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69 銀行にて1

 午前中剣真流道場で稽古をつけてもらっていた俺は、午後にはメアリーアン達と銀行に行くことになっている。


 道場のある中堅都市トルネコの西に接するコリント市の東の端、つまりはトルネコ市を一歩出た家賃の下がった貸家が立ち並ぶ一画にある俺の部屋(賃貸)に一旦戻り、汗をかいた体をきれいに拭いて、服を着替えて匂いを確かめる。


「うん。臭くなーい」


 メアリーアン達と銀行に行くのに汗臭くては嫌がられるだろう。メアリーアンもエリザベスも良い匂いだからな。本当は風呂に入りたかったが、銭湯はまだ開いていないのだ。言うまでもないが俺の部屋に風呂は無い。


 インテリジェントソードは今、メアリーアンのマジックバッグの中だ。可哀想だが俺の家に置きっ放しにして道場に行くわけにはいかないので我慢してもらっている。直ぐに出してやるからな、もうちょっと我慢してや。


 二時に銀行で待ち合わせ。急がないと遅刻だ。銀行はトルネコ市の中心部、メアリーアンが常宿にしているホテルの直ぐ近くだ。ホテルに迎えに行っても良いのやが、この前ホテルで待ち合わせた時、結構周りの金持ちに奇異な目で見られたから今回は遠慮した。金もできたし後で高そうな服でも手に入れよう。


 レベルの高い冒険者達が着ているような実用的で丈夫で防御力の高そうな服が良いだろう。少々汚れていても金持ち達には受け入れられそうだ。勿論庶民に混じっても変な顔では見られないしな。


 路線馬車を使ってトルネコ市の中心街へ、そして銀行の前まで歩く。銀行の立派で頑丈そうな扉の前には剣を下げた二人のガードマンが睨みを効かせている。


 俺はこの前銀行で渡された金属製のプレートをガードマンに見せると、彼等はうやうやしく頭を下げて扉の中にいざなった。


 中に入ると黒い制服姿の男が寄ってきて、揉み手をする。この前と一緒や。


「堀田岳男様でいらっしゃいますね。こちらへどうぞ」


 個室に案内されてテーブルに座らせられると、目の前にお茶とお菓子を用意された。なんか接待されているようで気分が良いでえ。


「今日はどの様な御用向きでございますか?」


「メアリーアンとエリザベスと待ち合わせだ。詳しいことは二人が来たら聞いてくれ」


「左様でございますか。それでは、お二人がいらしたら此処にご案内申し上げます。御ゆるりとお待ちください」


 お茶に手を伸ばしお菓子を口に入れる。美味しいし、気分も良い。これタダで良いんやなあ?


 三つ目のお菓子を口に放り込んだ時、メアリーアンとエリザベスが案内されてやって来た。


「タケオさん。お待たせしました」


「タケオ、早かったのだなあ」


「二人を待たせるわけにもいかんやろう」


 黒い制服姿の男がメアリーアンとエリザベスにお茶とお菓子を用意する。


「メアリーアンさま、口座に文化局様からお振り込みがございました。今日はその件でいらっしゃいますか?」


「そうよ。そのお金を三人に分配しないといけないの」


「左様でございますか。それではメアリーアン様の御通帳をお持ち致します」


「お願いするわ」


 黒い制服姿の男はうやうやしくお辞儀をしてから部屋を出る。そして直ぐメアリーアンとエリザベスと俺の通帳を持って戻って来た。この世界の銀行では、通帳は銀行が保管していてそこには入出金の記録と残高が書きとめられている。


 それぞれに自分の通帳が渡され、俺は自分の通帳を確認する。残高は一億三百万ゴールドだった。


「この前のお宝の買取額、二千四百億ゴールドが振り込まれているわ。三等分して八百億ゴールドづつ振り込むということで良いかしら?」


「了解」


 当然だと言う様にエリザベスがメアリーアンに簡潔な返事をする。


「俺もそんなにもらって良いのか?」


「勿論よ。タケオ」


「悪いな。大したことはしていないのに」


「そんなことないわよ。タケオはちゃんと私のことを守ってくれたわ」


「あれだけで、そんなにもらえるとは…………」


「基本は頭割りで良いでしょう。細かい事は言わないで」


「分かった。ありがとう」


「それから地図とメダルとインテリジェントソードはまだ換金していないけどそれは換金できてからと言う事で良いわよね」


「インテリジェントソードのことなんだが、あれはもう俺の武器の様になっているから、俺の物にしたいんだが」


 俺はインテリジェントソードの持ち主になっていないことに気がついてメアリーアンに打診する。


「それならインテリジェントソードをタケオさんの物、地図、メダル、ガチャ機は私の物ってことでどうかしら」


「それで良いで」


「じゃあ、それできまり。私の口座から二人に八百億ゴールドずつ振り込んで下さい」


「分かりました。それでは通帳をお預かり致します」


「俺、これから服を買いに行きたいんやけど、エリザベスみたいな冒険者用の服って高いんやろう? いくらくらい引き出して持っていけば良いんや?」


「大きな店なら銀行のカードで引き落としをしてもらえるから便利だぞ」


「エリザベス様の言う通りでございます。当店のカードはその様な使い方もできる様になっております。タケオ様のカードなら、一度の買い物で百万ゴールドの引き落としが、エリザベス様やメアリーアン様のカードなら百億ゴールドの引き落としが可能でございます。タケオ様のカードも百億ゴールドの引き落としに対応できる様変更をいたしましょうか?」


 俺はカードを見つめて考え込む。このカード、無くしたら大変やな…………。

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