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43 クマタニ組を出て

 クマタニ組の現場を後にして、まだ昼にもなっていないのにすることがないことに気づく。


 今から家に帰って何するというんや?


 仕事に来るためにインテリジェントソードは家に置いてきてある。帰れば話し相手にでもなってくれるやろうか?


 メアリーアンの泊まっているホテルは知っているが、突然訪れても迷惑やろうし、変態ロリコンと思われても嫌やしな。


 仕方がないので、俺は家に帰ることにした。初めから帰るつもりでそっちに歩いていたのやが、改めて他にいくところが無いのを再認識しただけや。


 家に着くと話し相手を手に取る。


「今日は早いじゃ無いか。仕事じゃないのか?」


 インテリジェントソードが不審な顔をする。顔は無いけどなんとなくそう思えるのだ。


「今日は仕事を辞めてきた。これからどうしようかなー」


 インテリジェントソードに悩み相談するなんて、情けないことこの上ない。


「することがないなら俺になんか食わせろよ。安全は保証するぜ!」


 なんかと言っても、その何かは魔物に決まっている。魔物と戦えということや。


「悪いんやが、そういうのは遠慮したい。危険なことは避けたいんや」


「まあそうだろうな。タケオは慎重派だもんな。なら素振りでもしてみたらどうだ。いざという時に役に立つのは訓練だぜ!」


 することがないのでやっても良いのだが、戦う時には体のコントロールはインテリジェントソードが握っているのに意味があるのだろうか?


 俺の考えはインテリジェントソードに伝わり言葉にする前に応えられる。


「あるんだぜ。俺がコントロールする時の力が変わってくるんだ。動かすための燃費が違うっていうのかな。軽く動いてくれるようになる。そういう意味ではタケオの体は大分体捌きを覚えたんだぜ。本当の達人に近づいていくわけさ」


 俺はインテリジェントソードの説明に驚く。俺が剣の達人になっている? 体が動きを覚えている? 嘘やろう…………それって、オッチャンが本当に強くなっとるゆうことや。


 俺は、本当に強くなっているのか確かめたい衝動にかられる。確かめるにはどうしたら良いのか考える。


 インテリジェントソード無しで戦ってみれば良いのだろうが、ゴブリンと戦うのはさすがに怖い。それに都合よくゴブリンと出会うというのもなかなか難しい。


 真剣で戦うとなれば命懸けだし、人を相手に戦うといっても。


 …………剣道場に行って、剣を習えば良いのかも? そうや、それなら客観的な評価もしてもらえるやろ。


 俺はさっそく剣道場を探すことにする。今日は時間があるんやから暇潰しに丁度良い。道場で詮索されるのは嫌なので、インテリジェントソードは家に置いていく。


「俺も連れて行けよ!」


 インテリジェントソードの要望を断って、俺は街に繰り出した。剣道場が、何処にあるかなんて全然分からないのだが、適当に歩いていれば見つかるやろう。


 とりあえず当てずっぽうに歩き始める。やっぱりあるのは冒険者ギルドの方かな?


 適当に探し歩いたが見つからず、冒険者ギルドで聞いてみれば分かるかと思い立つ。冒険者ギルドは繁華街の中央の方にある目立つ建物だ。武装した厳つい男達が出入りしている一般人には近付き難い建物。


 暫く探し回ったが道場らしき建物は見つからず、行きたくはないが冒険者ギルドで聞くことにする。いちゃもんをつけられそうで怖いんよね! 冒険者ギルドって。


 冒険者ギルドの扉をこっそりと開いて中に侵入。目立たぬように受付を目指す。周りの冒険者と目があったのでヘコヘコしながらすり抜ける。


 空いている窓口を覗くと奇麗な受付嬢に微笑まれた。


「新規登録ですか?」


 初めてきた人間なのがどうして分かったのかは分からないが、新人だと思われたらしい。まさか全ての冒険者の顔を覚えているわけじゃないだろう。


「登録の前に、剣道場で修行を積もうと思うんですが、場所が分からなくて……」


「剣道場の場所が知りたいんですね。登録前に実力を養うのは大切なことです。この街には剣道場は二つあります。大きなのと小さいののどちらが良いですか?」


 二つあるんや! 大きいのは…………小さい方がこっそりできて良いか。


「小さい方を教えてください」


「ではこの地図で」


 受付嬢が簡単な地図を書いて渡してくれた。


「自信がついたら冒険者登録お願いしますね」


 俺は会釈をしてその場を離れる。ヘコヘコしながらそそくさと冒険者ギルドを脱出し急いで地図の道場に向かった。


 その道場は少し寂れた街外れにあった。確かに道場にしては小さな建物のように感じる。誰も剣を振っている者はいない。お休みかな?


 古い建物には確かに道場の看板がついている。


「剣真流剣道場……と」


 確かに剣道場に間違いない。裏に廻って道場を覗いてみるが誰も稽古をしていない。やっぱりお休みかな?


「どちら様ですか?」


 背中の方からきつい口調で声をかけられる。女性の声だ。


 振り返るとそこには買い物籠を手にした二十歳くらいの女性が立っていた。

 

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