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60 新しい依頼 12

 翌日文化局を訪れると、ゴードンと銀次が五人の部下を連れて待っていた。彼らは遺跡発掘などのスペシャリストだそうで、傷をつけずに遺跡や古墳、化石などを掘り出す部署の人間だそうだ。


「それでは現地に案内して貰おうか」


 銀次がメガネを人差し指で上げ直しながら、御者台の御者の隣を指差す。


「プロムに着いたら御者の横に座ってくれ、それまでは中で良い」


 ゴードンが髪を触りながら補足する。


「了解!」


 俺はメアリーアンと一緒に馬車に乗り込んだ。荷馬車に近いラフな作りの馬車で後の方は椅子のない荷物置き場になっている。椅子もクッションのない木製で尻が痛くなりそうだ。


 メアリーアンは、初めてではないのか興味なさそうに椅子に腰を下ろす。オッチャンは積んである荷物が気になって繁々と眺めた。発掘道具やな。見慣れた道具もなんや分からん道具もグチャグチャに積んである。


 馬車がプロムに着いて一旦馬車が止まり俺は御者の横に座り直して現地に案内する。プロムの西に広がる大きな草原は土の色がかなり見え、緑と茶色で染められていて、空は灰色の薄い雲で覆われている。雲を通過した光で辺りは丁度良い明るさだ。雨は降らないだろう。


 所々に平地林が存在するが木は疎だ。この辺りは降水量も少なく植物も育ちにくいのだ。


 立札の手前で馬車は停車し、ゴードンを先頭にメアリーアン、銀次その他が降りてくる。俺も御者台から飛び降りた。


「なるほど、これですね」


 顎に手を当て、ゴードンが考え込む。


「ピラミッドだな。掘り出して見るしかなさそうだ」


 銀次が連れて来た五人に合図をすると、五人は馬車から道具を持ち出し発掘が始まった。


 俺も掘る手伝いをしようかとするとゴードンに制される。


「ピラミッドを傷つけないように掘り出したいので彼らに任せて貰いたい。権利関係の相談をしたいのだが……」


「それはわたしと」


 頭脳労働はメアリーアンの担当だ。オッチャン、出番がのくなったで。メアリーアンの後ろで話だけでも聞いておこう。


「発見者の名誉と中の第一探索権はあなたにあります。あなた達の内部探索が終了するまで誰も中には入れないことを約束しましょう。管理やあなた達の探索終了後の遺跡利用法は国が受け持ち、利用にあたって国の得た利益の一割を今後二十年に渡ってお支払いします」


 ゴードンの説明は続く。細かい取り決めに興味はないのでメアリーアンに任せて聞き流す。これから二十年も金がもらえるんやーーありがたいで。


 遊んで暮らす夢の暮らしを想像する。


「タケオさん、ヨダレ、垂れてますよ。顔引き締めて!」


 メアリーアンに肘打ちで注意される。


 ちょっと妄想が過ぎたようや。


 ゴードンの話が一区切りついて発掘も少しは進んでいる。やはり五人で掘っているので、五倍は早く掘り出している。


「ここがピラミッドの入り口ですね」


 部下の声にさそわれて見に行くと確かに四角い枠のような入り口の一部が見えていた。


「入れるまで掘り起こしたら、中に入りますか? 内部の第一探索権は、あなた方のものです。探索を終了にする時は申し出てください。それから、中に入って一ヶ月経っても出てこない時は救助と死亡確認のため我々の探索チームを送ります」


「入るで! なあ、アンちゃん」


 俺はメアリーアンに同意を求める。


「中は危険かもしれないので、エリザベス姉さんとの合流を待ってから入りましょう」


 確かに中に魔物がいるかもしれないのを失念していた。埋まっていただけに、ダンジョン化してないだろうと思い込んでいたのもある。


「そうやな。もうすぐベスも戻ってくるやろうしな」


 俺はメアリーアンの意見に頷く。


 発掘はどんどんすすみ、もうピラミッドの入り口のドアと推定される四角い枠組みが上八十センチほどあらわになっている。


 枠組みの中は、ドアよろしく二枚の石の板できっちり塞がれている。


「明日にはこの入り口全体の所まで掘り出されていそうやね」


「そうしたら中に入れるようになるかしら?」


「開けられればきっと中に通じる通路があるやろな」


 勝手な想像を膨らませるが、これが扉とは限らないし、開け方も定かではない。ただ素直な構造ならば、ここを通って中に侵入できるはず。泥棒よけのトラップでないことを祈りたい。


 夕方まで眺めていると四角い枠の全体まで掘り進められ、これが頂上の欠けたピラミッドの上部だ……ということが間違いないのは、誰の目にも明らかになった。


 銀次が五人の部下に声を掛ける。


「今日はこの辺で終わりにしよう。近くにテントを張って、野営の準備だ」


 俺たちは一旦プロミネスホテルに帰ってエリザベスが戻るのを待つ流れだ。エリザベスは十日で戻ってくると言っていたので、早ければもう来ていることだってあり得る。


「ドラゴン退治だって言ってたね? 怪我したり……」


「大丈夫ですよ。ベスは何度もドラゴン退治に駆り出されていますから。それに腕の良い治癒魔法の使い手の知り合いもいますし」


 心配して損したでえ。それにしてもエリザベスってそんなに強いのか? それともドラゴンって大したことないの?


 そんなエリザベスが一緒にいれば、遺跡の中くらい何が出て来ても安心やなあ。


「それじゃあホテルに帰ろうかー」


 二人は馬車でホテルに送って貰うことにした。


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