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63 新しい依頼 15

「このままじゃあ、らちが開かない!」


 どのくらい戦い続けているのだろう三十分か一時間か。エリザベスの声に焦りが見える。


 余裕に見えたエリザベスの額に汗が光る。だが動きに衰えは微塵もない。さすがはSランク冒険者である。体力も並ではなかった。


 俺もインテリジェントソードが動かしているので動きは少しも鈍ってはいない。だが守っているメアリーアンは苦しそうに顔を歪めていた。


 表情のないリッチの骸骨顔が嘲笑いながら見ているようで、癪に障る。完全に見下して楽しんで眺めている顔だ。いたぶっていじめている余裕の奴の顔だ。


 エリザベスが自分のマジックバッグから小瓶を取り出しリッチに向かって投げつけた。聖水だ。


 聖水瓶の投擲を払ったリッチの右手が白い煙を揚げた。


「き……ぬ……」


 不気味な声をあげるリッチは、効かないぞと強がっているようだ。


「カー!」


 リッチの放った稲光がエリザベスを襲うが、軽いフットワークで全ての雷撃を躱しきる。


 躱しながらもスケルトンを斬りまくり、雷撃で召喚が中断したためにスケルトンを減らすことに成功した。


 俺への圧力が多少楽になったが、それでもメアリーアンを守りながらの戦いに、それほど余裕がある訳ではない。


 だがスケルトンを食いまくっているインテリジェントソードは少しずつ強くなっているようにも思える。


「このまま食い続けるぞ」


 インテリジェントソードには何か考えがあるかもしれない。少しずつ強くなれば、いずれはリッチを倒せる強さになれるとか?


 エリザベスは戦いながら聖水瓶の投擲攻撃を繰返す。こちらも僅かづつリッチにダメージを刻む作業だ。たいして効いてはいないようだが、やらないよりはましなのだろう。


 投擲時に剣一本になるから、スケルトンへの攻撃がなくなるが、それでもリッチに注意を向けさせることで召喚速度は鈍るもの。


 プラスの効果とマイナスの効果がその度に相殺され、ある時は有効にまたある時は逆効果になったりする。一進一退の攻防が長く続く。


 これは奴のシナリオどうりじゃないのか? 体力の限界を待ちながら、楽しくなぶっているのではないか? ふとそんな考えが頭をよぎる。


「そうなのだろうな。奴としては、殺戮を楽しんでいる。早く終わってはつまらないのだろうよ。奴にすれば何百年何千年ぶりのイベントだろうからな」


 インテリジェントソードが俺の考えを肯定し、更に理由も付け足した。


 俺たちは暇つぶしのオモチャかよ!


 腹が立ったが、そのおかげでまだ生きているのだ。これは奴の隙でもある。


「俺たちはおもちゃにもなっていないぜ! 奴のオモチャはエリザベスだけだ。タケオやアンのことなんて見ちゃいないさ。放っておいても死ぬしいつでも殺せると思ってる」


 まあ実際そうだ。エリザベスより先に俺たちを電撃で狙えば、一発で俺たちは死ぬだろう。そうしないのは奴の眼中にないからだ。


 エリザベスとリッチの攻防はまだまだ続いていた。俺も死なないように頑張っている。


 戦いはもう数時間に及んだだろうか、流石にエリザベスにも疲労の色が浮かんでいる。リッチが優勢を確信したかのように笑っている気がする。骸骨顔に表情などないにだが何故かそう見えるのだ。


 やばいな。エリザベスがやられたら、俺たちも瞬殺されるだろう。なんとかエリザベスの援護ができないものやろうか?


「できるだけたくさんスケルトンを食うことだな」


 インテリジェントソードにとっては食うことだけど、まあ、たくさん切り倒せば、それだけエリザベスと戦うスケルトンが減るのだからその通りである。


「よし、アン! ベスを助けるために、積極的にスケルトンと戦うぞ!」


 俺は積極的に動き出す。そして少しでも多くのスケルトンを倒そうとする。


 だがそれは同時にメアリーアンを引きずり回すことにもつながる。メアリーアンの限界はすぐに来た。動けず座り込んでしまったメアリーアンを背中に抱えて戦うことになる。


 く! 逆効果になってしまったでー! だがインテリジェントソードが俺の体を動かして、メアリーアンを背負ったまま戦い続けることはなんとかできた。


 すごい奴やな……とインテリジェントソードを心の中で褒め称える。


「フ! こんなもんじゃないんだぜ! まあ見てな。おれはまだあきらめてねー」


 あきらめたらそれで終わりだ。インテリジェントソードの言葉であきらめかけた俺の心に再び炎が灯る。


 エリザベスも歯を食いしばって頑張っている。


「いいか、タケオ。エリザベスは、もう限界だ。それがあからさまになった時、奴は絶対油断する。その時奴に向かって俺を投げろ。俺が奴の魔石をぶった斬る!」


 インテリジェントソードの言う通りエリザベスが膝を着き、リッチが見下すように彼女を笑う。


「今だ!」


 インテリジェントソードの掛け声に応えて俺は思いっきりインテリジェントソードを投げつけた。


 インテリジェントソードがリッチに向かうが、リッチもそれに気づいて右腕で払おうとする。


 最後の攻撃もダメだったか! と思った瞬間インテリジェントソードが軌道を変えてリッチの右腕を掻い潜りグサリと胸に突き刺さった。


「ぐああーーーー!」


 リッチが泡となって消えていく。同時にあたりのスケルトンが消えていく。眷属召喚は召喚主が倒されれば召喚されたものは元の世界に戻るのだ。このピラミッドはやはりダンジョン化していなかった。


「「やった!」」


 メアリーアンとエリザベスが叫ぶ。


「なんとか助かったようやな」


 周りのスケルトンも召喚者が死んだことで消えていた。


 助かったんだ……と改めて腰が抜けた。


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