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64 新しい依頼 16

「なんとか勝てたみたいやね」


「タケオ! ナイスだ。だが、あの剣の動きはなんだったんだ?」


 剣の動きの不自然さを見逃さなかったエリザベスは、やはりさすがと言うべきだろう。

 

 俺は分からないと身振りで伝える。


「タケオさん、やりましたね。ベスを助けたいという思いが通じたんですよ!」


「ところで此処って何処やろうな?」


 この話題を深掘りされてもインテリジェントソードの力なんじゃないか……としか説明できないが、そんなことよりもっと重要なことがこれだ。


「たぶん、ピラミッドの内部、最深層じゃないかな」


 言われてみれば、ボス部屋といえば最深部と相場は決まっている。


 俺は投げたインテリジェントソードを拾って感謝する。こいつは命の恩人、いや恩剣だ。


「良いってことよ」


 俺以外には聞こえていないだろうインテリジェントソードの声が脳裏に響く。


「帰り道を探しましょう」


「宝もな!」


 メアリーアンとエリザベスが話を進める。そうや! 帰り道と宝を探さにゃあ。


 辺りを見回すと始めリッチのいた場所には石をくりぬいた棺桶が安置されている。


 俺は石棺をずり開ける。中には王冠を被ったミイラ化した白骨の遺体ーーこいつがリッチになった男の死体に違いない。王冠がリッチのそれと一致している。遺体の周りにはたくさんの宝。これだけでも相当な価値があるはずや。


 俺の両隣にメアリーアンとエリザベスが寄ってきて石棺を覗き込む。


「これはそのままの状態で文化局に見せるべきですよね!」


「そうだな。文化的な価値が損なわれないようにこのままの状態にした方が良いだろう」


 エリザベスの意見は正しいに違いない。俺にはよく分からないけれど。


 周りを見渡すと左右に五つずつの石棺が安置されている。そして一番向こうに通路に繋がるだろう扉が見てとれた。


「あれらも開けてみるのか?」


 俺はメアリーアンの真剣そうな顔を覗き込んだ。


「あれらにも、きっとミイラが入っているわ、この人の部下達よ」


「エリザベスは死にきれずにリッチになったと言ったが、死んでから埋められたのと違うのか?」


「彼らは生きたまま死後の世界に渡ろうとしたのよ。当時の宗教的世界観ね。だから向こうに行って使う道具やお金になりそうな物、武器や防具も身につけて石棺の中に収められているわけ。全財産ね」


「王の場合は、そんなに石棺には入りきらないから、近くに宝部屋があるはずさ」


 オッチャンは何も知らなかったが、メアリーアンとエリザベスには常識的なことだったらしい。アホな常識にとらわれると、アホなことをするんやなあ……と俺は思う。勿論棺桶のミイラ達のことやでー。


「部下達の中には強力な武器を持っている者が多いだろうな。当時の選ばれし強者達だろうからな」


 エリザベスが感慨深そうに呟く。そういえば王も凄そうな杖をもっていた。それと一冊の分厚い本も。


「リッチになった王様って、凄い魔法使いだったんやなあ?」


「リッチになれるくらいだからなあ」


「あの本読んだら魔法、身につく?」


「読めれば身につくかもしれないが、彼は魔法をすでに身につけていたことを思えば可能性は低い。身につけるための魔法書ではなく、魔法の発動を補助するものじゃないかしら」


 エリザベスの推論は、理にかなってるように思える。魔法を身に付けられると思ったのに残念や。


「それに難しくて古代の文字は読めないでしょう」


 メアリーアンの指摘も鋭い。オッチャン、今の文字だって全部は読めないんや。


「おまえ、魔法を身につけたいのか?」


 インテリジェントソードの声が脳内に響く。心の中で、そうや、と答える。


「お前の目を通して、俺が読んで伝えてやれば、もしかしたら使えるようになるかもしれんぞ」


 俺は一瞬雷に打たれたように驚き固まる。


「一回見るだけ見てもええかな?」


「タケオさん、読めるんですか?」


 読めるはずもないのは分かっているはずなので、これは冷やかしだ。


「元に戻しておけば構わないよな」


 エリザベスがメアリーアンに確認する。メアリーアンが頷く。


「記念というわけじゃないが、気になるなら見るがいい」


 エリザベスが笑い顔で許可を出す。


 俺は王の持つ分厚い表装の本を手に取って読み始める。ページを捲るごとに知識が頭に流れ込んできた。俺に本の中身が身についたのは確かだと感じる。魔法の使い方も分かるし、この本の使い方も分かる。凄い魔法を使うのには、この本が必要なのだ。


「この本、俺者のにしたい! 他は何もいらないからこれだけは俺にくれ」


 俺は二人に大きな声で必死にすがる。


「どうしたんですか? まさか魔法を覚えたとか?」


「おまえ、読めたのか? これから時間をかけて読もうってのか?」


「魔法を覚えた! この本があると凄い魔法も使えるみたいや!」


 俺の答えに二人が驚き目を見張る。


「それを見れば魔法が身につくのか? 私にも見せてくれ!」


「インテリジェントソードの力で読めたんだと思う。信じられないけど」


 俺は、エリザベスにインテリジェントソードと本を渡す。


 エリザベスは二つを受け取り読み始めた。


「凄いな、インテリジェントソードの力で本当に意味は分かるぞ。だが魔法を覚えた感触はないな」


「魔導書で、魔法を覚えられるのは一人だけです。誰かが覚えた魔法の学習効力はきえ、もう覚えられなくなります。ただ、覚えられなかった魔法でも、本を開いて正しく呪文を唱えられれば魔法は発動できるでしょう」


 メアリーアンが解説する。つまりミイラになった王がこの本を手にした時、すでに身につけていた魔法は効力がそのまま残っていたため俺はそれを覚えられたということらしい。結構たくさんの魔法を身につけられたようやで!当時最高峰の魔法使いだった王が身につけていた魔法を覚えたのだ。オッチャンはすごい魔法使いになったかも。


「てことは、インテリジェントソードを持ってこの本を使えば、この本の全ての魔法が使えるってわけか」


 エリザベスが本を俺に戻す。


「これはお前にやるよ。それでいいよな! アン」


「はい。タケオさんがもう所有権を持ったようなものですからね」


 この本を使って魔法を身につけた時なんらかの繋がりができたのかもしれない。それをメアリーアンは所有権と言ったのだ。


「ありがたく、いただくぜ。あとはなにもいらない」


「ちゃんと平等に分けるから気にするなよ。レジェンド級の武器や防具だってあっちにたくさん入っているに違いないんだからな」


 エリザベスが周りの石棺を指刺した。



 その後俺達は、宝の部屋を見つけピラミッドの外に戻ることができたのである。


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