奥の部屋に移動して話の続きを聞きたいわ」


 カテリナが気を利かせて移動をうながす。


「そういえば、来る時に『マープル珈琲店』のセシリー・マープルさんと知り合いになったんやが、セシリーさんの店に行ってみーへんか?」

 おっちゃんが、思い切って提案する。


「あら! セシリーさんの作るチーズケーキは濃厚で美味しいのよ。私もセシリーさんのお店に行きたいわ」


「ああ、向かいの喫茶店かい? 確かに美味しいコーヒーを出す店だね。店主と知り合いなのかい?」


「それはご近所ですもの。仲良しよ。エリックは、お店に行ったことなかったの?」


「二、三度行ったことは、あるかな。でも基本騎士団は忙しいからな。そんなに寄り道はしないからね」


「それじゃあ、みんなで『マープル珈琲店』に行くとしようか。久しぶりにセシリーさんのチーズケーキを食べたくなったよ」


 ガルドが話をまとめて道場を出る。オッチャンは、チーズケーキが美味しいと聞いて、少し期待に胸を膨らませた。美味しいは正義やで。








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