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75ピラミッド再探索 5

 下のフロアは10階層目に当たるのか、何かありそうな気がしてならない。キリの良い数字だからって、宝部屋がありそうだと思うのは安直で虫が良い話だろうか。


 王の棺に隠された入り口の中なのだから、何か大事なものが隠されているのではないかと思うのは普通のことだろう。勿論オッチャンは大いに期待を膨らませている。


 メアリーアンが通った道の地図を記録しているので、地図の完成時には不審なスペースは分かるはずだ。下への隠れた入り口を見逃さないように、足元には特に注意をしている。


 今までの最下層ということで、広さとしても一番広いらしく調べるのに時間がかかったが、扉の閉ざされた部屋を発見した。


「何だか期待が持てそうですね!」


「私に開けられれば良いのだがな」


「きっと大丈夫や。ダメなら開錠の専門家を連れてもう一度くればええがな」


 エリザベスが扉を開けようと鍵穴の攻略を始める。扉に耳をつけカチャカチャやりながら唸っている。


 ガチャ! というやや大きめの音がしてエリザベスがサムズアップする。


「開いたぞ!」


「やったわね。ベス!」


「さすがやなあ!」


 振り向いて笑みを見せるエリザベスをメアリーアンと俺が称賛する。


 エリザベスが扉を開いた。金色の光が目に飛び込む。そこには金貨の山。金の価値だけでなく金貨としての歴史的価値も上乗せされる超高価な逸品が部屋いっぱいに山積みになっていた。


 俺とメアリーアンが飛び上がって喜びながらハイタッチをする。上の宝部屋にも負けないほどの大量のお宝だ。


「凄いな。まさか本当にあるとは。探して良かったよ」


 エリザベスは喜びながらもやや冷静だ。


「凄いわね。一気に稼ぎが倍になった感じかしら」


「そうやな。でもわし今回活躍してへんな」


「そういうことは、言いっこなしだ」


メアリーアンに抱かれたプリンちゃんが、ワン! と吠える。


そうやな。お前も活躍してへんな。


「収納するぞ!」


 エリザベスがメアリーアンに視線を送る。二人はマジックバッグを取り出し金貨の山を吸い込み始めた。部屋いっぱいの金貨の山が二人のバッグに飲み込まれていく。だが吸っても吸ってもなかなか減らない。金貨の山を吸い尽くすのに十分以上かかるほどだ。


「思ったより多かったな」


「思ったより多かったわね」


 二人が見つめ合いながらニヤリと笑いあう。


「そんじゃあ、上に戻りますか?」


 オッチャンも締まりのない笑顔で二人に視線を投げる。


 回収するものも収納したし、後は帰って報告するだけや。三人は上の階を目指して歩き出す。


 八階層で棺を収納し、地上への道をまっしぐら。ピラミッドを出るとそこには雲一つない青空が迎えてくれた。


「やっぱり、外の空気は美味しいわね!」


「外の空気は最高だな!」


「太陽の光も気持ちええで!」


 三人は思いっきり外の空気を吸い込む。ピラミッドの中の埃とカビと土と鉄粉と血肉の混じったような澱んだ空気とは全然違う。生き返るでー!


 改めて三人は満面の笑顔でハイタッチをする。眼下で発掘作業をする男達が何やら蠢いている。銀次が急いで駆け寄ってくるのが見える。銀次が現場を指揮し、ゴードンが報告にいっているのだろう。


「まずはホテルで一休みやな! 風呂にも入りたいで」


「お風呂、いただきたいですね」


「ホテルに急ごうぜ!」


 三人はプロミネンスホテルに直行し、いつもの最高級の部屋で羽を伸ばす。浴室も二つあるので気兼ねなく入れた。


 ああ……もう働かなくても良いんやね。


 これまで発見したお宝で、もう何もせんでも生きていけるーー遊び惚けていても使いきれない金を手に入れたんや。これもメアリーアンちゃんとプリンちゃんのおかげやね。オッチャン、もう働かんでえ!


 オッチャンはどっぷりと気持ち良い湯加減の風呂に体を沈める。


 あーええ気持ちやー。


 メアリーアンとエリザベスがもう一つの浴室でキャーキャー喜びながら遊んでいる声が聞こえる。


 その夜は久しぶりのベッドで泥のように眠ったのだった。



 翌朝プロミネンスホテルに銀次が迎えにきていた。報告に同行して、棺の搬入に立ち会いたいと言われていたのだ。馬車に乗せていってもらえるのでありがたい。



 文化局ではスカーレット女史とゴードンが待っていた。二人は俺達の到着を喜んで迎える。


「無事のご帰還、おめでとう。新しい発見はあったかね?」


 相変わらずスカーレットは美しいでえ。できる女感、半端ねーな。


 横にゴードンが控えているし、王の棺の下に秘密の入り口を見つけたことは聞いているはずや。


 俺達三人は、スカーレット局長の前に机を挟んで立っていた。メアリーアンが局長に返事をする。こういう頭脳労働は彼女の担当や。


「棺とその中身は、十一個全て持ち帰りました。それから王の棺の下で見つかった入り口の先で宝部屋を発見し、宝も持ち帰っています。鑑定と査定をお願いします」


「新たな成果を持ち帰るとはすばらしい。君達は、驚くほど有能だね」


 机の上に両肘をつき、口の前で両手を合わせて前のめりのスカーレットが口の端をニヤリと上げる。そして鋭い視線で見詰める。


「では、搬入に立ち会おう。銀次もゴードンも一緒にね。……それから、次の探索はどうするのか聞いておきたい。まだ潜るのか、ここで打ち切って後は任せてくれるのか?」


「ここで潜るのは打ち切るつもりです。後のことは文化局にお任せします」


 メアリーアンが昨夜の打ち合わせ通り探索の打ち切りを局長に伝える。スカーレットは表情を変えずに聞き流した。


「では、行こうか。棺の中身とやらも見てみたい。それから次の依頼についてだが……」


「次の情報を頂けるのはありがたいですが、多少の休憩は、挟みたいですね」


 スカーレットがメアリーアンの返事を聞いてから立ち上がった。


「次の依頼も、君たちに期待しているよ。休んだら詳細を聞きにきてくれたまえ」


「分かりました。その時はよろしくお願いします」


 メアリーアンが卒なく答えて移動するスカーレットの後に続いた。オッチャン達もその後に続く。そして棺と金貨の搬入を行った。金貨の量にスカーレットもゴードン、銀次も驚いていた。


 買取り額は膨大な金額になるだろう。それこそ数千億、あるいは兆。それから二十年に渡ってその後の収益に対する分前ーーかなりのお金が振り込まれるんや。


 おれは、大満足で別れを告げる。


「さよなら、メアリーアン」


「さようなら。タケオさんーーまた今度、お願いしますね!」


 にこりと笑うメアリーアン達に俺は背中を向けて歩きだした。


続きは後にしようと思っています。続きが読みたいと思う方は、ブクマ、星、お手紙などで応援お願いします。

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