41 初めての依頼 15
「ここ、これだけのお宝って、いくらになるんやろう」
脳内で金額メータがぐるぐる回り桁数がゼロゼロゼロとどんどん上がっていく。
一億、十億、百億ーー
金の総重量にしても四~五トンはありそうやし(あてずっぽう)、数千億ゴールドはありそうやで…………
遊んで暮らせるやんかー!
クマタニ組よ、さらばじゃー
「それじゃあ、このお宝回収しなくちゃな」
「そうですね。マジックバッグに全部入るかしら」
メアリーアンの言葉で現実に引き戻される。ちょっと待って、王冠と剣を身に付けて見たいやんか? ごっつ良い感じに。
俺は足元の王冠を頭に乗せ剣を腰にさす。
「なにやってるんですか! タケオさん」
メアリーアンが笑いながら言った。
「気持ちは分からんでもないが、作業の邪魔はするなよ」
エリザベスとメアリーアンがそれぞれのマジックバッグにお宝を吸い込み始める。
エリザベスもマジックバッグを持っとったんかいな。
足元のお宝がどんどんマジックバッグに吸い込まれて減っていく。なんや寂しい。
二人は掃除機をかけるようにマジックバッグで金貨、金塊、装飾品、剣や鎧などなど、其処にあるお宝全てを吸い込んでいく。
俺はインテリジェントソードに魔石をくわせてまわる。ほぼ体はインテリジェントソードがコントロールしているが、目は自分の意思で動いていて、二人が宝を吸い込んでいる様子から目が離せない。しかし、魔石を食べに部屋から出ては宝の吸われる様子を見ていたくても見られなくなるーー残念。
インテリジェントソードの食事が終わった頃二人も宝の収納を終えた。
「ここで、お昼でも食べてから帰りましょうか」
「そうだな。あとは帰るだけだし、美味しいのを頼むぞ」
「もうこのダンジョンにゴブリンが増えたりしないのかな?」
俺はもうゴブリンは出ないと思っていたが聞いてみる。
「ここは遺跡のようだし、ダンジョンコアがなければ魔物は発生しないと思うが……可能性はあるな。魔物を倒すと煙になっていたからダンジョンコアがある可能性はある。」
想定外の答えに驚く俺。そんなん話がちゃうやんか。鏡からゴブリンが出てきてたんとちゃうんかい!
「ただ、ここまでゴブリン系以外の魔物に出会っていないのを見ると、ここのダンジョンコアはまだ若い。深いところからだんだん魔物が出てくることを考えると、この辺りの浅層ではまだダンジョン産の魔物が出てきていないので、多分を今日は出会わないだろう」
お! 良かった良かった。しかしさすがはエリザベスや。其処まで分かるとは伊達にSランク冒険者をしていないな。
俺はエリザベスの考察に感心する。
「お昼は、焼き鳥にしましょう。下味をつけた鳥肉や、軟骨、砂肝、つくねなどを串に刺してありますから焼きながら食べましょう」
メアリーアンがマジックバッグから焼き鳥セットを取り出し串を置く。適度にひっくり返しながら焼けるのを待った。
魔物の心配も少ないし、少しくらい飲んでもかまわんやろうとピールも取り出してもらう。マジックバッグの中は時間が止まっているので冷えたままのピールを飲むことができるのだ。
エリザベスのマジックバッグには、さまざまな酒が入れられているらしい。酔っ払わない程度に飲む分には問題ないのだとか。
焼き上がった焼き鳥が皿におかれる。俺とエリザベスが串を掴んで口に運んだ。
塩味が効いて肉の旨みを引き立てる。
「美味いなー!」
「ごっつ美味しいでー」
「良かったわ」
ニッコリ微笑むメアリーアンは本当に天使のようやで。
「軟骨のこの歯応えがたまらんね!」
エリザベスもコリコリ軟骨の歯触りを楽しんでいる。
「タレのお味はどうかしら?」
メアリーがつくねをほおばる。
「焼きながら食べるのって、やっぱ最高やね!」
焼き鳥は、焼きたてに限ると思いながら今度は砂肝をコリコリ噛み締める。
「特別にバトルイーグルのモモ肉も焼きましょうか?」
「良いねえ! バトルイーグルのモモ肉は弾力があって最高だからな」
バトルイーグルは筋肉が鍛えられているため味も歯応えも良く高級食材だ。
メアリーアンが串を火の上にセットすると、ワクワク顔でエリザベスが焼き上がるのを待った。
「焼き上がるまでにこれでもどうぞ」
「ああ、気がきくな。タケオ」
「つくねも美味しいですよ。タケオさん」
「おお、ありがとう」
なぜかバトルイーグルが焼き上がる前に、焼き鳥を勧め合う三人。
「もういいんじゃないかな?」
「そうやねー」
「はい。焼けましたよー」
皿に置かれるや否や俺とエリザベスの手が伸びる。
「次もバトルイーグルのせておきますね」
メアリーアンが追加でバトルイーグルを焼き出す。
「肉はいくらでもありますから、食べたいのを焼きますよ」
「じゃあ、俺には砂肝を焼いてくれる?」
「私は軟骨だ」
「はいはい。私はつくねっと」
俺はピールをぐいと飲みこみながら、宝を見つけた後の焼き鳥パーティーは最高だなと思った。




