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56 新しい依頼 8

 プロムの西を歩いて宝の眠る場所を探している。昨夜は、あの後すぐに寝たメアリーアンを隣に俺もよく眠れた。


 先頭をクンクンしながら歩くプリンちゃんの尻尾はグルグル振られている。


 プリンちゃんは先頭で宝を探して歩くのがとても好きなのだろう。


 朝から三時間も歩いているのにまだ一度もここを掘れとは言われない。


 今まですぐに見つけていたが、どこにでも宝が埋まっているわけではないことを痛感する。


「今日はプリンちゃんの調子が悪いのかなあ?」


「そんなことないです。今までは事前に見つけてところにタケオさんを連れていってたので早かっただけですよ」


「そうだったんかいな!」


 今まですぐにお宝を掘り始められた訳が判明して、トレジャーハントも実は大変なんだと再発見する。


 その後も何も見つからずに歩き回った。


 四日が過ぎた昼下がり、プロムの西に広がる荒野の向こうに平地林が見えてくる。ああいうところは魔物が出たりするんだよなーーと嫌な予感。


 プリンちゃんはクンクンウロウロしながら林の方に向っていく。


 その日は林の手前までで日が暮れ出したので林の中は明日に持ち越しする。


 五日目、捜索の続きを始めるとプリンちゃんは林の中に入っていった。


「タケオ! 敵だ。気をつけろ!」


 突然インテリジェントソードが注意を促す。


 俺はインテリジェントソードを抜いて臨戦体制。


 そのままプリンちゃんの後をついていくと林の中に小さな小屋が見えてくる。


「あそこに、この前の強盗たちがいるぞ……」


「なんやて! どうしよう。」


「八人いるな。あの時討ち漏らした奴全員だ。奇襲をかければ瞬殺にできないこともないぜ」


 インテリジェントソードは戦うことを推奨しているような口調だ。不安そうにメアリーアンが俺を見る。


 小屋からは二百メートルほど離れているし、ここに隠れていればメアリーアンは安全だろう。見つけられる前に俺が強盗達を全滅させればこれからも安心できる。


「アンちゃん、ここで一人で隠れていられる? すぐにあいつら、殲滅してくるから!」


 メアリーアンが俺の左手を握って首をふった。


「逃げて、衛兵に任せましょう」


 怯えている。

 

 一人で隠れて待っているのは確かに怖いだろう。オッチャンが本当に勝てるかだって不安やろうしな。オッチャンが戦っている間に他の強盗に見つからないともかぎらんわけやし……。


「そうやな。衛兵を呼んできて捕まえて貰うのが一番やな」


 俺もメアリーアンに無理をさせるのは良くないと思い直す。二人はプロムの街に引き返し、この前の衛兵の詰所を訪れた。この前の強盗団の隠れ家をトレジャーハントの途中でたまたま見つけたことを説明して、さっきは八人全員揃っていたと話すと急いで討伐隊が組織され案内役を頼まれる。


「メアリーアンはホテルで待っているかい?」


「一人は嫌だから、タケオさんについて行って良い?」


 俺は衛兵に目配せすると頷かれる。


「分かった。俺がそばにいるよ」


 衛兵二十人と一緒にさっきの林の中に戻り、隠れ家を指し示す。


 衛兵たちは一人俺たちの護衛についた残りの十九人で盗賊のアジトに急襲をかける。怒号と剣撃が鳴り響き、しばらくして八人の盗賊たちが縄打たれて引っ立てられていく。


「あいつら、余罪もたくさんあるお尋ね者だ。間違いなく死刑だからもう安心して良いよ」


 一人護衛をしてくれた衛兵が説明する。


「良かった。釈放されて復讐にこられたら怖いと思ってたんや」


「良かったわ。もう安心ね」


 メアリーアンも胸に手を当てホッとしたように瞼を閉じる。


「あいつらいなくなっても、別の盗賊に狙われるかも分からんから、これからも気をつけていくでー」


「もう! タケオさんの意地悪」


 拗ねるようにしなを作るメアリーアン。


「アンは俺が守るって言いたかっただけや」


 メアリーアンは顔を赤らめて俯いた。


「無事に盗賊たちを捕えることができた。君達の協力に感謝する」


「いえ。自分らも不安が消えて良かったんで」


「懸賞首もいたから報奨金が出るぞ。取りに来てくれ」


 このままトレジャーハントに移りたい思いの二人は、顔を見合わせ互いの考えが同じだと理解する。


「夕方取りに伺うので良いでしょうか? このままトレジャーハントの続きをしたいので」


「良いぞ。夕方寄ってくれたらその時に渡せるように用意しておくよ。じゃあな」


 衛兵が去っていき、俺たちはトレジャーハントの続きをするためにプリンちゃんにお願いする。


「さあ、プリンちゃん、頑張ってね!」


「ワン!」


 プリンちゃんがグルグル尻尾を振って歩き始める。森の中をプリンちゃんについて歩き回るがプリンちゃんは一向に掘り始めなかった。森を抜け草原に出る。プリンちゃんはマイペースで尻尾を振っている。


 残念ながらその後も宝の埋まっていそうなところが見つからないのか、プリンちゃんは掘り出さなかった。日も西に傾き空も赤く染まり始めた頃俺達は今日の探索を諦める。


 俺達は、帰り道で衛兵の詰所により、約束の賞金、想定外にたくさんの二万ゴールドを受け取りホテルに帰ったのだった。


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