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51 新しい依頼 3

 メアリーアンのホテルに迎えに来ている。朝方のロビーはチェックアウトする客達で、結構混み合っている。


 このホテルの客は金持ちが多いのか高価な衣服を着ているし、きちっとした格好をしている。ボロ服を着ているものは見かけない。さすがは、この街一の高級ホテルだ。


 昨日の剣の稽古を思い出しながら、昨日習った受け流しを脳内トレーニングする。

 自分が意外に辛抱強いのを発見して驚く。稽古といっても二回とも五千回も素振りだけやったら、普通はいやになるやろう。まあ、才能のない俺にしてみれば、先に進むのが早いとついていかないのでちょうど良いのかもしれない。


「道場行って大分修行してきたようじゃないか? 体が素振りを覚えてるぞ。俺を使って素振りをした方がいい形が身につくと思うがな!」


 俺の受け流しの形はあまり良くなかったらしく初めは痛い思いをした。良い形の型を身につけるようにインテリジェントソードで素振りをした方が良いかもしれない。


 道場に持っていってもばれないかな。


「俺が静かにしてれば、多分ばれないだろうぜ! 今度連れてけよ」


 そうやな。


 剣と心で会話する。インテリジェントソードの声は心に響いているのか、部外者には聞こえていないようだ。インテリジェントソードが話したいと思う相手にだけ聞こえるのだろうか?


 メアリーアンとエリザベスが降りてきて罰悪そうにエリザベスが寄ってくる。


「タケオ、悪いんだが急な依頼が入ってな! 十日くらい守ってやれそうにない。危ない所でもないようだから、お前なら大丈夫だろう」


「冒険者としての依頼かー?」


 エリザベスはSランク冒険者だ。きっと強い魔物が現れて指名依頼でもきたのだろう。


「うーん。ドラゴンが出たとかでなー。昨夜呼び出しが来ちまった」


「ドラゴンってか?」


 この人ドラゴンと戦えるのかよー、すげ!


「できるだけ早く戻ってくるから安心しろ」


「怪我しないように気をつけてな!」


 死なないように気をつけろと言いたかったが縁起でもないので言葉を選ぶ。


「ああ、ありがとうな! メアリーアンのこと、いざという時は守ってやってくれよ」


「任せてくれ。俺は弱っちだけど、逃げさせるくらいは何とか時間を稼げるやろ」


「謙遜するな。タケオは十分強い。あの辺で出たことのある魔物くらいなら余裕のはずだぞ」


 エリザベスが笑顔で俺の肩をポンポンと叩く。


「タケオさん、よろしくお願いします。あの辺は、滅多に魔物は出ませんからきっと大丈夫ですよ」


 メアリーアンは安全だと太鼓判を押すが、オッチャンにはフラグが立ったような気がしてならない。インテリジェントソードをチラリと見る。


「任せな!」


 頼りになるお言葉! インテリジェントソード様、愛してるでー!


 最近オッチャンとインテリジェントソードの関係はとても親密になってきたような気がする。信頼しているといっても良いかもしれない。


 今のところ、インテリジェントソードが嘘をついたことはないし、ゴブリン程度は瞬殺にしてくれる。俺が怪我をさせられたこともない。俺が死んだらその場に置き去りになるかもしれないので、ある意味運命共同体かもしれない。


 悪いインテリジェントソードの話では、無理やり強い魔物と戦わされるようなイメージだが、それはただの結果論やないだろうか。


 自分さえ、危ないところに行かなければ問題ないはずや!


 俺はインテリジェントソードに絶対の信頼を寄せながら、メアリーアンに笑顔で答える。


「魔物が出ても守っちゃる!」


「ありがとうございます。頼りにしてますね」


 嬉しそうに微笑むメアリーアンは、天使のように可愛い。このくらいの年頃はピュアでええなあ。


「予定では隣町のプロムの西を調べるんだったな。ホテルは一度チェックアウトか?」


「そうですね。少しの間プロムの西で野営をするか、プロムのホテルを見つけるかです」


「まずはホテルを取るところからだな。俺も同じホテルに泊まるんだろう」


「一つの部屋に寝室が二つあるのが見つかれば良いのですがね」


 確かに高級な部屋には寝室や居間、浴室が複数備わっている部屋があるらしい。必要以上に寝室や居間、浴室がある意味は分からんが、このホテルでメアリーアンが泊まっている部屋もそれだった。


「ホテルが決まったら手紙をよこしてくれ。ドラゴンを倒したらホテルで合流するよ」


「分かったわ! ベス。チェックアウトと馬車の手配をしましょう」


 メアリーアンがエリザベスを伴って、ホテルのフロントに向かう。俺も二人の後についていく。


「プロムの最高級ホテルってどこかしら? そこまで馬車一台と王都まで行ける馬車はどこで乗れるかしら」


 メアリーアンは、フロントの男に尋ねる。


「駅馬車までの馬車一台とプロムのプロミネスホテルにいく馬車を一台を用意いたします」


「ありがとう。そうしてください」


 馬車の準備ができるとエリザベスは王都に、俺たちはプロムを目指した。


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