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57 新しい依頼 9

 プロムの西を探し始めて六日目、林の中の捜索も終了してまたその奥に続く荒野を歩き続けている。


 人っこ一人いない荒野をプリンちゃんは相変わらず元気いっぱいに尻尾を振り続けている。


 一向に地面を掘り出さないプリンちゃんに、そろそろ何か見つかっても良いのでは……と諦めかけていると突然「フガ!」と鼻息を鳴らしてガリガリ地面を掘り始めた。


「ここかいな!」


 眠そうに諦めかけた目がパチリと開く。


 マジックバッグからピッケルを取り出してプリンちゃんを退けて掘り始める。


 久しぶりの掘り出し作業や! やっと出番が回って来た気分やで。


 オッチャンは猛烈な勢いで掘り進む。だが長くは続かない。すぐに通常ペースに戻ってしまった。やっぱり全力は長く持続できんのよ。


 三メートルほど掘り進めるとピッケルの先に硬いものが当たる。


「なんかありそうや!」


 シャベルに持ちかえて周りから掘り起こす。暫くかかって正体不明の物体を掘り出した。変な形やね?


「これなんやろうー?」


 メアリーアンに渡す。


「これはー」


 メアリーアンも頭を捻る。


「これはきっと……置き物? じゃないですかね? 何か動物のような形に見えなくもないですし……?」 


 よく見ると手足に顔もあるように見えんこともないような?


「鑑定に出せばわかりますが、国家トレジャーハンターですから、文化局に持っていけば無料で教えてくれるし、買い取りもしてくれるでしょう」


 俺は国家トレジャーハンターになったありがたさが初めて分かった。穴を埋めて次のハント開始だ。目的の遺跡はまだ見つかっていない。


 またプリンちゃんに探して貰う。さっきの反応は普通のここ掘れだったので、あまりすごい宝じゃないやろう。


 一日探し回ったが、その日もそれからプリンちゃんが宝を見つけることはなかった。トレジャーハントは一日にしてならずやで。


 トレジャーハント七日目、昨日見つけた物体を文化局に預けてからまた現地に向かった。今日も歩き回るだけやろうと思っていたが突然プリンちゃんがグルグル回ってマーキングをした。


「やったで! 凄いお宝があるんやな!」


 よく見ると正方形の大きな石があるような感じや。ピラミッドの頂上が欠けてるんちゃう?


 ちょっと小高い丘の頂上付近の南斜面を俺は喜び勇んで掘り始める。


「良いで! 良いで! これは遺跡に違いないでー!」


「やりましたね。タケオさん。文化局に知らせて来ますか?」


 メアリーアンが満面の笑みを浮かべる。


「もう少し掘り進めれば完璧や。ちょっと待ったって」


 オッチャン、一生懸命掘り続ける。正方形に組まれた煉瓦が姿を現しそれは階段状に一段一段広がっていく。


「かなり一人で掘るのは大変やなあ」


 ピラミッド状の建造物なのは間違いない。夕方まで掘り続けてやっと三段目まで掘り起こした。まだまだ続いているし入り口も見えていないので一旦ホテルに戻ることにする。


「これを立てていきましょう」


 メアリーアンがマジックバッグから木製の立札を取り出す。


「なになに、『国家トレジャーハンター発掘調査中 調査の妨げをするものは国家が罰する!』やて?」


「これを立てておけば現場は保全されますよ」


「こんな良えもんがあったんやなあ」


「自作ですけれどね」


 メアリーアンがペロリと下を出す。


 早速立札を立てながら二人で大笑いする。


 ホテルに戻った二人は明日文化局に連絡をとりにいくための話し合いをする。


 ソファーに腰掛けて足を伸ばすメアリーアンに俺が三つのやり方を提示した。


「ホテルから手紙で文化局に連絡をとって、明日も俺たちは発掘を続けるが第一案。二人で明日文化局を訪れるのが第二案。オッチャンは発掘に、アンちゃんは文化局に行くーーが第三案や。どれにする?」


 第三案が確実で効率的やがメアリーアンを一人にするのは嫌がるかもしれない。


 第ニ案が一番非効率だが確実に連絡は取れるし、あの局長にもまた会ってみたい気がする。


「二案でいきましょう。手紙だと 相談ができませんし……」


「そうやな。俺もそれが一番やと思ってたんや」


 ちょっと不安そうに答えながら俺の様子を伺うメアリーアンに俺は笑顔で安心するように答える。強盗に襲われてからというもの、メアリーアンはとても怖がりだ。


 あの局長にまた会えるかと思うとなんだかワクワクする。ムラムラやないでえ。


「タケオさん。なんかいやらしい顔になってますよ。局長さんのこと、考えてたんでしょう?」


 メアリーアンの鋭い指摘にあわてて顔を撫で回す。


「そ、そ、そ、そんなことないで。何も考えてない。そんな顔してた?」


 俺は驚いて聞き返したがその反応は図星を刺されたと自白しているようなものだった。


「もお! タケオさんって、やっぱりああいうオッパイが好きなんだ!」


 オッパイは大好きやが…………。


「本当に、なんも考えてないって!」


 ここは考えていないと主張し続けるほかはないと思い、無理やり無いと言い続けるのだった。

 

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