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71 ピラミッド再探索 1

 ピラミッドを前にして、ゴードンと銀次と打ち合わせをするメアリーアン。オッチャンは頭脳労働は苦手なので、交渉ごとはメアリーアンに丸投げだ。たぶん棺の調査確認のために誰か同行する段取りなのだろうと思う。


 メアリーアンが振り返り俺の方に歩み寄る。


「タケオさん。ゴードンさんと銀次さんが棺の調査で一緒に潜るそうです。構いませんよね」


「ああ、良いでえ」


「ご迷惑でしょうが、よろしくお願いします」


 ゴードンが頭を下げる。銀次も無言でゴードンに合わせる様に頭を下げた。二人は腰に剣を下げ、銀次が背中にリュックを背負っている。調査のための道具や野営のための道具、食糧や水などが入っているのだろう。かなり大きい。二人で分けて背負わずにゴードンが身軽なのは、おそらく急に攻撃された時の応戦をゴードンが受け持っているためだろう。上司と部下の力関係というわけではないと思いたい。 


 俺たちはマジックバッグに荷物を入れているので荷物持ちはいらない。メアリーアンとエリザベスの腰に巻かれた小さなバッグ。荷物くらい全て入ってしまうというチートアイテムーーマジックバッグを持っているので、とても楽に探索ができる。


 ピラミッドの中は、一度探索して魔物を倒してあるので、おそらく魔物は出ないはずだ。剣は想定外の事態のために一応身につけていくといった程度。使う可能性は極端に低い。


「今度は五人で潜るんだな」


 エリザベスが確かめる。


「そうなるわね。二人を棺の部屋に置いて来たら後は隠し部屋を探すだけよ」


「行きもチェックをしながらで良いんだよな?」


「あまり時間をかけなければね」


「帰りは二人を置いて来て良いのか?」


「できれば一緒に帰って来たいわね。時間が合わなければ、置いて来ても良いそうよ。でも棺ごとマジックバッグに入れて一緒に外に出るのが彼らの第一希望。だから私達の探索に時間がかかっても、彼らは私達を待ってると思うわよ。食料の許すかぎりね」


 どうやら五人で行って五人で帰ってくることになりそうだ。俺としてもその方が心強いけどな。


 メアリーアンの説明が済んで五人が顔を見合わせる。目の前のピラミッドの周りは深さ十五メートル近く露天掘り状に掘り込まれ、地上とピラミッドの頂上は幅約三メートルの橋で繋がれている。階段式に掘り出されたピラミッドは巨大なクレーターの中心に打ち込まれた鋲の様だ。掘り出された土が露天掘りから離れたところで小山の列を作っている。それらはまるで天空から見るための地上絵だ。


「それでは出発しましょう」


 メアリーアンの一声で五人は橋を渡りはじめた。


 橋の上から興味本位に下を見下ろすと結構怖い。自然に橋の真ん中を歩くようになる。


 ピラミッドに着いて中に入ると、先頭のエリザベスが後ろを振り返ってから階段を降り始める。


 降り階段は踊り場を挟んで折り返し、三度折り返したところで階段が終わる。ここまで階段の壁に隠し扉は見つからない。


 一回目のフロアに到着した俺たちの目の前に迷路が延びている。一度きた迷路の全てをチェックする。一階層はさほど広くなくまた長く下に続く階段を降りる。そしてまた三度折り返してさっきより広い二つ目のフロアに出る。ここも端から端までチェックするが何も見つからない。


 三つ目のフロアを目指してまた階段を降りていく。


 二つ目のフロアと違い三つ目のフロアはそれなりに広いので迷路もそれなりの複雑さだ。壁という壁をチェックし、床という床をチェックする。そして四つ目、五つ目のフロア。フロアの面積は段々の広くなり迷路も複雑さを増していく。五つ目のフロアはスケルトンに襲われ魔法陣で最下層に転移させられたフロアだ。何も見つけられずに五つ目のフロアも下の階段の前までやって来た。


「本当に隠し部屋なんかあるんかいなあ?」


「あればラッキーって感じだな」


「初めからないと思っていましたし、最下層とこことの間のフロアは、通っていないところも多いと思いますから、見つかるとしたらこの後って感じですよね」


「先に棺のある八っ目のフロアに二人を届けてから一眠りして、その後二人が棺などの調査をしている間に三人で残りのフロアを調べよう。その方が時間の節約になる」


「そうやな。それが良いやろう」


「ゴードンさん、銀次さん、それで良いですね」


 ゴードンと銀次が互いに視線を交わして頷く。


「ここまでの地図を作って来ましたが、不審なスペースはなかったですね。棺のところまでのルートは前回記録した地図に従って寄り道しないように進みましょう」


 メアリーアンはそう言うと、地図を片手に歩き始める。


「今のところ、魔物の出そうな気配は無いな。とはいえ油断はするなよ」


 エリザベスがメアリーアンを守るように先頭を歩く。ゴードンが殿で、手前の銀次を守るように周囲の様子に気を配る。


 俺はインテリジェントソードに心の中で呼びかけた。魔物は本当に出なさそうなんかい?


「今のところ、安心して良いぜ」


 インテリジェントソードの答えが脳裏に響いた。


 それから五人は棺の部屋まで迷うことなく、無駄なく、隠し部屋を見落とさずに最速で進んでいった。棺の前に辿り着き、ゴードンと銀次は感激の表情を浮かべ、棺のそばに駆け寄る。メアリーアンはマジックバッグから食事のためにテーブルと椅子を取り出し始める。俺はそれを並べ整える。エリザベスは辺りへの警戒を崩さない。


 大きな寸胴を取り出したメアリーアンが中に入ったビーフシチューを深めの皿で五人分に取り分ける。湯気が上がり、美味しそうな匂いが広がった。俺の腹がグウと鳴った。


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