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72 ピラミッド再探索 2

 「ゴードン、銀次さん、一緒に食事にしませんか?」


 メアリーアンが笑顔で誘う。テーブルの上には湯気を上げるビーフシチューと暖かく焼き上がったばかりのパンが置かれている。マジックバッグの中では時間が経過しないので、出来立て状態で用意できるのだ。


 テーブルの上は美味しそうだがテーブルの周りは王達の棺が十一棺、そして中にはミイラが入っている。普通の感覚では食事が喉を通らないだろうとも思えるがーーーーメアリーアンもエリザベスもゴードンも銀次も気にする様子はない。オッチャン繊細すぎる?


「美味しそうな匂いですね。本当に頂いてもよろしいのですか?」


 ゴードンが、かしこまった様子でメアリーアンに尋ねる。


「いつも冷たい食事なので、こんなに美味しそうな食事にありつけるなんて、夢のようです」


 銀次も目を輝かせている。


「どうぞ、一緒に食べる機会もそうはありませんものね。それに、食べ物はたくさん持って来ていますから、遠慮なさらずに」


 メアリーアンを拝むように手を合わせ、感謝を体で表現する二人。


 メアリーアンの料理はごっつう美味いでー、食べたらびっくりするやろう。


「ムムム!」


 ビーフシチューを口に入れた銀次がカッと目を見開いてシチューを睨み顔をあげてメアリーアンを見る。びっくり顔や。


「すごい美味いです! こんなの初めてだ!」


 まさかと言う表情でゴードンもシチューを口に運び目を見張る。


「本当ですね。こんなに美味いビーフシチューは初めてです。口の中に広がる芳醇な味わい、柔らかく煮込まれた肉は噛まずともとろけるようだ」


 そうやろう、そうやろう。メアリーアンの料理は最高やでー。


「この肉すごく高いんじゃないですか?」


 当然の質問やな。オッチャンも同じこと聞いたでー。


「いえ、普通の肉ですよ。その辺で売っている普通の肉」


「それでこの味を出すとは…………相当手間がかかってますね!」


 メアリーアンがくすりと笑う。ゴードンと銀次は感動している。俺とエリザベスはその様子をにこやかに見つめて満足する。


「あー、美味かった。ご馳走になりました」


「いえいえ、大したものも出せませんで」


「いーえ、最高でしたよ」


「地上でもこれほどの料理は食べられませんよ。感激です」


 夕食を終え明日に備えて睡眠の時間だ。毛布を被って雑魚寝する。ピラミッドの中なのでテントは張らない。ランタンの光を弱めて八時間眠った。


 目が覚めると探索の開始だ。ゴードンと銀次を棺の調査でこの場に残し、三人はまず七番目のフロアに戻って通っていない場所をくまなく調べる。


「このフロアはかなり広いから、隠し部屋も作りやすそうやなあ。気合いを入れて見つけなくちゃ。ここまでは見つからんかったが、見落としはないよなあ?」


「隠し部屋になっていそうなスペースのチェックはメアリーアンが地図を作りながら、ちゃんとチェックしているからね、見落としはないはずよ」


「怪しそうなところは無かったし、ちゃんと正方形の形に迷路が埋まっていたわ。怪しそうなスペースを見つけたら言っているわよ」


「そうなんや……。でも床下とかに宝が収納されてたりしたら地図じゃあわからんよな」


「そうね。それは見落としがないことを祈るだけね」


「罠も見つかっていないし、床はベスがかなり綿密にチェックしていたはずよ」


「アンの言う通りだ。だが何度も言うが、見落としがないことを祈るだけだ。ようは私に見つけられないほど巧妙に隠されているかもってことさ」


 三人はゆっくり慎重に床や壁を調べながら進む。ランタンで照らしながら手で撫でる。怪しいところは見つからない。あるとしたらこのフロアとこの上の六番目のフロアだ。八番目の最下層は棺の部屋と宝部屋が大きなスペースを占めているので、隠し部屋まであるとは考えずらい。俺はそう考えて今までより念入りにチェックする。


 メアリーアンも真剣に地図を見ている。


「地図上でも怪しいところはなさそうなの?」


 エリザベスがメアリーアンに確認する。


「まだ全部が埋まったわけじゃないけど…………こっち側は、なさそう………あれ!」


 メアリーアンの言葉に俺とエリザベスが色めき立つ。


「どうしたんや? ありそうなんかい?」


「どんなかんじ?」



「うーん。このフロアならもっと全体が広くても良いかなって…………ようはその壁の先にもスペースがあっても良いんじゃないかな」


「確かなの?」


「分からないわ。でもピラミッドは四十五度の斜面の正四角錐でしょう。中のスペースも同じような比率で広くなっているはず。だとすると通路一列分足りないような気がするのよ」


「よっしゃーやる気が出て来たでえ!」


 オッチャン俄然張り切りだす。お調子もんなんやからしょうがないやろう!


「柱的な構造物の可能性もあるんだろう?」


「そうね。ベスのいう通りそういう構造部分だと思う場所もあるんだけれど、迷路や部屋の中にある場合は大体対象的な位置にあるから察しがつくわ。でも外周部分はどうだか分からない。ただ対象的かと言われれば…………通路一列分足りないの」


「外周を厚くする必要があれば、周りじゅう厚くなっているはずだからな」


 エリザベスも納得する。


「まだ右半分しか調べていないから、左から回り込んでいる迷路が行き止まっているという可能性も捨て切れないけれど」


「確かにそうやが、そういうところって、宝が隠してあったりせんのかな?」


 メアリーアンの話を都合よく解釈する。


 壁も床も調べたが隠し部屋の入り口は見つからなかった。


「左半分を調べてみないと結論は出せないわね」


 メアリーアンは現時点で結論は出せないと結論づける。無理やり目の前の壁に穴を掘るのは左側から回れない場合ということだ。


 俺達は、行き止まりの壁を後のして、まだチェックしていない左半分の調査に向かった。

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